滷・醤・燻・腌の違い中華の作り置き技法を徹底解説

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中国の街角には、煮込んだ鴨の首や豚足、牛すね肉をガラスケースに並べた「滷味(ルーウェイ)」の店がある。冬になると、農家の軒先には塩漬けの豚肉がずらりと吊るされ、上海の夏の居酒屋には、酒粕の香りのする冷たい鶏や枝豆が並ぶ。どれも、作ってすぐに食べるのではなく、時間をかけて味を含ませ、冷めてもおいしく、しばらく保存がきく料理だ。
この記事で扱う滷(ルー)は、香辛料を煮出した煮汁(滷水)で材料を煮る技法。醤(ジャン)は、醤油ベースの煮汁で生の肉を長く煮て、冷ましてから切り分ける冷菜の技法。燻(シュン)は、茶葉や木くずの煙で香りをつける技法。そして腌(イエン)は、塩や調味料に漬け込む技法で、そこから干したり燻したりして作るのが腊肉(ラーロウ)などの腊味だ。さらに、酒粕の汁に漬ける糟(ザオ)、肉の煮汁を冷やし固める凍(ドン)も、同じ「作り置き」の仲間に入る。
日本では「煮豚」「ベーコン」「燻製」とひとくくりにされがちなこれらの技法も、中国では材料の選び方、煮汁の扱い、保存の考え方がそれぞれ違う。滷と醤はどう違うのか。何十年も継ぎ足す「老湯」はどうやって守るのか。この記事を読めば、ガラスケースの中身の見え方が変わるはずだ。
ここから先では、滷・醤・燻・腌(腊)・糟・凍の定義と違い、代表料理、そして家庭で作るときの具体的な配合と保存のコツを解説する。
滷(ルー):香辛料の煮汁で煮含める
滷は、あらかじめ香辛料と調味料を煮出して作った煮汁(滷水)に、下ごしらえした材料を入れて加熱し、煮汁の味と香りをしっかり吸わせる技法だ。中国の料理解説では、「生の材料だけでなく、半調理品や火を通した材料も使える」点が特徴とされる。肉や内臓のほか、卵、豆腐干などの豆製品、きのこ、海産物まで、何でも滷にできる。
滷水は、大きく二つに分けられる。
- 紅滷(ホンルー):醤油や糖色(カラメル)で色をつけた滷水。中国各地の滷味や、台湾の滷味、潮汕の滷鵝などは、醤油色の滷水で煮る。
- 白滷(バイルー):醤油を使わず、塩と香辛料で味をつける滷水。仕上がりは白っぽく、素材の色が生きる。河南の開封桶子鶏は白滷で煮る鶏料理の例だ。
滷水の香辛料には、八角、桂皮、花椒、草果、丁香、陳皮、甘草などが使われる。地域や店によって配合が違い、レモングラスや南姜、生薬を加える店もある。家庭で一から揃えるのが大変なら、香辛料をひとまとめにした市販の滷包を使うと手軽だ。
老湯(老滷)を守る
滷の最大の特徴は、煮汁を捨てずに継ぎ足しながら使い続けることだ。何度も肉を煮るうちに、肉のうま味とゼラチンが溶け込み、味に深みが出る。この使い込んだ滷水を老湯(ラオタン)または老滷(ラオルー)と呼ぶ。中国の滷味の店の料理人が紹介する老湯の管理法は、次のようなものだ。
- 毎日使う滷水は、毎日一度沸騰させる。殺菌のためで、これを怠ると傷む。
- 野菜や豆製品は、肉の老湯で直接煮ない。でんぷんや水分が出て、老湯が傷みやすくなる。老湯の一部を別の鍋に取り分け、水でのばして味を調え直してから使う。
- 使ったあとは、ふたをせずに風通しのよい場所で冷ます。香辛料の袋は取り出して別に冷まし、ラップで包んで冷蔵する。細かい網で香辛料のかすをすくい、沸騰させたらあくを除く。
- 3〜5日に一度は、ガーゼで漉して容器を替える。底にたまった2cmほどの煮汁は捨て、水を足す。
- 表面に浮く油(滷油)は3〜5cmの厚さを保ち、多すぎる分は取り除く。油の層がふたの役目をする。
- しばらく使わないときは、かすを除いて常温まで冷ましてから冷凍する。鉄の容器は金属臭が移るので避ける。冷凍した滷水は2〜3か月に一度取り出して沸騰させ、鶏ガラなどを足してうま味を補う。長く冷凍したあとは、香辛料の袋を新しいものに替える。
家庭なら、使うたびに漉して小分けにし、冷凍しておくのが現実的だ。次に滷を作るとき、新しい煮汁に500mlほど加えるだけでも、味がぐっと深くなる。
醤(ジャン):生肉を煮て、冷まして切る
醤は滷とよく似ているが、中国の料理解説でははっきり区別されている。醤は「下ごしらえした生の材料を、あらかじめ作った醤湯(醤油ベースの煮汁)に入れ、強火で煮立ててから中弱火で長時間煮て、取り出して冷まして食べる冷菜の技法」と定義される。主な違いは次の三点だ。
- 材料:醤は生の材料だけを使い、家畜や家禽の肉と内臓に限られる。滷は生でも加熱済みでもよく、卵や豆製品、きのこまで幅広い。
- 調味:醤の煮汁は、基本的な香辛料に、塩・糖色・醤油など、比較的シンプルな調味料で作る。滷水は香辛料の種類が多く、魚醤や花雕酒などを加えることもある。
- 味:醤は塩味とうま味、または五香の味が中心で、味の方向は比較的一つにまとまる。滷は紅滷・白滷があり、味の幅が広い。
北方の醤牛肉は、牛すね肉を醤湯で煮て、冷ましてから薄切りにする代表的な料理だ。東北の醤骨架(豚の背骨の醤)や、湖南の醤板鴨のように、名前に「醤」のつく料理も多い。
山西の平遥牛肉も、生の牛肉を塩漬けしてから煮る冷菜の一種だが、その製法は独特だ。地元の解説によれば、牛肉を大きく切り分けて塩に漬け、塩の量と漬ける時間は季節によって変える(暑い時期は短く、寒い時期は長く)。煮るときは塩と水だけを使い、ねぎや生姜は加えない。「水は肉がつかる深さに、湯は鍋の真ん中に小さな泡が立つ程度に」という言い回しがあり、強火で煮立ててから徐々に火を弱め、八分ほど火が通ったら、そのまま浸しておいてゆっくり火を通すという。
燻(シュン):煙で香りをまとわせる
燻は、茶葉・砂糖・米・木くずなどを熱して出る煙で、材料に香りと色をつける技法だ。四川の樟茶鴨は、その代表である。中国の料理人による解説では、樟茶鴨は「腌(漬ける)→燻(燻す)→蒸(蒸す)→炸(揚げる)」の四つの工程で作られる。
- 腌:花椒、塩、白こしょう、醪糟の汁、花雕酒などを合わせ、鴨の内外にすり込んで10時間ほど漬ける。
- 燻:鴨を熱湯にくぐらせて皮を締め、吊るして水気を乾かす。クスノキの葉、ジャスミン茶などの花茶、柏の枝、おがくずを燻料にし、煙が立ったら鴨を入れて、皮が薄い黄色になるまで燻す。炉の中に炎や濃い煙が立たないようにするのが要点だ。
- 蒸:燻した鴨を蒸して火を通し、自然に冷ます。
- 炸:菜種油を六成熱に熱し、皮がつややかな赤褐色にカリッとなるまで揚げ、ごま油を塗る。
なお、プロの配合には発色と保存のために硝石(火硝)が使われることがあるが、家庭では使わない。家庭で燻すなら、燻製鍋や、アルミホイルを敷いた古い中華鍋に、紅茶やジャスミン茶の茶葉・砂糖・米を入れて加熱し、網にのせた材料を10分ほど燻すだけでも、十分に「燻」の香りがつく。
ちなみに、上海の燻魚は名前に「燻」とつくが、燻製ではない。厚切りの魚を高温で揚げてから甘辛い醤油だれに浸す料理で、爆魚とも呼ばれる。
腌(イエン)と腊(ラー):塩で漬けて、干して、燻す
腌は、塩や醤油、酒、香辛料で材料を漬け込む技法だ。漬けたあと、風に当てて干したり、燻したりして保存性を高めたものを腊味(ラーウェイ)と呼ぶ。腊肉(塩漬けの干し豚肉)、腊腸(中華ソーセージ)、腊魚などがある。
腊肉は地域で作り方が大きく違う。中国各地のレシピを比べると、塩の量は肉の重さに対して2〜8%程度と幅がある。
- 湖南:肉の重さに対して約3%の塩で、冬から春なら5日ほど漬け、半分乾いたところで燻製室に入れ、松や柏のおがくずで2〜3日燻す。湘西では、囲炉裏の上で1〜2か月かけて燻し続けるものもある。
- 四川:約4%の塩で冬なら10日ほど漬け、風通しのよい場所で干してから、松や柏の木で燻す。燻さず、風で乾かすだけの作り方もある。
- 広東:約2%と塩が控えめで、燻さずに、炭火などの熱で50℃前後に保った炉の中で数日かけて乾かす作り方がある。
上海や江南の咸肉(塩漬け豚肉)は、塩で漬けて干したもので、燻さないのが基本だ。腌篤鮮のように、生の豚肉と一緒に煮てスープのうま味を出すのに使う。
腊肉は日本のベーコンよりずっと塩辛く、身が締まっている。使う前には、ぬるま湯に1〜2時間浸して塩を抜き、さらに10分ほど下ゆでするのが基本だ。
糟(ザオ)と凍(ドン)
- 糟:酒粕(酒を搾ったあとのかす)を使う江南の冷菜の技法だ。香糟(香りのよい酒粕)をほぐして黄酒と香辛料を加え、一晩置いてからガーゼで漉したものを糟滷と呼ぶ。透き通った糟滷ほど上等とされる。海産物などを生か半生で漬ける「生糟」と、鶏や内臓を煮てから漬ける「熟糟」があり、熟糟は火を通して冷ました材料を糟滷に1〜2時間、または冷蔵庫で一晩漬ける。上海の糟鶏、糟毛豆、糟鳳爪が夏の定番だ。福建では、紅麹で赤く染まった紅糟を使う。
- 凍:肉や豚皮を長時間煮て溶け出したゼラチン質を、冷やして固める技法だ。豚皮を煮出して固めた皮凍は、そのまま冷菜にするほか、小籠包の肉あんに混ぜてスープの素にする。江蘇の鎮江肴肉や、福建の土筍凍もこの仲間である。
家庭で再現するコツ
- 滷水の基本配合の目安は、水2Lに対して、生抽100ml、老抽30ml、氷砂糖40g、塩10g、八角2個、桂皮5g、花椒3g、草果1個、丁香3粒、陳皮3g。香辛料は軽く水洗いし、お茶パックに入れて30分ほど煮出してから材料を入れる。
- 肉は必ず下ゆでしてから滷水に入れる。血やあくが入ると、老湯が濁って傷みやすくなる。
- 滷・醤は、煮上がったら火を止め、そのまま煮汁に浸して冷ます。浸している間に味がしみ込む。冷ましてから切ると、身がくずれずに薄く切れる。
- 腊肉は、作るなら気温の低い冬に。気温が高いと、干している間に傷む。
- 燻すときは、換気扇を最強にし、ふたの隙間をアルミホイルでふさぐ。煙が漏れると、部屋中に香りが残る。
よくある失敗
- 滷水が酸っぱくなる:沸騰させずに常温で置いた。夏場は一日でも傷むので、使わない日も沸騰させるか、冷凍する。
- 醤牛肉が硬い:煮る時間が足りないか、火が強すぎる。牛すね肉1kgなら、弱火で1時間半〜2時間が目安だ。
- 燻製が苦い:煙が濃すぎるか、燻料が焦げて炎が出ている。火を弱め、薄い煙で時間をかける。
- 腊肉料理が塩辛い:塩抜きが足りない。炒め物にするなら、下ゆでしてから薄切りにし、味を見てから調味する。
この記事で紹介した技法を使うレシピ
- 潮汕滷鵝:南姜や八角などの滷水で合鴨をごく弱火で煮て、火を止めてから浸して味を含ませる。
- 平遥牛肉(平遥牛肉):牛すね肉を塩で2〜3日漬けてから香辛料とゆで、煮汁ごと一晩休ませて薄切りにする。
- 樟茶鴨:花椒塩で漬けた合鴨を茶葉・米・黒糖で燻し、蒸してから揚げる成都の燻製鴨。
- 塩水鴨(盐水鸭):炒め塩で鴨肉を塩漬けし、香辛料の卤水で沸騰させずに煮てから冷やす南京の冷菜。
- 臘味合蒸:塩抜きした腊肉・腊魚・腊鶏を碗に並べて60分蒸す、湖南の年越しの腊味料理。
- 鎮江肴肉:塩と花椒で漬けた豚すね肉を豚足と煮て、煮汁のゼラチンで冷やし固める鎮江の冷菜。
- 小籠包:豚皮を長時間煮出して冷やし固めた皮凍を刻み、肉餡に混ぜて包む上海の点心。
出典
- 新浪「什么是酱、什么是卤?你真的知道吗?」
- 网易「卤水怎样保存最好?实体店师傅分享这两种可靠方法,记得收藏」
- 搜狐「川菜经典名菜“樟茶鸭”腌、熏、蒸、炸详细制作比例,建议收藏」
- 搜狐「从川味到广式:7 类腊肉的特色配方与制作关键步骤」
- 澎湃新闻「糟鸡、糟钵斗、糟毛豆……上海人夏天就好糟卤这一口」
- 澎湃新闻「闻其香而提其神 品其味而解其困 —— 平遥牛肉」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。