中華料理の教科書

蒸籠・砂鍋・網じゃくし持っておきたい中華の道具

重ねた竹の蒸籠と茶色い砂鍋、網じゃくし、布巾を木の台に置いた中華の道具の写真風の画像
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中華鍋と中華包丁がそろうと、炒め物はひととおり作れるようになる。けれど、本場のレシピを読み進めると、「蒸籠で強火10分」「砂鍋に移して弱火で20分」「漏勺で油を切る」といった指示がたびたび出てくる。蒸す・土鍋で煮る・揚げて油を切るといった工程は、鍋一つでもどうにかなる。ただ、専用の道具があると仕上がりがはっきり変わる。

たとえば点心。金属の蒸し器で小籠包を蒸すと、ふたの裏にたまった水滴が落ちて、皮がべちゃっとしやすい。竹の蒸籠なら、ふたの竹が余分な湯気を吸ってくれるので、皮の表面が乾いたまま蒸し上がる。煲仔飯(土鍋ご飯)のおこげも、熱をゆっくりため込んでじわじわ伝える砂鍋(土鍋)だからできる。

一方で、どれも「買ったはいいが、カビが生えた」「割れた」という失敗が多い道具でもある。竹や素焼きは、金属の鍋とは扱いの勝手がまったく違うからだ。

ここから先では、蒸籠・砂鍋・網じゃくしを中心に、油温度計やすり鉢も含めた中華の脇役道具の選び方と使い方、手入れのコツを解説する。

蒸籠(ジョンロン):竹が湯気をコントロールする

蒸籠(蒸笼)は竹を編んで作る蒸し器だ。湯を沸かした鍋の上に置き、立ち上る蒸気で食材に火を通す。中国で「蒸す」調理の歴史は古く、新石器時代の仰韶文化の頃には、土器の甑(こしき)や、のちに青銅の甗(イエン)で蒸していたとされる。香港の蒸籠職人の技術をまとめた資料によれば、第二次世界大戦後に茶楼で点心が広まると、蒸籠は欠かせない道具になり、職人の仕事も最盛期を迎えた。

伝統的な蒸籠の作りは次のとおりだ。

  • 外枠:平たく割いた竹を丸く曲げ、針金や籐で留める。
  • 内壁(頂竹):竹の薄板を何層も重ね、丸い形を保つ。
  • 籠底:幅2cmほどの太い桟に、幅1cmほどの細い桟を約1cm間隔で渡した格子。蒸気を通しながら、食材の重さを支える。
  • ふた:竹を編んだ網代(あじろ)を張る。

広東ではおもに羅定産の羅竹が、福建では肉厚で丈夫な楠竹(毛竹。日本の孟宗竹と同じ種)が使われるという。伝統的な作りでは金属を使わず、釘まで竹で作る。

竹の蒸籠がよいとされる理由は、ふたにある。金属のふたは蒸気が冷えて水滴になり、それが食材に落ちる。竹のふたは水分を吸い、編み目から少しずつ湯気を逃がすので、ふたの裏から水が垂れにくい。小籠包や焼売、蝦餃のように皮の表面を乾いたまま仕上げたい点心では、この差が大きい。

木製(杉など)の蒸籠もあるが、家庭用なら竹で十分だ。

蒸籠の選び方:サイズは鍋から決める

蒸籠は単独では使えない。下で湯を沸かす鍋とのサイズの組み合わせがすべてだ。

  • 家庭用の定番は直径21〜27cm。2段と、ふた1枚をそろえると、点心なら1段に8〜10個ほど並ぶ。
  • 中華鍋の上に直接のせる場合、蒸籠の直径は鍋の直径より5〜6cm小さいものを選ぶ。30cmの鍋なら24cm前後の蒸籠がちょうどいい。鍋の内側の斜面に蒸籠の外枠がのり、すき間から蒸気が逃げにくい。
  • 片手鍋や両手鍋の上にのせたい場合は、中華せいろ用鍋(蒸籠の径に合わせた段付きの鍋、または変換用の輪)を使うと安定する。鍋のふちと蒸籠の径が合わないまま使うと、蒸気がもれて火の通りがむらになる。
  • 炊飯器や電気鍋の上で使う小型(18〜21cm)もある。ただし火力が弱いので、冷凍の包子などは表示より時間がかかる。

蒸籠の使い方と手入れ

使い始めは、ぬるま湯で軽く洗ってから、何も入れずに一度空蒸しする。竹のにおいが和らぎ、竹が水分を含んで割れにくくなる。

蒸すときのポイントは次のとおりだ。

  • 鍋の湯は蒸籠の底につかない高さにする。中華鍋なら水深3〜4cmが目安だ。湯が蒸籠に触れると底が焦げたり、竹が水を吸いすぎたりする。
  • 必ず湯が沸騰してから蒸籠をのせる。冷たい状態から蒸すと、点心の皮がだれる。
  • 籠底には敷き物をする。蒸し布(さらしやガーゼを濡らして固く絞ったもの)、穴を開けたクッキングシート、キャベツや白菜の葉、荷葉(乾燥した蓮の葉を戻したもの)などを使う。粉蒸肉や珍珠丸子のように汁や脂の出るものは、耐熱皿ごと蒸籠に入れてもよい。
  • 長時間蒸すときは、空だき防止に湯を足す。足すのは必ず熱湯にする。

手入れで大事なのは「洗いすぎない、すぐ乾かす」ことだ。

  • 使用後は、たわしとお湯で汚れを落とす。洗剤は竹にしみ込んでにおいが残るので、基本的には使わない。
  • 洗ったら、風通しのよい場所で、段をばらして完全に乾かす。中国の購入レビューのコメント欄でも、引き出しや戸棚にしまってカビを生やしたという声が多い。壁に掛けておくのがいちばん確実だ。
  • 黒い点状のカビが出たら、たわしでこすってから、熱湯をかけて天日に干す。

砂鍋(シャーグオ):じわじわ伝わる熱が持ち味

砂鍋は、粘土を焼き固めた土鍋の総称だ。広東では「煲(ボウ)」と呼び、煲仔飯・啫啫煲・老火湯など、鍋の名前がそのまま料理名になっている。砂鍋の長所は、熱をため込んで、全体にゆっくり伝えること。鉄の鍋のように局所的に熱くならないので、弱火の長時間の煮込みや、鍋ごと食卓に出して冷めにくくしたい料理に向く。

中国の家庭でよく使う形は次のとおりだ。

  • 深型の煲:スープや煮込み用。老火湯(広東の長時間煮込みスープ)など。
  • 浅型の小鍋(煲仔):一人用の土鍋ご飯や、小鍋米線のような一人前の鍋料理用。
  • 取っ手付きの片手の小鍋:啫啫煲など、強火で一気に仕上げて、ジュージュー音を立てたまま出す料理用。

日本の土鍋でも同じように使えるが、煲仔飯を作るなら直径16〜18cmで、深さ7〜8cmの一人用が扱いやすい。米1合なら、このサイズに収まる。

砂鍋の使い始めと割れを防ぐコツ

新しい砂鍋は、表面に細かい穴が残っている。中国でも日本と同じく、最初に米のとぎ汁や粥を炊いて、でんぷんで目止めをする。

  • 米と水を1対3ほどで鍋に入れ、弱火で、汁にとろみがつくまで煮る。火を止めたらそのまま冷まし、洗って乾かす。
  • 最初の数回は、粥やスープなど水分の多い料理に使い、油の多い料理や酸の強い料理は避ける。

割れの原因はほとんどが急な温度変化だ。

  • 空だきをしない。煲仔飯で、おこげを作るために鍋肌に油を回すときも、米と水が入った状態で火にかける。
  • 火は弱火から始め、温まってから中火・強火にする。
  • 加熱中に水を足すときは熱湯を使う。
  • 熱い鍋は、濡れた場所やタイルの上に直接置かず、乾いた木の板や鍋敷きの上に置く。
  • 洗うのは完全に冷めてから。こびりつきは、水に浸けてふやかしてから、やわらかいスポンジで落とす。

煲仔飯のおこげは、香港の店でも季節ごとに火加減を変えて調整するほど、繊細な技術だ。家庭では、炊き上がり直前に鍋のふちから油を大さじ1ほど回し入れ、鍋を少しずつ回して、底全体を均等に火に当てると、まんべんなく焼ける。中華ソーセージをのせる場合は、水分が引いて米の表面に小さな穴が見えてきたところでのせる。

網じゃくし(漏勺):油と湯を切る道具

漏勺(ロウシャオ)は、穴の開いた浅いお玉のような道具で、日本では網じゃくしと呼ばれることが多い。中華の厨房では、次のような場面で使う。

  • 過油(油通し):上漿した肉を油にくぐらせたら、漏勺ですくって油を切る。
  • 二度揚げ:糖醋里脊や鍋包肉のように、一度目と二度目の揚げの間で、材料をまとめて引き上げる。
  • 焯水(下ゆで):青菜や肉をゆでてすくい上げる。
  • 麺:ゆでた麺を一人前ずつすくう。

中華のお玉とセットで使うと、炒め物の途中で具を出し入れするのが一気に楽になる。家庭用なら直径14〜16cmの、柄の長い鉄製かステンレス製が使いやすい。目の細かい網タイプと、穴の大きいパンチングタイプがあるが、揚げ物にも麺にも使えるのは網タイプだ。

油温度計・すり鉢・竹串:あると失敗が減る小道具

  • 油温度計:中国のレシピは油温を「五成熱」「七成熱」のように成数で書くことが多い。目安はおおよそ一成=30℃前後とされるが、家庭では見た目で判断しにくい。滑油(低温の油通し)の120〜150℃と、二度揚げの180〜200℃を正確に分けたいなら、温度計が一本あると確実だ。
  • すり鉢と擂茶棒:湖南の擂辣椒(焼いた唐辛子をすりつぶすもの)や擂茶は、内側に溝のある陶製の擂鉢(レイボー)で搗きつぶして作る。日本のすり鉢で代用できる。ミキサーと違って繊維が粗く残り、たれがなじみやすい食感になる。花椒や唐辛子を少量だけ挽くときにも便利だ。
  • 竹串:蒸し物の火の通りを確かめるのに使う。蒸し魚の背の厚い部分に刺して、すっと通れば蒸し上がりだ。

よくある失敗

  • 蒸籠の底が焦げる:鍋の湯が少なすぎて空だきになっている。15分以上蒸すときは途中で熱湯を足す。
  • 点心の皮が蒸籠に張りつく:敷き物がないか、敷き紙に穴を開けていない。濡らした蒸し布か、穴開きのクッキングシートを使う。
  • 蒸籠にカビが生える:洗ったあと、重ねたまましまっている。段をばらして、完全に乾くまで干す。
  • 砂鍋にひびが入る:空だきか、急な温度変化が原因。熱い鍋を冷たいところに置かない、加熱中に冷水を足さないの二つを守る。
  • 土鍋の料理が煮詰まりすぎる:砂鍋は火を止めても余熱でしばらく沸き続ける。仕上がりの1〜2分前に火を止めるくらいでちょうどいい。

この記事で紹介した道具を使うレシピ

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。