炸・煎・烹・拔絲の違い油を使う中華技法を徹底解説

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揚げ物は家庭料理のなかでも失敗しやすいジャンルだ。衣がべちゃっとする、中が生、外が焦げる。中華の揚げ物はさらに、揚げたあとにたれをからめたり、飴をからめたりと工程が続くので、難しそうに見える。けれど、中国の料理書を読むと、油を使う技法は驚くほど体系的に整理されていて、仕組みがわかれば家庭でも十分に再現できる。
炸(ジャー)は、たっぷりの油で材料を加熱する「揚げる」技法だ。衣をつけないもの、乾いた粉をまぶすもの、卵の衣をつけるものなど、衣の違いで細かく呼び分ける。煎(ジエン)は、少ない油で平たい材料の両面を焼く技法で、焼き餃子の鍋貼や生煎包もこの仲間に入る。烹(ポン)は、揚げたり焼いたりした材料に、強火で合わせ調味料を注いで一気にからめる技法。そして拔絲(バースー)は、揚げた材料に煮詰めた砂糖の飴をからめ、持ち上げると細い糸を引くように仕上げる、中国らしい甘い技法である。
もう一つ、中国のレシピで欠かせないのが「五成熱」「七成熱」といった油温の表し方だ。温度計を使わず、油の様子で温度を判断する、料理人の言葉である。この読み方がわかれば、中国語のレシピの指示が一気に具体的になる。
ここから先では、炸・煎・烹・拔絲の定義と分類、油温の「成」の読み方、鍋包肉や拔絲地瓜などの代表料理、そして家庭でカリッと揚げるための具体的なコツを解説する。
油温の「成」を読む
中国のレシピには、「油を六成熱に熱する」のように、油の温度を「成(チョン)」で表す書き方がよく出てくる。「成」は割合を表す言葉で、油温を十段階に分けたうちのどのあたりか、という料理人の目安だ。
一成をおよそ30℃とし、次のように説明する資料がある。
- 三〜四成熱(およそ90〜120℃):油面は比較的静か。長ねぎを入れると周りに小さな泡が立つ。肉の薄切りを入れると、いったん沈んでからゆっくり浮いてくる。滑油(低温の油通し)や、熘の下ごしらえに使う。
- 五〜六成熱(およそ150〜180℃):油面がゆらゆら動き始め、手をかざすとはっきり熱い。肉を入れると周りに細かい泡がたくさん立ち、すぐに浮いてくる。揚げ物の基本温度で、料理人のあいだでは「万能の油温」とも言われる。
- 七〜八成熱(およそ180〜210℃):油面からかすかに煙が上がり始める。肉を入れてもほとんど沈まず、周りに泡が勢いよく立つ。二度揚げの仕上げや、大きな材料の表面を一気に固めるときに使う。
- 九成熱以上:青い煙が上がり、油面が激しく動く。発火の危険があり、油も傷むので、家庭では使わない。
ただし、温度の換算は資料によって数℃〜十数℃の幅がある。たとえば六成熱を160℃前後、八成熱を200℃前後とする解説もある。「成」はあくまで目安なので、家庭では油温度計で温度を確かめながら、油の様子と結びつけて覚えていくのが早道だ。
炸(ジャー):衣で変わる揚げ物の技法
中国の料理書では、炸は「強火・多めの油・汁なし」の調理法と説明される。材料を直接、または衣をつけてから、たっぷりの熱い油で加熱する。炸は、衣の違いで次のように分けられる。
- 清炸(チンジャー):衣をつけず、下味だけをつけてそのまま揚げる。清炸仔鶏(若鶏の素揚げ)などがある。
- 干炸(ガンジャー)・焦炸:乾いたでんぷんや小麦粉をまぶして揚げ、外はカリッと、中はやわらかく仕上げる。干炸黄魚柳(いしもちの切り身の揚げ物)が例に挙がる。台湾の鹹酥鶏も、下味をつけた鶏肉に地瓜粉(さつまいもでんぷん)をまぶして揚げる、干炸の仲間だ。
- 軟炸(ルアンジャー):卵白やでんぷんで作るやわらかい衣をつけて揚げる。衣がふんわりと仕上がる。
- 酥炸(スージャー):酥炸用の衣をつけて揚げ、さくさくに仕上げる。
- 紙包炸(ジーバオジャー):下味をつけた材料を紙で包んで揚げる。紙包鶏が代表例だ。
- 脆炸(ツイジャー):湯葉や豚の網脂で材料を巻いてから揚げる。
- 面包渣炸:パン粉をつけて揚げる。
- 油淋炸:材料に糖水を塗り、上から油を回しかけて揚げる。広東の脆皮鶏(皮をパリッと仕上げた鶏)がこの方法で作られる。
ここで一つ注意したいのが、炸醤麺の「炸」だ。炸醤麺の炸醤は、ひき肉と醤を油でじっくり炒めて作る肉みそのことで、たっぷりの油で揚げる「炸」とは手順が違う。字が同じでも、料理名の中では意味の幅があるのだ。
煎(ジエン):少ない油で両面を焼く
煎は、鍋を熱してから少量の油をなじませ、平たく成形した材料を中弱火で焼き、片面に焼き色がついたら返して、両面を焼き固める技法だ。焼いている間は鍋を回すように動かし、材料全体に均一に熱が入り、焼き色がそろうようにする。
煎は、焼いたあとにどう仕上げるかで、さらに細かく分けられる。
- 干煎(ガンジエン):下味と卵やでんぷんの衣をつけた材料を、両面焼いてそのまま仕上げる。干煎桂魚柳などがある。
- 煎蒸:焼いてから蒸して火を通す。
- 煎燜:焼いてからスープを加えてふたをし、燜にする。
- 煎焼・煎熘:焼いてから煮る、または焼いてからたれをかける。南煎丸子(肉団子を平たくして焼き、たれで煮る料理)などがある。
日本でもなじみのある鍋貼(焼き餃子)や上海の生煎包は、油で底を焼き、水を加えてふたをし、蒸気で中まで火を通してから、もう一度水分を飛ばして底をカリッとさせる。煎と蒸を組み合わせた手順といえる。福建・台湾の海蛎煎(牡蠣のオムレツ)も、たっぷりめの油で焼きつける煎の料理だ。
山東料理には、塌(ター)という技法もある。材料に衣をつけて両面を焼いて形を整えてから、スープと調味料を加え、中弱火で汁を吸わせて煮詰める。鍋塌豆腐(豆腐の鍋塌)がその代表である。
烹(ポン):揚げてから合わせ調味料を注ぐ
烹は、炸や煎で火を通した材料に、強火で合わせ調味料を注いで、一気にからめる技法だ。中国の料理書では「下味をつけた材料に粉をまぶすか衣をつけて揚げ、熱い油と強火で手早く合わせ調味料を加えて炒め、汁を材料の表面に吸わせる。余分な汁は残さない」と説明される。熘と違ってとろみは使わない(またはごく薄くする)のがポイントで、仕上がりの皿に汁がたまらない。炸烹大蝦(大えびの炸烹)がその典型だ。韓国の中華料理のカンプンギ(乾烹鶏)も、この「烹」の技法の名前を受け継いでいる。
鍋に酢を回し入れて、蒸発させて香りだけを残す「烹醋(ポンツー)」も、この烹の字を使う。熱い鍋肌に液体を注いで、一瞬で蒸気と香りを立たせるイメージだ。
東北の名物、鍋包肉(グオバオロウ)も、もとは烹の技法で作られる料理だ。中国新聞網の記事などによれば、1907年、ハルビンの浜江道の役所で料理人をしていた鄭興文が、それまでの塩味の「焦焼肉条」を、外国人客の好みに合わせて甘酸っぱい味に改めたのが始まりとされる。もとの名前は「鍋爆肉」で、外国人客が「爆」を「包」と発音したことから今の名前になったという話も伝わる。ハルビンの作り方は、衣をつけて揚げた豚肉に、強火で合わせ調味料を注いで一気にからめる「烹汁」で、カリッとした食感が残るのが特徴だ。一方で、他の地域ではとろみのあるあんをからめる「溜汁」で作る店も多いとされる。同じ料理でも、烹か熘かで食感が変わるわけだ。
拔絲(バースー):飴が糸を引く甘い技法
拔絲は、揚げた材料に、砂糖を煮詰めて作った飴をからめる技法だ。皿から箸で持ち上げると、飴が細い糸のように伸びることからこの名がある。山東料理(魯菜)でよく知られる技法で、拔絲地瓜(さつまいもの拔絲)、拔絲蘋果(りんごの拔絲)、拔絲山薬(長いもの拔絲)などがある。
拔絲の要は、砂糖の煮詰め具合(熬糖)だ。作り方は大きく二つある。
- 水で煮詰める方法:砂糖に水を加えて煮詰める。口当たりがすっきりする。
- 油で煮詰める方法:少量の油で砂糖を溶かして煮詰める。
どちらの方法でも、糖の見極めは同じだ。最初は大きな泡がぼこぼこと立ち、やがて細かい泡に変わり、色が淡い黄褐色になったところが仕上がりの合図である。箸の先に糖をつけて冷水にさっと入れ、固まった糖をかんでパリッと割れれば煮詰め完了、歯にくっつくようならもう少し煮詰める。早すぎると糸が引かず、遅すぎると焦げて苦くなる。
さつまいもは六〜七成熱の油で、中がほっくりやわらかくなるまで揚げる。飴と材料は、どちらも熱いうちに手早く合わせるのが鉄則だ。盛り付ける皿には、あらかじめ油を薄く塗っておく。塗らないと飴が皿に張りついて、取れなくなる。
家庭で再現するコツ
- 揚げ油は、深さ3cm以上を確保する。浅いと材料を入れた瞬間に温度が大きく下がる。中華鍋は底が丸いので、少ない油でも深さを確保しやすい。
- 材料は一度に入れすぎない。油の量に対して材料が多いと、温度が下がって衣が油を吸い、べたつく。
- 二度揚げをする。一度目は160℃前後で中まで火を通し、取り出して2〜3分休ませる。二度目は180〜190℃で30秒〜1分、表面をカリッとさせる。休ませる間に、中の余熱で火が通り、表面の水分が抜ける。
- 衣のでんぷんは使い分ける。片栗粉は軽くカリッと、地瓜粉はごつごつした硬めの食感に仕上がる。鍋包肉の衣は、でんぷんを水に浸して沈殿させた「水でんぷん」を使うと、カリッと仕上がる。
- 烹の合わせ調味料(砂糖・白酢・醤油など)は、揚げる前に器に合わせておく。揚げた材料を鍋に戻したら、鍋肌から一気に注ぎ、数回あおって火を止める。
- 揚げ物の油は、ラードを3割ほど混ぜると、衣の香りとコクが増す。
よくある失敗
- 衣がはがれる:材料の水分を拭き取っていない。下味のあとはキッチンペーパーで表面の水気を取ってから衣をつける。
- 鍋包肉がすぐしんなりする:烹の合わせ調味料を入れてから、鍋で長くからめている。調味料を入れたら10秒ほどで皿に移す。
- 拔絲の飴が糸を引かない:糖の煮詰めが足りないか、材料が冷めている。冷水テストをしてから材料を入れ、材料は揚げたての熱いうちに合わせる。
- 拔絲の飴が苦い:煮詰めすぎ。強火で一気に煮詰めると、色が急に濃くなるので、中火でゆっくり見極める。
この記事で紹介した技法を使うレシピ
- 鍋包肉(锅包肉、グオバオロウ):衣をつけて揚げた豚肉に甘酢の合わせ調味料を一気にからめる、烹の代表的な料理。
- 鹹酥鶏:下味の鶏肉に地瓜粉をまぶして二度揚げする、干炸の仲間にあたる台湾の夜市料理。
- 紙包鶏(纸包鸡):漬け込んだ鶏肉を油をなじませた紙で包み、170℃を超えない油で揚げる紙包炸の料理。
- 鍋貼:油で底を焼き、水を加えて蒸し焼きにする、煎と蒸を組み合わせた料理。
- 海蛎煎(ハイリージェン):地瓜粉の生地と牡蠣をラードで焼きつけ、卵を回しかけて両面をこんがり焼く煎の料理。
- 鍋塌豆腐:小麦粉と卵の衣をつけた豆腐の両面を焼き、スープを吸わせきる山東の「塌」の代表。
- 抜絲地瓜(さつまいもの飴がらめ):揚げたさつまいもに、琥珀色まで煮詰めた飴をからめて糸を引かせる拔絲の代表。
出典
- 新浪博客(华南小厨)「三、热菜烹调方法」
- 新浪「教你4字口诀判断温油 几成热一看便知」
- 搜狐「油温几成热怎么判断?记住这“4点”就行,都是大厨几十年的经验」
- 新浪博客(双双爱烘焙)「拔丝菜熬糖是关键——拔丝地瓜」
- 中国新闻网「东北人的乡愁,是那吃得上一口锅包肉」
- 新浪财经「锅包肉本是一锅出」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。