中華料理の教科書

中華の料理酒と油紹興酒・黄酒・料酒・米酒、菜種油・ラードの使い分け

茶色の瓶と杯に注いだ琥珀色の酒、黄色い油、白いラード、唐辛子入りの紅油の小皿の写真風の画像
公開

この記事はAmazonアソシエイトのリンクを含みます。

中国のレシピで、ほぼ毎回出てくるのに意外と正体がつかみにくいのが、酒と油だ。材料欄の「料酒」は紹興酒のことなのか、日本酒でいいのか。台湾のレシピの「米酒」は、日本の米酒(どぶろく)とは違うのか。油も、ただ「油」と書いてあるだけのことが多いが、四川の家庭では菜種油、広東ではピーナッツ油、上海の葱油拌麺にはラードと、地域によって使う油ははっきり違う。

酒については、まず「黄酒」という大きなくくりを押さえておくとわかりやすい。紹興酒は黄酒の一種で、浙江省紹興で造られる黄酒を指す名前だ。料酒は、黄酒をもとに料理用に調整した調味酒。台湾の米酒は、米から造る蒸留酒で、黄酒とはまったく別物だ。

油も同じで、香りのある油と香りのない油を使い分けるのが中華の流儀だ。四川の回鍋肉を菜種油で炒めると、香ばしさが一段深くなる。仕上げのごま油や辣椒油は、加熱用ではなく香りづけ用の油だ。

ここから先では、中華の料理酒(黄酒・紹興酒・料酒・米酒・白酒・醪糟)と油(菜種油・ピーナッツ油・ラード・ごま油・紅油・花椒油・葱油)の種類と使い分け、日本の食材での代用のしかたを解説する。

黄酒:中国の醸造酒の総称

黄酒(ホアンジウ)は、もち米・米・きびなどの穀物を、麹で糖化・発酵させて造る中国の醸造酒の総称だ。色が黄色から琥珀色をしていることからこの名がある。日本酒と同じ醸造酒だが、麦麹などの麹を使い、熟成させることが多いので、色が濃く、カラメルやナッツのような香ばしい香りがある。

料理では、肉や魚のくさみを消し、香りとうま味を加える役割を担う。紅焼肉・東坡肉・醉鶏(酒漬けの鶏)など、江南の料理には欠かせない。

紹興酒・花雕・加飯:紹興の黄酒

紹興酒は、浙江省紹興で、もち米・麦麹・鑑湖の水を使って造られる黄酒だ。紹興酒は黄酒の一種であって、黄酒のすべてが紹興酒ではない。紹興の黄酒は、糖分の量によって、おおむね次の四つに分けられる。

  • 元紅酒:辛口。アルコール度数は15〜16度ほど。魚介や淡い味の冷菜に合う。
  • 加飯酒:仕込みの米の量を増やした、やや辛口の濃醇なタイプ。16〜18度ほど。紅焼肉や上海蟹など、味の濃い料理に合う。
  • 善醸酒:やや甘口。15〜17度ほど。
  • 香雪酒:甘口。18〜20度ほど。

花雕酒(ホアディアオ酒)は、加飯酒を長く熟成させたものだ。「女児紅」も同じ系統の酒とされる。料理に使うなら、紹興酒の中でも手ごろな加飯酒や、「料理用」と表示された紹興酒で十分だ。

料酒:料理用に調整された調味酒

料酒(リャオジウ)は、黄酒をもとに再加工した調味用の酒だ。商品によっては、香辛料や塩などを加えて風味を調えている。中国の家庭では、ごく日常的な調味料だ。

中国語のレシピで単に「料酒」と書かれていたら、紹興酒を指定しているわけではない。日本で作るなら、料理用の黄酒か、紹興酒、あるいは日本酒で代用できる。紹興酒を使うと香りが濃く出るので、量を2割ほど減らすとちょうどいい。日本酒を使う場合は、黄酒より香りが軽いので、そのまま同量でよい。料理酒(日本の加塩料理酒)を使うと塩分が加わるので、塩を控える。

台湾の米酒:蒸留酒の料理酒

米酒(ミージウ)は、台湾の料理に欠かせない酒だ。日本の「米酒」から連想するどぶろくや甘酒ではなく、米を原料にした蒸留酒で、焼酎に近い。台湾の公営酒造の「紅標米酒」が代表的だ。

台湾の食品専門メディアによれば、純米の米酒はアルコール度数22度。料理用の「料理米酒」は、蒸留した米酒に食用アルコールを合わせたもので、度数は20度未満に抑えられている。

台湾では、くさみ消し・漬け込み・味つけに広く使われる。とくに麻油鶏・姜母鴨・三杯雞では、水をほとんど使わず、米酒をたっぷり注いで煮るのが本場の作り方だ。代用するなら、日本の米焼酎(25度)を水で少し割るか、日本酒を使う。日本酒で作るとやや甘く、まろやかな仕上がりになる。

白酒と醪糟

  • 白酒(バイジウ):高粱などを原料にした中国の蒸留酒。アルコール度数が高く、腊肉や腊腸の漬け込み、魚のくさみ消しに少量使う。代用はウォッカか焼酎だ。
  • 醪糟(ラオザオ):もち米を麹で発酵させた、甘くアルコールの弱い酒醸。酒醸・甜酒醸とも呼ぶ。四川や貴州では、煮込みや炒め物に甘みとコクを足すのに使い、貴州の腸旺麺の脆哨(豚バラのカリカリ炒め)の味つけにも入る。デザートでは酒醸湯圓(白玉の甘酒煮)が定番だ。日本の米麹甘酒で代用できる。

菜種油とピーナッツ油:地域を表す炒め油

  • 菜種油(菜籽油):四川・重慶・湖南・貴州など、西南中国の標準の調理油。とくに、菜種を炒ってから搾る「濃香菜籽油(小榨菜籽油)」は、独特の香ばしさと、少し青い香りがある。四川の工場の報道では、伝統的な炒籽の温度は190℃ほどで、近年は150℃前後の中温で炒って香りを残す方法も取り入れられているという。辣椒油や郫県豆瓣醤の香りとよく合い、回鍋肉や麻婆豆腐の油に使うと、香りが一段深くなる。
  • ピーナッツ油(花生油):広東・福建・山東などでよく使う油。炒った落花生を搾った濃香タイプは、ナッツのような香りがある。広東の炒め物や、清蒸魚の仕上げにかける熱い油に向く。

濃香タイプの菜種油は、使う前に煙が出るまで熱してから少し冷ます「熟油」にすると、生の菜種のにおいが消える。日本の菜種油(キャノーラ油)は精製されていて香りがないので、そのまま炒め油として使える。香りを足したいなら、炒め油の1〜2割を太白ごま油やピーナッツ油にすると近づく。

ラード(猪油):江南と広東のコク

ラード(猪油)は、豚の脂を加熱して溶かし出した油だ。青菜炒めに使うとつやとコクが出て、上海の葱油拌麺、葱油餅、ワンタンのスープの仕上げなどに使われる。中華菓子のパイ生地(油酥)にも欠かせない。

自分で作るなら、豚背脂を1〜2cm角に切り、一度ゆでこぼしてから、脂がかぶるくらいの湯と一緒に鍋に入れ、強火で水分を飛ばす。水分がなくなったら弱火にし、脂かすがきつね色に縮むまでじっくり加熱して、こして保存する。最初に湯を入れると、温度が上がりすぎず、焦げや嫌なにおいが出にくい。

ごま油と黒ごま油:香りづけの油

  • ごま油(香油・芝麻油):中国の小磨香油は、炒ったごまを石臼で挽き、湯を加えて油を浮かせる「水代法」で作る、香りの非常に強いごま油だ。中国の報道では、加熱用ではなく、冷菜・あん・仕上げの香りづけに使うのがよいとされている。高温で加熱すると、焦げたような香りになるからだ。
  • 黒ごま油(黒麻油):台湾の、黒ごまを深く煎って搾った油。一般のごま油より香りが濃く、麻油鶏・三杯雞・姜母鴨のように、生姜と一緒に炒めて料理の主役の香りにする。台湾ではこの用途に限って、加熱して使う。

紅油・花椒油・葱油:香りを移した油

  • 紅油(辣椒油):粉唐辛子に熱した油を注いで、色と香りを移したもの。重慶の料理記事では、菜種油を煙が出るまで熱し、120℃前後まで冷ましてから、少しずつ注ぐ方法が紹介されている。高すぎる温度で注ぐと唐辛子が黒く焦げ、低すぎると香りが出ない。口水鶏・夫妻肺片・紅油抄手など、四川の冷菜や麺のたれに使う。粉唐辛子に熱い油をかけて具ごと食べる油泼辣子は陝西の、具入りの油辣椒は貴州・雲南の流儀で、紅油とは使い方が違う。
  • 花椒油:花椒の香りとしびれを油に移したもの。冷菜や麺のたれに数滴加えるだけで、四川らしいしびれが出る。
  • 葱油(ツォンヨウ):ラードや植物油で、ねぎ・生姜などをきつね色になるまで揚げ、香りを移した油。上海の葱油拌麺は、この葱油と醤油だけで作る。台湾では、揚げエシャロットの油蔥酥とその油を、麺や魯肉飯の香りづけに使う。

家庭で使い分けるコツ

  • 酒は鍋肌から:炒め物では、具を炒めたところに鍋肌から酒を回し入れると、一瞬で蒸発して香りだけが残る。煮込みでは、最初に入れてアルコールを飛ばす。
  • 酒の量の目安:炒め物一皿(肉200g)に大さじ1、煮込み(肉500g)に大さじ2〜3。
  • 油は「炒める油」と「香りの油」を分ける:炒め油には香りの穏やかな菜種油やピーナッツ油、仕上げにはごま油や紅油、花椒油を少量。
  • 油の温度管理:紅油や熱い油かけの料理は、油温度計で温度を測ると失敗が少ない。
  • 保存:ごま油・紅油・花椒油は酸化しやすいので、小瓶で買い、冷暗所で保存する。ラードは冷蔵庫で1か月ほどもつ。

よくある失敗

  • 紹興酒の香りが強すぎる:料酒の分量をそのまま紹興酒に置き換えている。紹興酒は2割ほど減らすか、日本酒と半々にする。
  • 麻油鶏が苦い:黒ごま油を強火で熱しすぎている。黒ごま油は弱めの中火で、生姜を入れてから温める。
  • 紅油の色が黒い:油の温度が高すぎる。煙が出るまで熱したら、少し冷ましてから注ぐ。
  • ごま油で炒めたら焦げくさい:香りの強いごま油は加熱用ではない。炒め油はほかの油を使い、ごま油は仕上げに数滴たらす。

この記事で紹介した調味料を使うレシピ

  • 東坡肉:黄酒(紹興酒)をたっぷり使って豚バラ肉を煮込む、杭州の名物料理。
  • 麻油鶏:黒ごま油で老生姜をじっくり炒め、骨付き鶏を米酒だけで煮込む台湾の養生食。
  • 腸旺麺(肠旺面):カリカリに炒めた豚バラの脆哨を香醋と醪糟で味つけし、麺にのせる貴陽の麺。
  • 毛血旺(マオシュエワン):郫県豆瓣醤と火鍋の素のスープで具を煮て、熱した菜種油をかける重慶の料理。
  • 清蒸魚(広東式蒸し魚):煙が出る直前まで熱したピーナッツ油などを、蒸し上げた魚にジュッとかける。
  • 口水鶏:ラー油と花椒油を合わせたたれを、ゆでて締めた鶏にかける四川の冷菜。
  • 葱油和え麺(葱油拌麺、葱油拌面):長ねぎを弱火の油でじっくり煮出した葱油と醤油で和える、上海の麺。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。