中華料理の教科書

ガチ中華のメニューの読み方料理名の漢字で技法・切り方・味がわかる

いんげんの炒め物、赤い油の魚料理、きゅうりの和え物、じゃがいもの細切り炒めと白飯が並ぶ食卓の写真風の画像
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日本語の説明がほとんどない「ガチ中華」の店で、漢字だけのメニューを前に固まってしまった経験はないだろうか。写真があればまだいいが、文字だけだと、何が出てくるのか見当もつかない。勘で頼んだら真っ赤な激辛料理が来た、という話もよく聞く。

ただ、中国の料理名は、実はかなり「説明的」にできている。魚香肉絲なら、魚香(味の型)+肉(豚肉)+絲(細切り)。干煸四季豆なら、干煸(水分を飛ばす炒め方)+四季豆(さやいんげん)。水煮魚なら、水煮(辛いスープで煮る四川の技法)+魚。味・技法・切り方・食材という部品の組み合わせで、たいていの料理名ができている。

もちろん、獅子頭(肉団子)や螞蟻上樹(春雨とひき肉の炒め煮)のように、見た目や物語から付けた名前もある。それでも、よく出てくる漢字を100字ほど覚えておけば、知らない料理でも「どんな味で、どう調理して、何が入っているか」はだいたい読めるようになる。

ここから先では、料理名の組み立て方のパターン、技法・味・切り方・食材・器を表すよく出る漢字、値段や量の書き方、そして辛さの伝え方など注文の実践までを解説する。

料理名は「部品」の組み合わせ

中国の料理名は、大きく「写実型」と「写意型」に分けられる。写実型は字面から中身がわかる名前、写意型は見た目のたとえや縁起、故事から付けた名前だ。ガチ中華のメニューの大半は写実型なので、まずは部品の組み合わせ方を知っておくとよい。

  • 技法+主材料:清蒸魚、紅焼肉、干煸豆角、白灼蝦、回鍋肉。
  • 味+主材料:魚香肉絲、糖醋排骨、麻辣香鍋、酸辣湯、椒塩蝦。
  • 主材料+副材料:青椒肉絲(ピーマンと豚肉)、番茄炒蛋(トマトと卵)、土豆燉牛肉。
  • 副材料+技法+主材料:芹菜炒牛肉、蒜苔炒肉、辣椒炒肉。
  • 地名+料理:西湖醋魚、蘭州牛肉麺、重慶小麺、桂林米粉、揚州炒飯。
  • 器+料理:鉄板牛肉、干鍋花菜、砂鍋米線、石鍋拌飯、煲仔飯。

写意型の例も覚えておくと楽しい。獅子頭は大きな肉団子を獅子の頭に、螞蟻上樹は春雨にからむひき肉を木を登るアリに見立てた名前だ。佛跳墻(お坊さんも塀を跳び越えてくるほどの香り)、叫花鶏(こじき鶏)は故事や伝説から付いた。全家福(家族全員の幸せ)のような縁起物の名前は、宴会料理によく使われる。

技法を表す漢字

料理名の動詞にあたる部分だ。このマガジンの技法の記事と合わせて読むと理解が深まる。

  • 炒(チャオ):炒める。小炒肉、清炒時蔬(季節の青菜炒め)。
  • 爆(バオ):強火で一気に炒める。爆炒腰花、葱爆羊肉。
  • 溜・熘(リウ):揚げたり油通しした材料に、とろみのあんをからめる。溜肉段、醋溜白菜。
  • 干煸(ガンビエン):少なめの油で中火でじっくり炒め、水分を飛ばして香ばしく仕上げる。汁気はなく「油は見えても汁は見えない」状態になる。干煸豆角、干煸牛肉絲。
  • 干焼(ガンシャオ):汁気がほぼなくなるまで煮詰める。辛いとは限らない。干焼蝦仁、干焼魚。
  • 紅焼(ホンシャオ):醤油と砂糖で色濃く煮る。紅焼肉、紅焼排骨。
  • 水煮(シュイジュー):唐辛子と花椒の効いた辛いスープで煮て、最後に熱い油をかける四川の技法。名前に反して「水で煮るだけ」ではない。水煮牛肉、水煮魚。
  • 清蒸(チンジョン):味付けを控えて蒸す。清蒸魚。粉蒸(米粉をまぶして蒸す)は粉蒸肉。
  • 白灼(バイジュオ):熱湯でさっとゆでて、たれをかける広東の技法。白灼蝦、白灼菜心。
  • 炸(ジャー):揚げる。干炸、軟炸、酥炸などの種類がある。
  • 拌・涼拌(バン):和える。冷菜に多い。拍黄瓜(たたききゅうり)、涼拌木耳。
  • 滷・醤(ルー・ジャン):香辛料入りの煮汁で煮て味を含ませる。滷味、醤牛肉。
  • 燉(ドゥン)・燜(メン)・煲(バオ):煮込む。小鶏燉蘑菇、黄燜鶏、煲仔飯。
  • 烤(カオ):焼く・あぶる。羊肉串(烤串)、烤魚、北京烤鴨。

味を表す漢字

  • 麻辣(マーラー):しびれと辛さ。花椒と唐辛子。
  • 香辣(シャンラー):香ばしい辛さ。しびれは控えめなことが多い。
  • 酸辣(スワンラー):酸っぱ辛い。酸辣湯、酸辣土豆絲。
  • 魚香(ユーシャン):泡椒(漬け唐辛子)を使った甘酸っぱ辛い味。魚は入っていない。
  • 宮保(ゴンバオ):焦がした唐辛子と花椒にピーナッツ、ほんのり甘酸っぱい。
  • 糖醋(タンツー):甘酢。糖醋里脊、糖醋排骨。
  • 椒塩(ジャオイエン):花椒塩。揚げ物に多い。椒塩排骨、椒塩蝦。
  • 蒜蓉(スワンロン):にんにくのみじん切り。蒜蓉粉絲蒸扇貝。
  • 豉汁(チージー):豆豉のたれ。豉汁蒸排骨。
  • 剁椒・泡椒:剁椒は刻んで漬けた唐辛子(湖南)、泡椒は丸ごと漬けた唐辛子(四川)。どちらも酸味のある辛さ。
  • 沙茶(シャーチャー):沙茶醤の味。福建・潮汕・台湾の料理に多い。
  • 孜然(ズーラン):クミン。羊肉串など西北の料理に多い。
  • 酸湯(スワンタン):貴州の酸っぱいスープ。酸湯魚。
  • 三杯(サンベイ):ごま油・醤油・米酒を同量ずつ使う煮込み。三杯鶏。
  • 家常(ジアチャン):家庭風。四川では郫県豆瓣醤の味を指すことが多い。

切り方と形を表す漢字

料理名の最後に付くことが多い。食感の予想に役立つ。

  • 絲(スー):細切り。肉絲、土豆絲。
  • 片(ピエン):薄切り。水煮肉片、回鍋肉の肉もこれ。
  • 丁(ディン):さいの目。宮保鶏丁、醤爆鶏丁。
  • 塊(クワイ):ぶつ切り・大きめの角切り。
  • 条(ティアオ):拍子木切り。
  • 段(ドゥアン):筒切り。溜肉段、干煸鱔段。
  • 末(モー):みじん切り・ひき肉。肉末、酸豆角炒肉末。
  • 球(チウ)・花(ホア):切り目を入れて丸まらせたもの。蝦球、腰花。
  • 茸・蓉(ロン):すりつぶしたペースト。

食材の漢字:メニューでよく見るもの

  • 肉:単に「肉」と書けば、ほぼ豚肉。牛肉・羊肉・鶏・鴨・鵝(ガチョウ)は明記される。
  • 豚の部位:里脊(ヒレ・ロース)、五花肉(豚バラ)、排骨(スペアリブ)、肘子・蹄膀(すね)、肥腸(大腸)、腰花(腎臓)。
  • 牛の内臓:毛肚(センマイ)、牛百葉(センマイ)、牛筋(すじ)。火鍋や冒菜でよく見る。
  • 魚介:魚(白身の川魚が多い)、蝦・蝦仁(えび・むきえび)、蟹、魷魚(いか)、扇貝(ほたて)、花甲(あさりの仲間)。
  • 野菜:土豆(じゃがいも)、茄子(なす)、四季豆(さやいんげん)、豆角(ささげなど)、包菜(キャベツ)、娃娃菜(ミニ白菜)、菜心(菜の花の茎)、空心菜、木耳(きくらげ)、蘑菇(きのこ)。
  • 豆腐類:豆腐、豆干(押し豆腐)、腐竹(湯葉の乾物)、千張・百葉(シート状の押し豆腐)。
  • 数字の名前:地三鮮は「土の幸三つ」でなす・じゃがいも・ピーマン、八宝は八種類の具、全家福は具だくさんの煮込みを指すことが多い。

器とスタイルを表す漢字

  • 干鍋(ガングオ):汁気の少ない料理を小鍋ごと卓上で温めながら食べる。火鍋をスープなしにしたもの、と説明されることもある。焦げないように時々かき混ぜる。
  • 鉄板(ティエバン):熱した鉄板にのせて、ジュージューいわせて出す。
  • 砂鍋・煲(シャーグオ・バオ):土鍋料理。煲仔飯は土鍋炊きご飯。
  • 香鍋(シャングオ):麻辣香鍋のように、好きな具を選んで汁なしで炒め合わせる。
  • 冒菜・麻辣燙:具を選んで辛いスープで煮る。重さで値段が決まる店が多い。
  • 火鍋:鍋のスープ(鍋底)と具を別々に選ぶ。鴛鴦鍋は辛いスープと辛くないスープの二色鍋だ。

値段・量の書き方

  • 斤(ジン)と両(リャン):中国の1斤は500g、1両は50g。魚や羊肉串、麺類で使われる。「按斤計価」は重さで値段が決まるという意味だ。
  • 時価:その日の仕入れで値段が変わる。海鮮に多いので、注文前に値段を確認したい。
  • 份・例(フェン・リー):一皿の単位。小份(少なめ)、大份(多め)、半份(半量)が選べる店もある。
  • 位(ウェイ):一人前。火鍋の具やスープで「每位」と書かれていれば、一人あたりの値段だ。
  • 串(チュアン):串焼きの本数単位。羊肉串などは1本いくらで書かれていることが多い。
  • 米飯・主食:中国の店では、ご飯や麺は料理と別に頼むのが普通だ。

注文の実践:辛さと苦手なものの伝え方

  • 辛さ:不辣(辛くない)、微辣(少し辛い)、中辣(中辛)、特辣・重辣(激辛)。店によって辛さの基準がかなり違うので、初めての店では「微辣」から頼むのが無難だ。
  • 苦手なものを抜く:不要香菜(パクチー抜き)、不要葱(ねぎ抜き)、不要花椒(花椒抜き)、少油(油少なめ)、少放塩(塩控えめ)。「不要〜」と言えばだいたい通じる。
  • 量の目安:大皿料理は2〜3人で1皿が基本。二人なら、炒め物1皿、冷菜1皿、主食1つくらいから始めるとちょうどいい。
  • 持ち帰り:残ったら「打包(ダーバオ)」と言えば容器に詰めてもらえる。

この記事で紹介した料理名を使うレシピ

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。