中華鍋の選び方北京鍋と広東鍋、鉄と打ち出し、油ならしまで

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中華料理の道具を一つだけ選ぶなら、やはり中華鍋だ。炒める、揚げる、煮る、蒸す、いる。中国の家庭でも店でも、底の丸い鉄の鍋一つでほとんどの料理をこなしてしまう。中国語では炒め鍋を「炒鍋(チャオグオ)」、広東語では「鑊(ウォク)」と呼び、英語の「wok」もこの広東語から来ている。
ところが、いざ買おうとすると選択肢が多い。片手の北京鍋か、両手の広東鍋か。鉄か、鋳物か、フッ素加工か。打ち出しとプレスは何が違うのか。直径は何cmがいいのか。IHで使えるのか。そして、買ったあとの「油ならし」はどうすればいいのか。
中国でも事情は似ていて、メディアや料理人がよく「生鉄の鍋と熟鉄の鍋、どちらがいいか」「新しい鉄鍋はどう開鍋(油ならし)するか」といった解説をしている。数十年使えると言われる鉄の鍋だからこそ、最初の選び方と育て方で、使い心地が大きく変わる。
ここから先では、中華鍋の形(片手と両手)、材質ごとの性質、家庭向けのサイズ、中国の名産として知られる章丘鉄鍋、開鍋(油ならし)の手順と日々の手入れを解説する。
片手の北京鍋、両手の広東鍋
日本では、柄が一本の中華鍋を北京鍋、取っ手が左右に二つついたものを広東鍋と呼んで売っていることが多い。中国でも、北方と南方で使う鍋の形が違うことはよく話題になる。
- 片手鍋(北方の炒勺・馬勺):北方の料理人が使う、柄の長い炒め鍋。「馬勺(マーシャオ)」とも呼ばれる。軽く、片手で鍋をあおって(顛勺)材料を返せるので、一皿ずつ手早く仕上げる炒め物に向く。そのぶん、腕と手首の力が必要だ。
- 両手鍋(南方の双耳鍋):広東を中心とする南方の料理人が使う、左右に耳のついた鍋。口径が大きく深めで、大量の炒め物や揚げ物、煮込み、蒸し物までこなせる。熱い耳は布巾でつかみ、かまどの縁を支えにして鍋を動かすので、片手鍋ほど腕力はいらない。
中国の料理人の解説では、南方の店の鍋は北方の炒勺より一回りか二回り大きいことが多く、北方の料理人が南方の大きな鍋を片手で振るのは難しい、とも言われている。どちらが優れているということではなく、地域の料理と厨房の事情に合わせて形が分かれてきたものだ。
家庭で選ぶなら、次のように考えるとよい。
- 炒め物が中心で、鍋をあおってみたい:北京鍋。柄を持ったまま鍋を前後にゆすれるので、家庭のコンロでも扱いやすい。
- 揚げ物・煮込み・蒸し物にもよく使う:広東鍋。安定感があり、蒸籠をのせて蒸し器としても使える(蒸し専用に、径の合った中華せいろ用鍋を別に用意する人もいる)。
- 迷ったら、まずは北京鍋を一つ。広東鍋は二つ目に。
材質ごとの性質
- 熟鉄(低炭素の鉄):炭素の少ない鉄の板から、たたいたりプレスしたりして成形する。薄くて軽く、熱がすぐに伝わる。強火で一気に炒める爆炒や顛勺に向く。中国の解説でも、普通の家庭には熟鉄の鍋を勧める声が多い。日本で「打ち出し」と呼ばれる鍋は、鉄の板をハンマーでたたいて成形したもので、この熟鉄の系統にあたる。
- 生鉄・鋳鉄(高炭素の鉄):溶かした鉄を型に流して作る。厚くて重く、温まるのも冷めるのも遅い。そのぶん保温性が高く、煮込みや揚げ物に向く。硬いが粘りがなく、落とすと割れることがある。
- ステンレス・多層鋼:さびにくく手入れは楽だが、鉄に比べると材料がくっつきやすく、強火の炒め物では油の量と予熱にコツがいる。
- フッ素樹脂加工:くっつかず、少ない油で炒められる。ただし加工は高温に弱く、空焼きや強火の炒め物には向かない。卵料理や、弱めの火で作る料理用と割り切るのがよい。
鉄の鍋には、表面に黒っぽい酸化皮膜をつける「烤藍(カオラン)」という処理をしたものもある。この皮膜の上に、使いながら油の膜を重ねていくことで、くっつきにくい鍋に育っていく。
中国の名産「章丘鉄鍋」
中国の鉄鍋の名産として知られるのが、山東省済南市章丘の「章丘鉄鍋」だ。熟鉄の板を職人が何度も熱し、たたいて形を作る手打ちの鍋で、中国の解説でも熟鉄鍋の代表として名前が挙がる。2018年に放送されたドキュメンタリー「舌尖上的中国(舌の上の中国)」の第3シーズンで取り上げられて、一気に全国的な人気になったと伝えられている。
手打ちの鍋は表面に細かいハンマーの跡が残り、そこに油がなじみやすいとされる。ただし人気のぶん、機械で作った鍋に手打ちをうたうものも出回っているので、中国でも買う際の見分け方がたびたび記事になっている。
サイズと形の選び方
- 直径:家庭のコンロなら30〜33cmが扱いやすい。27cm以下だと、炒めた材料が鍋の外に飛び出しやすく、36cm以上はコンロの五徳からはみ出しやすい。
- 重さ:片手で振るなら、1.2kg前後までが目安。鋳鉄の鍋は同じ直径でもかなり重くなるので、実物を持って確かめたい。
- 厚さ:薄い鍋は熱が速く伝わり、厚い鍋は温度が安定する。家庭のコンロは火力が弱いので、1.2〜1.6mm程度の鉄板の鍋がバランスがよい。
- 底の形:丸底は鍋全体に材料を回しやすいが、IHでは使えない。IHなら、底の平らなIH対応の鍋を選ぶ。ガスコンロで丸底を使う場合は、五徳に鍋がしっかり座るかを確認する。
開鍋(カイグオ):新しい鉄鍋の油ならし
新しい鉄の鍋は、そのまま使わずに「開鍋」(油ならし)をする。開鍋は、鉄の表面の細かいすき間に油をしみ込ませて膜を作り、さびとこびりつきを防ぐための作業だ。中国の解説で紹介されている手順は、おおむね次のとおりだ。
- 洗う:製造時に残った油や汚れを、洗剤とぬるま湯で洗い落とす。鍋に半分ほど水を入れて5分ほど煮立て、湯を捨ててもう一度洗剤で洗い、水が黒く濁らなくなるまで繰り返す。最初はスチールたわしでこすらない。
- 乾かす:中火〜弱火で鍋を熱し、水気を完全に飛ばす。大火で一気に熱しない。
- 油をなじませる:油を多めに入れ、弱火で鍋を傾けながら、鍋肌全体に熱い油を回す。
- 脂でこする:油を捨て、豚の背脂や皮付きの脂身を菜箸ではさみ、皮の面を下にして鍋肌のすみずみまでこする。脂が溶け出したら取り出し、火を止めて冷ます。
- 繰り返す:「洗う(湯で流す)→乾かす→脂でこする」を3〜5回繰り返し、鍋肌がなめらかに光るようになったら完了。
- 仕上げ:ぬるま湯で軽く洗って乾かし、薄く油を塗って一晩置く。
脂身が手に入らなければ、ラードか菜種油をキッチンペーパーにしみ込ませて塗り広げてもよい。仕上げに青菜の切れ端やねぎを炒めてから捨て、鉄のにおいを抜くやり方もある。
なお、日本で売られている鉄の中華鍋には、さび止めの塗装がしてあり、最初に強火で空焼きして塗装を焼き切るよう指示しているものがある。その場合は、まず説明書どおりに空焼きをしてから、上の油ならしに進む。
日々の手入れ
- 洗う:使い終わったら、鍋が温かいうちに湯を張り、ささら(竹のたわし)でこすって汚れを落とす。洗剤は基本的に使わないか、使っても少量にする。中国の店でも、熱いうちに湯で汚れを流すだけで、鍋を冷まさずに次の料理へ移ることが多い。
- 乾かす:洗ったら火にかけて水気を完全に飛ばす。自然乾燥はさびのもとになる。
- 油を塗る:しばらく使わないときは、乾かした後に薄く油を塗っておく。
- さびたら:さびた部分をスチールたわしでこすり落とし、開鍋の「乾かす→油をなじませる」をもう一度やり直せば元に戻る。
- 長く入れっぱなしにしない:トマトや酢を使った料理、塩分の強い汁を鍋に入れたまま置いておくと、油の膜が傷み、鉄の味が料理に移る。作り終えたらすぐ器に移す。
家庭で使いこなすコツ
- 炒め物は「鍋を熱してから油」。鍋を煙がうっすら上がるまで熱し、油を入れて鍋全体に回し、いったん油を捨ててから新しい油を入れる「熱鍋冷油」にすると、肉も卵もくっつきにくい。
- 材料は一度に入れすぎない。直径30cmの鍋で、肉なら200g前後が一度に強火で炒められる上限の目安だ。
- 炒めるときは、鍋べらで鍋底から材料をすくい上げて返す。調味料を入れたり、合わせ調味料を回し入れたりするのは中華お玉が便利だ。
- 揚げ物は、丸底の中華鍋なら少ない油で深さが取れる。直径30cmの鍋に油を600〜800ml入れれば、から揚げ程度は十分揚げられる。網じゃくしと油温度計があると、揚げ物も鍋一つで完結する。
- 鍋気(鑊気)を出したいなら、鉄の鍋を十分に熱し、材料を素早く動かすこと。家庭のコンロでの工夫は、教科書06「火候」で解説した。
この記事で紹介した道具を使うレシピ
- 回鍋肉:ゆでた豚バラの薄切りを鍋でじっくり炒め、脂が透き通って軽く丸まるまで火を入れる。
- 青椒肉絲:下味をつけた肉絲を先に炒めて取り出し、ピーマンを炒めた鍋に戻して手早く合わせる。
- 揚州炒飯:強火で熱した中華鍋で、ご飯を鍋肌に押しつけるように炒めてぱらりと仕上げる。
- 干炒牛河(牛肉入り焼きビーフン):強火で十分に熱した鍋で河粉を焼き付けるように炒め、鑊気を出す広東の炒め麺。
- 西紅柿炒蛋(西红柿炒蛋、トマトと卵の炒め物):卵を半熟で取り出し、トマトを煮詰めてから戻して強火で10〜15秒だけ絡めて火を止める。
- 鍋包肉(锅包肉、グオバオロウ):衣をつけた豚肉を二度揚げし、煮立てた甜酸だれに入れて鍋をあおりながら手早く絡める。
- 麻辣香鍋:中華鍋に多めの油を熱して香辛料を炒め、下準備した具材を強火で一気に炒め合わせる。
出典
- 澎湃新闻「几十元和几百元的铁锅,到底啥区别?千万别乱买!」
- 网易「铁锅分“生铁”和“熟铁”,区别挺大,弄懂再买,学会开锅更好用」
- 新浪「新买的铁锅如何开锅?老厨师教你正确的开锅方式,不生锈更好用」
- 搜狐「为什么许多饭店大厨都用双耳铁锅炒菜,而不用单把马勺呢?」
- 网易「一些南方厨师用的锅没手柄,炒菜还拿个毛巾,为何和北方不一样?」
- 新浪「曾因「舌尖」爆火!正宗36000锤手工锻造的章丘铁锅,越用越好用」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。