福建料理・闽菜海蛎煎
海蛎煎(ハイリージェン)レシピ本場福建の配合を徹底解説

この記事はAmazonアソシエイトのリンクを含みます。
「台湾の夜市の名物」として知られる蚵仔煎(オアチェン)。だがこの牡蠣入りの粉焼きのふるさとは、海峡を挟んだ対岸——福建の南部、閩南にある。泉州市人民政府の観光サイトは海蛎煎を「泉州の沿海で千年以上続く風味小吃」と紹介しており、現在も泉州・厦門の街角で日常的に焼かれ続けている。
由来として最もよく語られるのが鄭成功の逸話だ。17世紀、鄭成功の軍が台湾からオランダ勢力を駆逐しようとしたとき、オランダ側は食糧を隠して兵糧攻めを仕掛けた。窮した兵たちは台南・赤嵌の浜で採れた牡蠣に、大陸から持ち込んだ地瓜粉(さつまいもでん粉)と山の湧き水を混ぜて焼き、黄金色の一枚に仕立てて飢えをしのいだ——これが海蛎煎の始まりだという。台南ではこれが当初「煎食追」と呼ばれていたとも伝わる。飢饉のなかで生まれた代用食が、そのまま海峡両岸で愛される看板料理になったわけだ。
呼び名は土地ごとに大きく変わる。閩南と台湾では「蚵仔煎」、大陸の共通語では「牡蛎煎」あるいは「海蛎煎」、潮汕では「蚝烙」、香港では「煎蠔餅」、シンガポールの潮州系では「蠔烙」。牡蠣を焼くという骨格は同じでも、使うでん粉と合わせる青菜が地域ごとに違う。
そして閩南式の輪郭を決めているのは、実は牡蠣ではなく粉のほうだ。使うのは小麦粉でも片栗粉でもなく地瓜粉。中国語のレシピが「海蛎煎の魂」と呼ぶ、独特のもっちりした弾力を生むさつまいもでん粉である。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。
本場式の配合
材料(2人分/直径18cmを2枚)
下処理用
- 生牡蠣加熱用むき身。小粒〜中粒のもの200g
- 洗浄用の水500ml
- 黄酒または日本酒5ml(小さじ1)
粉浆(生地)
焼き用
- 卵正味100g2個
- ラード30ml(大さじ2)
つけだれ(どちらか一方を選ぶ)
作り方
ボウルに生牡蠣200gと水500mlの半量を注ぎ、指先でやさしく回して汚れを落とす。水を替えてもう一度同じように洗う。ざるに上げ、キッチンペーパーで表面の水分を1粒ずつしっかり拭き取る。ここで水を残すと生地がゆるみ、焼き固まらない。
拭いた牡蠣に黄酒5mlを絡め、5分おいて生臭みを抜く。
別のボウルに地瓜粉60gと水70mlを入れ、だまが消えるまで混ぜる。生抽10ml・白胡椒粉0.5g・五香粉0.3gを加えてさらに混ぜる。スプーンですくうとすっと流れ落ちる、ゆるめのポタージュ状が目安。厚いと餅のような食感になる。
3に葉にんにく60gを加えて混ぜる。
2の牡蠣を4に入れ、同じ方向にゆっくり10回ほど混ぜる。牡蠣が潰れると水分が出て生地がゆるむので、混ぜすぎない。
卵2個を溶いておく。
直径24cmのフライパンを中火で1分空焼きし、ラード30mlのうち20mlを入れる。薄く煙が立つまで熱する。
5の生地の半量を流し入れ、フライ返しで直径18cmほどに薄く広げる。中火のまま2分焼き、縁が透明から白っぽく変わって固まってきたら、溶き卵の半量を上から全体に回しかける。
さらに1分焼き、フライ返しで4分割してから1切れずつ裏返す。ラード5mlを鍋肌から回し入れ、2分焼いて両面をこんがりさせる。
残りの生地・溶き卵・ラード5mlで、7〜9と同じ手順でもう1枚焼く。
熱いうちに皿へ移し、甜辣醤20gまたは陳醋15mlをつけて食べる。
本場と日本の違い
- 日本で「牡蠣オムレツ」として出てくるものの多くは台湾夜市式で、太白粉(じゃがいもでん粉)ベースの生地に甜不辣醤をたっぷりかけ、茼蒿(春菊)などの葉物を合わせる。閩南式は地瓜粉と葉にんにくが基本で、たれは甜辣醤か陳醋を少量つけるだけ。粉と青菜が違うだけで、食感も香りもかなり変わる。
- 卵を生地に混ぜ込まないのが閩南式の要点。片面が固まってから上に回しかけるので、断面がでん粉の層と卵の層に分かれる。日本の「牡蠣入りお好み焼き」的な一体型とはここが決定的に違う。
- 牡蠣は大粒より小粒を選ぶ。閩南では小ぶりの牡蠣が定番で、大粒だと中まで火が通る前に生地が焦げてしまう。
- 油の量は炒め物よりかなり多く、揚げ焼きに近い。参照した中国語レシピはいずれも「多めの油、煙が立つまで熱してから」で一致している。ラードを使うと本場の店の香りに近づく。
- 生地を薄く広げること、そして焼いている途中で何度も返して縁を焦がすことが「外酥里嫩(外はカリッと、中はとろり)」の条件になる。
参考ページ(写真)
下厨房の「海蛎煎」レシピページに、粉浆の濃度と焼き上がりの手順写真が多数掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/91125/
代用可能な食材
- 地瓜粉→片栗粉60g(もっちり感は弱くなる)、またはタピオカでん粉60g(本場の弾力にはこちらが近い)
- 葉にんにく→青ネギの青い部分60g、またはニラ60g(閩南のレシピでもニラを使う版がある)
- 生牡蠣→冷凍牡蠣(加熱用)200g(冷蔵庫で解凍し、水気を念入りに拭く)
- ラード→落花生油30ml、またはサラダ油30ml
- 生抽→濃口醤油8mlで代用可(風味は異なる)
- 黄酒→日本酒5ml
- 甜辣醤→スイートチリソース20g(厦門のものより甘さが立つ)
- 陳醋→米酢15ml(酸味が軽くなる)
保存・アレンジのコツ
- 焼きたてが最もおいしい。冷めた場合は200℃のオーブントースターで4分焼き直すと、縁のカリッとした食感が戻る。
- 粉浆は牡蠣を入れる前の状態なら、ラップをして冷蔵で1日おける。牡蠣を混ぜたあとは水分が出るのですぐに焼く。
- 潮汕式の蚝烙に寄せるなら、葉にんにくを外して仕上げにパクチー10gを散らし、魚露(ナンプラー)5mlをつけて食べる。
- 卵を3個に増やして生地を薄くすると、台湾夜市に近いふわりとした仕上がりになる。閩南式との食べ比べも面白い。
出典
- 泉州市人民政府「海蛎煎」
- 泉州市人民政府 美食文化「蚵仔煎」
- 温州市人民政府サイト「台湾美食-台湾蚵仔煎」
- 中文維基百科「蚵仔煎」
- 搜狐「海蛎煎:一口鲜甜,满口乡愁」
- 下厨房「海蛎煎」レシピ
- 下厨房「闽南版海蛎煎(蚵~仔煎啊!)」レシピ
- 下厨房「厦门海蛎煎」レシピ
- 下厨房「最正宗的闽南小吃海蛎煎---闽南人的最爱」レシピ
- 美食天下「闽南名小吃-海蛎煎」レシピ
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。