中華料理の教科書

中華包丁・まな板・お玉と鍋べら中華の基本道具を徹底解説

丸い木のまな板に置いた中華包丁と刻んだ青ねぎ、お玉と鍋べらの写真風の画像
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中国の家庭の台所をのぞくと、四角い大きな包丁が一本、丸太を輪切りにしたような分厚いまな板が一枚、そして鍋のそばにお玉か鍋べらが置いてある。中華料理の道具は、驚くほど少ない。そのかわり、一つの道具でいくつもの仕事をこなす。

たとえば中華包丁(菜刀、ツァイダオ)は、切るだけでなく、刃の腹でにんにくをつぶし、背で肉をたたき、広い面で切った材料をすくって鍋まで運ぶ。日本の包丁のように用途ごとに何本も持つのではなく、一本をいろいろな角度で使い分けるのが中華の流儀だ。

ただし、ひと口に「中華包丁」といっても、中国には薄くて骨を切れない刀、厚くて骨を断つ刀、その両方を兼ねる刀などいくつもの種類がある。骨付き肉をたたくつもりで薄い刀を使えば、刃はすぐに欠けてしまう。まな板も、木の目の向きで包丁への当たりが大きく変わる。お玉と鍋べらにも、それぞれ得意な場面がある。

ここから先では、中華包丁の種類と選び方、基本の使い方、杭州の老舗・張小泉のこと、中華まな板(砧板)の木の選び方、お玉(炒勺)と鍋べら(鍋鏟)の使い分けを解説する。

中華包丁(菜刀)の種類

中国の厨房で使われる包丁は、刃の厚みと重さで大きく分けられる。

  • 片刀(ピエンダオ)・切片刀:刃の面が広く、重さは中くらい。野菜・果物・骨のない肉を、薄い片や細い絲に切るための刀で、「文刀(ウェンダオ)」とも呼ばれる。骨は切れない。
  • 斬骨刀(ジャングーダオ)・砍骨刀:片刀より大きく、厚く、重い。刃の角度は25度前後と鈍角につけてあり、骨やかたいものを断ち切るための刀。「武刀(ウーダオ)」とも呼ばれる。
  • 文武刀(ウェンウーダオ):刃の前半は薄く鋭く、後半(手元側)は厚い。前で野菜や肉を切り、後ろで骨をたたく、一本で両方をこなす家庭向けの刀だ。中国の解説でも、一本だけ買うならこの「前が薄く後ろが厚い」タイプを勧めている。
  • 桑刀(サンダオ):浙江省海寧で、地元で葉を刻むのに使われていた「葉刀」から発展したとされる薄刃の刀。片刀よりさらに薄く軽く、刃は平らで長い。刀身の上半分が黒、刃側が白く光る外見が特徴で、鋭い切れ味で薄切りや細切りに向く。たたき切りには使わない。

専門の刀もある。広東・香港の焼き物店では、叉焼やローストした肉を切り分ける烧臘刀(シウラップ刀)を使い、北京の烤鴨店では、刃が細長い片皮刀で皮と身を薄く削ぐ。ほかにも、骨から肉を外す剔骨刀などがある。

材質の選び方

  • 炭素鋼:炭素を0.6%以上含む鋼。よく切れ、研ぎやすく、骨にも強い。ただし湿気でさびやすいので、使った後はすぐに洗って水気を拭き取る必要がある。
  • ステンレス:さびにくく、手入れが楽。家庭で一本目として扱いやすい。
  • セラミック:さびず、切れ味が長持ちするが、粘りがなく、落としたりたたいたりすると割れる。中華包丁のように「たたく」使い方には向かない。

家庭の中華包丁の選び方としては、次の点を見るとよい。

  • 重さ:片刀・文武刀なら250〜400g前後が扱いやすい。重い刀ほど刃の重みで切れるが、長く使うと手首が疲れる。中国の解説も、買う前に実際に手に持って重さを確かめるよう勧めている。
  • 柄:しっかり固定されていて、手が濡れても滑らないもの。
  • 用途:骨付き肉をよくたたくなら文武刀か斬骨刀、野菜と肉の薄切りが中心なら片刀か桑刀。

中華包丁の基本の使い方

  • 切る:材料を押さえる左手は指先を丸め、中指の第一関節を刀身の腹に当てる。刃の幅が広いので関節を当てやすく、厚みを一定に保ちやすい。
  • すくう:切った材料は、刃の腹を寝かせてまな板の上を滑らせるようにすくい、そのまま鍋や器へ運ぶ。中華包丁の幅の広さがいちばん生きる使い方だ。
  • 拍(パイ):刃の腹を材料の上に寝かせ、手のひらで押しつぶす。にんにくや生姜、拍黄瓜のきゅうりはこの方法で割る。刃を手前に向けず、刃の背側をまな板の外へ出さないように置く。勢いよくたたきつけると、手を傷つけるうえ、薄い刀は曲がることがある。
  • たたく(剁):肉を細かくするときは、刃をまな板に垂直に、手首のスナップで細かくたたく。2本の包丁を交互に動かす「双刀剁」は、中国の料理人の肉だね作りの定番だ。
  • 背でたたく:鶏むね肉やえびのすり身(茸)を作るときは、刃の背でたたいて繊維をほぐす。刃でたたくより、なめらかに仕上がる。
  • 断つ(劈):骨付き肉は、刃を骨に当ててから上から押し、必要なら刀の背を手のひらで押して断つ。骨に刃を斜めに当てると欠けやすい。薄い片刀や桑刀では絶対にしない。

杭州の老舗「張小泉」

中国の刃物の老舗として最もよく知られるのが、浙江省杭州の「張小泉」だ。清の康熙2年(1663年)に創業したとされ、もともとははさみで名を上げた。創業者の張小泉は、父の店の看板を他の店に勝手に使われるのを防ぐため、自分の名前を屋号にしたと伝えられている。

張小泉のはさみの鍛造技術は、2006年に第一批の国家級非物質文化遺産(日本の無形文化財に近い制度)に登録された。現在は、はさみのほかに包丁など刃物全般を手がけており、中華包丁を買うときにまず名前が挙がるブランドの一つになっている。

中華まな板(砧板・菜墩)

中国の伝統的なまな板は、丸太を輪切りにした分厚い円盤だ。「菜墩(ツァイドゥン)」とも呼ばれる。中華まな板の特徴は、木の目の向きにある。

  • 輪切りの丸いまな板(木口面):木の繊維の断面が上を向いているので、包丁の刃が繊維のすき間に入り、刃当たりがやわらかい。刃が傷みにくく、たたく作業にも耐え、長持ちする。一方で、厚く重く、かびやすく、木の質がそろっていないと割れやすい。割れ止めに、周囲を鉄の帯で締めたものもある。
  • 板目の四角いまな板(平らに挽いた板):軽くて扱いやすいが、刃当たりがかたく、包丁が傷みやすい。骨付き肉をたたくと、表面がすぐに削れる。
  • 木口を碁盤目状に貼り合わせたまな板:輪切りの刃当たりのよさを保ちながら、割れにくさを改善したもの。ただし接着剤の質で品質に差がある。

木の種類について、中国の調理工芸の教科書は、まな板には銀杏・柳・楡(にれ)・欅(けやき)などのやわらかめの木が向くとしている。なかでも銀杏は、かびにくく、においを吸いにくく、刃を傷めず、反りや割れも起きにくいとして評価が高い。かたすぎる木は包丁を傷め、やわらかすぎる木は木くずが出やすい。

使い方の注意としては、生の肉・魚用と、加熱済みのもの・そのまま食べるもの用で、まな板を分けること。滑り止めのため、ある程度の重さがあるものを選ぶこと。使った後は湯で洗ってしっかり乾かし、立てかけて風を通すことだ。

お玉(炒勺)と鍋べら(鍋鏟)の使い分け

中国の店の料理人は、炒め物でもほとんどお玉(手勺・炒勺)を使う。家庭では鍋べら(鍋鏟)を使う人が多い。中国の料理人の解説では、その理由を次のように説明している。

  • 店でお玉を使う理由:油・スープ・調味料・合わせ調味料がすべて手の届く範囲に用意されていて、お玉で量りながらすくって、すぐ鍋に入れられる。お玉は炒め物の返しはへらほど得意ではないが、鍋をあおる(顛鍋)ことでそれを補える。
  • 家庭で鍋べらを使う理由:家庭では調味料を取りに行く手間があるので、お玉ですくう利点が小さい。一方、へらは鍋底から材料を返すのが得意で、鍋をあおらなくても全体に火が通る。さらに、家庭のレンジフードは鍋から20cmほどしか離れていないことも多く、大きく鍋をあおるのは難しい。

実際には、両方を持って使い分けるのがいちばんだ。

  • 中華お玉が得意なこと:合わせ調味料を回し入れる、スープや油をすくって量る、とろみをつけるときに鍋底をやさしく押してなじませる、炒飯のご飯をお玉の背でほぐす、盛り付けで料理を丸く整える。
  • 鍋べらが得意なこと:鍋底にはりついた材料をこそげて返す、焼き餃子や魚を焼くときに底からはがす、大きな材料を裏返す。

中華鍋の丸い鍋肌に沿う、先が丸くカーブした鉄やステンレスのものを選ぶと、鍋の底までしっかり届く。

家庭で再現するコツ

  • 包丁は一本目なら文武刀タイプ。骨付き肉をよく扱うなら、二本目に斬骨刀を足す。
  • 薄刃の片刀や桑刀で、冷凍の肉や骨、かぼちゃなどかたいものを切らない。刃こぼれの原因になる。
  • 炭素鋼の刀は、使ったらすぐに洗って水気を拭き、しばらく使わないときは薄く油を塗っておく。
  • 輪切りのまな板は、包丁を使う中心がへこみやすいので、ときどき向きを変えて使い、全体を均等に減らす。
  • 炒め物でお玉を使うなら、調味料を小皿に分けて鍋の近くに並べ、店の厨房の配置をまねると、お玉の便利さがよくわかる。

この記事で紹介した道具を使うレシピ

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。