山西料理・晋菜莜面栲栳栳
莜麺栲栳栳(莜面栲栳栳)レシピ本場山西の配合を徹底解説

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蒸籠のふたを開けると、指ほどの太さの筒がびっしりと立ち並んでいる。まるで蜂の巣だ。これが山西省を代表する麺料理・莜麺栲栳栳である。原料は小麦ではなく、裸燕麦(はだかえんばく/学名 Avena nuda)を挽いた「莜麺」。つまりオート麦の粉だけで作る麺料理で、グルテンをまったく含まない生地を、湯気の立つ熱湯だけで一つにまとめてしまう。
名前の由来には二つの説が伝わる。ひとつは、柳や竹で編んだ「栲栳(カオラオ)」=穀物を入れる笊の形に、巻いて立てた麺が似ているからという説。もうひとつは唐王朝にまつわる伝承で、唐の高祖・李淵が太原に赴任していたころ、霊空山の盤谷寺に立ち寄った際、住職がこの麺でもてなし「栲栳栳」と名づけたという。さらに、李淵父子が挙兵の際にこの麺で三軍を「犒労(カオラオ/ねぎらう)」したことから、音の似た「栲栳」に転じたという民間説も語られている。いずれの説でも1400年前の唐代に遡る料理として語り継がれてきた。
莜麦は山西省北部の高寒地帯、とりわけ忻州一帯の特産で、「雁北三件宝、莜麦、山薬、大皮袄(雁北の三つの宝は、莜麦・じゃがいも・毛皮の外套)」と歌われるほど土地に根づいた穀物だ。作り方の要は「開水和面(熱湯でこねる)」「快速搭巻(手早く薄く延ばして巻く)」「掌握火候(蒸し時間を見きわめる)」の三つ。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。
本場式の配合
材料(2人分)
生地(栲栳栳)
- 莜麺粉裸燕麦粉。日本ではオーツ粉で代用可200g
- 熱湯(沸かしたての95℃以上)200ml
- 打ち粉・手粉用のオーツ粉10g
- 台に塗る植物油3ml(小さじ2/3)
たれ① 羊肉臊子(ヤンロウサオズ/温かい羊肉のたれ)
たれ② 涼拌汁(リャンバンジー/冷たい酢にんにくだれ)
作り方
生地を作って蒸す
莜麺粉200gをボウルに入れる。湯を沸かし、沸騰したての熱湯200mlを一気に回し入れながら、菜箸で手早くかき混ぜる。全体がそぼろ状になり、乾いた粉がわずかに残る程度でよい。
手で触れる温度まで粗熱をとってから、押しつけるようにこねて一つにまとめる。表面がなめらかになったら濡れ布巾をかけ、15分休ませる。
生地を直径2cmの棒状に転がし、10gずつ(親指の太さくらい)をちぎり分ける。乾かないよう、使わない分は濡れ布巾をかけておく。
台に植物油3mlを薄く塗る。ちぎった生地を台に置き、手のひらの付け根(大魚際)で前方へ一気に押し出し、幅5cm×長さ8cm×厚さ1mm程度の薄片に延ばす。押す力が弱いと厚くなり、強すぎると破れる。
薄片を人差し指に巻きつけ、直径2cmほどの筒にする。継ぎ目を軽く押さえて留める。
蒸籠にクッキングシートを敷き、筒を立てた状態で隙間なく並べる。互いに支え合って倒れなくなる。
蒸し器の湯を沸かし、蒸気がしっかり上がってから蒸籠をのせ、強火で8分蒸す。蒸し足りないとザラつきが残り、蒸しすぎると自立せずにへたるので、8分を目安に一度取り出して1本割ってみるとよい。
たれ① 羊肉臊子
干し椎茸8gは水150mlで30分戻し、5mm角に刻む。戻し汁は捨てずにとっておく。
鍋に植物油15mlを入れて中火にかけ、花椒1gと桂皮1g、乾燥唐辛子2本を入れて弱火で1分、香りが立つまで炒める。
長ねぎ30gと生姜8gを加えて30秒炒め、ラム肉150gを入れて中火で3分、色が変わるまで炒める。
じゃがいも100gと刻んだ椎茸を加えて1分炒め、生抽20mlを鍋肌から回し入れて全体に絡める。
椎茸の戻し汁を含む水300mlを注ぎ、沸騰したらふたをして弱火で15分煮る。じゃがいもが崩れる手前でやわらかくなったら、塩5.5gと白胡椒0.3gで味を決める。
火を止めてパクチー5gを散らす。蒸したての栲栳栳を器に盛り、熱いままかけて食べる。
たれ② 涼拌汁
器に陳醋30ml、生抽15ml、すりおろしにんにく10g、塩2.7gを入れてよく混ぜ、塩が溶けたら涼白開60mlで割る。
辣椒油10mlとごま油5mlを加えて軽く混ぜ、きゅうりの千切り60gを浸す。蒸した栲栳栳をこのたれにくぐらせて食べる。
本場と日本の違い
- 熱湯でこねるのは「好み」ではなく必須条件。 莜麺は小麦粉と違ってグルテンをまったく作らない。生地をつなぎ止めているのは、熱湯によって糊化したでんぷんと、オート麦特有の粘性成分だけである。中国語のレシピはそろって「莜面一定要开水和面(莜麺は必ず熱湯でこねる)」と念を押しており、水温が低いと生地はぼろぼろに崩れて薄く延ばすことすらできない。日本の麺料理の感覚で水やぬるま湯を使うと、この一点で確実に失敗する。
- 粉と湯はほぼ同重量。 参照した中国語レシピは200g対210ml、250g対250ml、300g対300mlと、いずれも粉に対して同量前後の熱湯を使っている。小麦粉の麺(加水率40〜50%)と比べると倍近い水分で、これも粉の吸水性がまったく違うためである。
- 本場の食べ方は「たれで完結する」。 栲栳栳そのものには塩も味付けも入らない。山西では羊肉と台蘑(五台山産のきのこ)で取った「羊肉臊子台蘑湯」をかけて食べるのが最も伝統的とされ、家庭では羊肉とじゃがいものたれ、トマトと野菜を煮込んだ菜卤、酢とにんにくの冷たいたれなど、季節と好みで使い分けられている。日本の中華料理店ではまず出会えない麺で、「山西刀削麺」の陰に隠れているが、山西の麺食文化の奥行きを象徴する一品である。
- 形は「蜂の巣」であることに意味がある。 立てて並べることで蒸気が筒の内側まで回り、薄い生地が短時間で均一に火が通る。寝かせて並べると下面が潰れて食感が変わってしまう。
参考ページ(写真)
下厨房の「第一次做莜面栲栳老,老公居然说比西贝的还好吃!」レシピページに、生地を押し延ばして指に巻く工程の写真が多数掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/104198893/
代用可能な食材
- 莜麺粉→オーツ粉(オートフラワー)200g。 莜麦(裸燕麦/Avena nuda)は、日本で流通する一般的なオート麦(Avena sativa)ときわめて近縁で、でんぷんとβ-グルカンの性質もほぼ同じ。したがってオーツ粉は「代用品」というより実質的にほぼ同じ素材として使える。市販のオーツ粉が手に入らない場合は、ロールドオーツ(オートミール)200gをミルサーやフードプロセッサーで1〜2分挽き、目の細かいふるいでふるって粉にする。
- 香りを本場に近づける下処理。 本場の莜麺粉は、製粉前に燕麦を炒って香ばしさを出している。市販のオーツ粉は加熱処理はされていても炒られてはいないため、フライパンに広げて弱火で3〜4分、色づく手前まで乾煎りしてから完全に冷まして使うと、香りが本場のものにぐっと近づく。乾煎り後は必ず冷ましてから熱湯を加える。
- どうしても巻けないとき→強力粉を混ぜる。 オーツ粉170g+強力粉30g(全体の15%)にすると、少量のグルテンが入って薄く延ばしやすくなり、破れにくくなる。参照した山西の家庭向けレシピにも「莜面に白面(小麦粉)を少量混ぜる」配合が見られる。ただし食感はやや軽くなり、グルテンフリーではなくなる。
- ラム肉→マトン、または豚こま切れ肉150g。 豚肉にする場合は花椒と桂皮の量は変えず、白胡椒を0.5gに増やすと香りのバランスが取れる。
- 干し椎茸(台蘑の代用)→乾燥まいたけ8g、または生のしいたけ40g。 生を使う場合は戻し汁がないので、水300mlをそのまま加える。
- 陳醋→黒酢30ml。 山西老陳醋は熟成による香ばしさが強いので、黒酢を使う場合はごま油を7mlに増やすと香りの厚みを補える。
- 蒸籠がない場合→金属の蒸し器にクッキングシートを敷けば同じように蒸せる。ふたに布巾を巻き、落ちてきた水滴で生地が溶けるのを防ぐ。
保存・アレンジのコツ
- 蒸した栲栳栳は、粗熱をとってから密閉容器に入れて冷蔵で2日、冷凍で3週間保存できる。食べるときは蒸気の上がった蒸し器で3分(冷凍なら6分)蒸し直すと、蒸したての弾力が戻る。電子レンジだと乾いて硬くなりやすい。
- 羊肉臊子は多めに作って冷蔵で3日保存できる。じゃがいもが煮汁を吸って翌日は濃くなるので、温め直すときに水を50ml足すとちょうどよい濃度になる。
- 山西の家庭では、余った栲栳栳を翌日フライパンで両面を焼き、焼き目をつけて食べる「煎栲栳栳」も定番。植物油10mlで中火3分ずつ焼くと、外は香ばしく中はもちっとした別料理になる。
- トマト2個(約300g)・玉ねぎ60g・にんにく10gを植物油15mlで炒め、水100mlと生抽10ml、塩3gで10分煮込んだ「菜卤(ツァイルー)」も、山西の家庭で広く使われるたれ。羊肉が手に入らない季節はこちらが定番になる。
出典
- 中文維基百科「莜面栲栳栳」
- 中文維基百科「莜麦」
- 国際在線「莜面栲栳栳:来自1400多年前唐朝的味道」
- 新浪新聞「山西美食介绍之莜面栲栳栳」
- 美食天下「莜面栲栳栳」レシピ
- 下厨房「莜面栲栳栳」レシピ
- 下厨房「第一次做莜面栲栳老,老公居然说比西贝的还好吃!」レシピ
- 新浪博客「山西美食小吃:莜面栲栳栳简单介绍」
- 新浪博客「山西面食---莜面栲栳栳」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。