山西料理・晋菜平遥牛肉

平遥牛肉レシピ本場山西の配合を徹底解説

木のまな板に赤褐色の牛肉の塊を置き、手前に薄切りを並べた平遥牛肉のイラスト
地域
晋菜(山西・平遥)
分量
2人分
公開

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世界遺産の城壁で知られる山西省平遥県には、もう一つの「名物」がある。塩だけで漬け込み、長時間じっくり煮込んで作る燻製もハムも使わない牛肉の煮物、平遥牛肉である。この土地の伝統的な製法は驚くほど手間がかかる。まず使う牛は年齢4歳以上・体重300kg以上の健康な個体だけを選ぶという「相(選別)」から始まり、屠畜後15分以内に速やかに解体する「屠」、季節に応じて肉に塩の切り込み(塩眼)を入れて塩を押し込み、夏場は5〜7日、春秋は10〜15日、冬場は20〜30日という長期間かけて漬け込む「腌」、そして直径約2メートル・高さ1.5メートルにも及ぶ大鍋で強火2時間・弱火8時間・余熱2時間という計12時間もの煮込みを行う「卤」という、五つの工程を経て作られるとされる。

この製法の背景には、平遥という土地が古くから晋商(山西商人)の拠点として栄え、遠方まで運んでも傷みにくい保存食としての牛肉加工が発達したという事情があるとされる。塩だけでじっくりと水分を抜きながら旨味を凝縮させる製法は、冷蔵技術のなかった時代に食品を長持ちさせる知恵でもあった。出来上がった牛肉は、「脂身が多くても重たくなく、赤身が多くても硬くならない」と評される独特の食感を持ち、薄くスライスしてそのまま前菜として食べるのが定番の楽しみ方とされる。

もっとも、この伝統製法をそのまま家庭で再現するのは現実的ではない。数十日の塩漬けと直径2メートルの鍋での12時間の煮込みは、明らかに専業の作坊(工房)の設備と時間を前提としたものだからだ。そこで本稿では、伝統製法の考え方——長めの塩漬けでしっかり下味と保水性をつけてから、じっくり弱火で煮込む——というエッセンスを踏まえつつ、家庭のキッチンでも数日あれば作れる規模に落とし込んだ配合と手順を紹介する。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合(家庭サイズに調整)

材料(2人分・作りやすい分量で仕込み、数回に分けて食べる想定)

塩漬け

  • 牛すね肉(ブロック)500g
  • 塩肉の重量の約3%15g

煮込み

  • 水800ml〜1L目安肉がひたひたに浸る量
  • 生姜薄切り1片
  • 長ねぎの青い部分1本分
  • 八角1個
  • 桂皮1片
  • 小茴香小さじ1/2
  • 花椒(青花椒でなくても可)小さじ1/2
  • 塩味の調整用小さじ1

作り方

  1. 塩をすり込む。牛すね肉の表面全体に塩15gをまんべんなくすり込む。厚みのある部分にはフォークで数か所刺しておくと塩が入りやすい。

  2. 塩漬けする。ラップまたは保存袋に入れて冷蔵庫で2〜3日置く。1日1回、上下を返して味を均一にする。本場の伝統製法では季節に応じて数日〜1か月かけるが、家庭では冷蔵環境で2〜3日程度でも十分に下味と保水性の効果が得られる。

  3. 塩抜きする。漬け終わった牛肉を取り出し、たっぷりの水に30分ほどさらして表面の余分な塩を落とす。

  4. 下茹でする。鍋に牛肉とかぶるくらいの水を入れて強火にかけ、沸騰したらアクを丁寧に取り除きながら5分ほど茹でる。

  5. 本茹でする。アクを取った湯を一度捨て、新しい水800ml〜1L、生姜、長ねぎ、八角、桂皮、小茴香、花椒を加えて再び強火にかける。沸騰したら弱火にし、蓋をして2時間〜2時間半、肉に竹串がすっと通るまでじっくり煮込む。伝統製法の「強火→弱火→余熱」という考え方に倣い、火を止めたあとも鍋のまま30分〜1時間置いて余熱で味を含ませるとよい。

  6. 味を調える。仕上げに塩小さじ1を加えて味を調え、さらに10分ほど煮て火を止める。

  7. 冷まして休ませる。粗熱を取ったら、煮汁につけたまま冷蔵庫で半日以上(できれば一晩)休ませる。この工程で肉の繊維がしまり、スライスしたときの美しい断面が生まれる。

  8. 薄切りにして盛り付ける。よく冷えた牛肉を繊維を断つ方向に薄くスライスし、そのまま前菜として盛り付けて完成。好みで香菜や香醋を添えてもよい。

本場と日本の違い

  • 塩だけで漬け込むのが基本。 醤油やタレに漬け込む日本式の煮豚・チャーシューとは異なり、平遥牛肉は塩のみでじっくり水分と旨味をコントロールするのが伝統的な製法とされる。
  • 選ぶ牛の年齢や体格にまでこだわりがある。 本場の伝統製法では4歳以上・300kg以上という牛の条件が語られるほど、原料の質そのものが重視されている。家庭では入手できる牛すね肉で十分だが、この背景を知っておくと味わい方が変わる。
  • 煮込みは「強火→弱火→余熱」の三段階。 強火で一気に沸かしたあと、長時間の弱火煮込みと、火を止めたあとの余熱による「蒸らし」を経るのが本来の考え方で、単に長時間煮ればよいというものではない。
  • 薄切りにしてそのまま食べるのが定番。 汁物や炒め物の材料としてではなく、冷たく締めた状態で薄切りにし、前菜としてそのまま食べるのが平遥での代表的な楽しみ方とされる。

参考ページ(写真)

香哈網の「平遥牛肉」のページには、山西の特色小吃・特産としての紹介があり、地元での食べられ方を知ることができます。より詳しい家庭での作り方の写真付き手順は、下厨房の「香卤牛肉」など類似の家庭製法レシピを参考にするとイメージがつかみやすいでしょう。 https://m.xiachufang.com/recipe/100044943/

代用可能な食材

  • 牛すね肉→牛もも肉やスジ肉500g(食感はやや変わるが代用可)
  • 直径2メートルの大鍋・数十日の塩漬け→家庭では冷蔵庫での2〜3日の塩漬け+通常の鍋での2時間程度の煮込みで代用(本文の作り方に反映済み)

保存・アレンジのコツ

  • 煮汁ごと保存容器に入れれば、冷蔵で4〜5日ほど保存可能。使うたびに必要な分だけスライスするとよい。
  • 残った煮汁は牛肉の旨味が溶け込んでいるので、麺のスープや野菜炒めの隠し味として活用できる。
  • 薄切りにした牛肉に辣椒油や香菜を添えれば、前菜としてそのまま酒の肴にもなる。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。伝統製法(数十日の塩漬け・直径2メートルの大鍋での12時間煮込みなど)は業務用の作坊で行われる規模のものであり、家庭で作る配合・手順はそのエッセンスを踏まえて現実的な規模に調整した独自の再構成である旨を明記します。