山西料理・晋菜刀削面

刀削麺(刀削面)レシピ本場山西大同の配合を徹底解説

赤い丼に盛った幅広の白い麺に、角切り肉の赤茶色の具と青ねぎをのせた刀削麺のイラスト
地域
晋菜(山西・大同)
分量
2人分
公開

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包丁で切るのではなく、生地の塊を刃で「削ぎ落とす」。刀削麺が世界でも珍しい製麺法を持つに至った理由は、料理の工夫ではなく、包丁が取り上げられた時代にあったと伝えられている。

大同市云州区人民政府の解説によれば、舞台は元代の山西。モンゴル支配下では漢人の蜂起を防ぐため各家庭の金属製品が没収され、包丁は十戸で一本を共用していたという。ある日、老夫婦が麺を打とうとしたが、共用の包丁は他家が使っていて戻ってこない。困り果てた老人が門前で拾ってきた薄い鉄片を差し出し、「これで麺を砍(たた)き切ってみろ」と言った。老婆が生地の塊を手に載せ、煮え立つ鍋の上でその鉄片を滑らせると、麺は次々と湯の中へ落ちていった。この「砍麺」が屋台を通じて広まり、改良を重ねて今日の刀削麺になった——というのが最も広く語られる由来である。

技の要諦は「刀不離面、面不離刀、胳膊直硬手平(刃は生地を離れず、生地は刃を離れず、腕はまっすぐ手は水平に)」という口訣に凝縮されている。熟練の職人は1分間に100回以上削り、削られた麺は両端が尖って中央が広い柳の葉の形になり、断面は三角形を描く。この稜のある断面が、たれの絡みとコシの強さを同時に生む。

刀削麺は山西料理(晋菜)の代表格で、なかでも大同のものが最も名高い。そして山西中部・北部の家庭では、日本の店で見かけるスープ麺ではなく、清水で茹でた麺に炒めた具や卤(かけ汁)をかける「打卤麺」として食べるのが本来の姿だ。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分)

麺(刀削麺の生地)

  • 中力粉300g
  • 水130ml
  • 塩3g(小さじ1/2)
  • 打ち粉用の小麦粉10g
  • 茹でる湯2000ml

打卤(肉臊子)

  • 豚バラ肉(かたまり)1cm角に切る200g
  • 血抜き用の水500ml
  • 豆腐干(押し豆腐)1cm角に切る60g
  • 玉ねぎ1cm角に切る60g
  • 長ねぎ小口切り20g
  • 生姜みじん切り8g
  • にんにく2片・みじん切り10g
  • 郫県豆瓣醤20g
  • 黄醤(黄豆醤)15g
  • 生抽15ml(大さじ1)
  • 老抽5ml(小さじ1)
  • 黄酒または日本酒15ml(大さじ1)
  • 氷砂糖または上白糖4g
  • 白胡椒(粉)0.3g(小さじ1/8)
  • 八角1個
  • 桂皮3cm角1片2g
  • 草果包丁の腹で軽く割る1個
  • 小茴香(フェンネルシード)1g(小さじ1/2)
  • 花椒2g(小さじ1)
  • 香葉(ローリエ)1枚
  • 熱湯300ml
  • 食用油20ml(大さじ1と1/3)

仕上げ

  • 陳醋(山西老陳醋)10ml(小さじ2)
  • 辣椒油10ml(小さじ2)
  • 万能ねぎ小口切り10g
  • パクチー(香菜)ざく切り5g

作り方

生地を作る(合計1時間10分/うち待ち時間1時間)

  1. ボウルに中力粉300gと塩3gを入れて混ぜ、水130mlを4〜5回に分けて加える。そのつど箸でかき混ぜ、粉が雪片状のそぼろになるまで進める。水は一気に入れない。

  2. 手のひらの付け根で押し固めてひとまとまりにする。この時点では表面がボロボロで硬く、なめらかにならなくてよい。ラップで包み、常温で30分休ませる。

  3. 30分後、体重をかけて5分こね直す。表面がなめらかになったら再びラップで包み、さらに30分休ませる。指で強く押しても跡がほとんど残らない硬さが目標。

  4. 休ませた生地を、長さ15cm・幅8cm・厚さ5cmほどのかまぼこ形(枕形)に整え、上面をなだらかな山なりにしておく。この形が削りやすさを決める。

打卤(肉臊子)を作る(約50分)

  1. 豚バラ肉200gを1cm角に切り、水500mlに10分さらして血水を抜く。ざるに上げ、ペーパータオルで水気をしっかり拭き取る。豆腐干60gと玉ねぎ60gも1cm角に切る。

  2. 鍋に食用油20mlを入れて中火で熱し、いったん弱火にして花椒2g・八角1個・桂皮2g・草果1個・小茴香1g・香葉1枚を入れ、30秒〜1分、香りが立つまで炒める。焦がすと苦味が出るので色づく前に次へ進む。

  3. 生姜8g・にんにく10g・長ねぎ20gを加えて20秒炒め、豚バラ肉を加えて中火で3〜4分。脂が透明に溶け出し、肉の表面が色づくまで炒める。

  4. 黄酒15mlを鍋肌から回し入れてアルコールを飛ばす。弱火にして郫県豆瓣醤20gと黄醤15gを加え、1分30秒ほど、赤い油が縁ににじみ出るまでじっくり炒める。

  5. 玉ねぎ60gと豆腐干60gを加えて1分炒め合わせ、生抽15ml・老抽5ml・氷砂糖4g・白胡椒0.3gを加えて全体になじませる。

  6. 熱湯300mlを注ぐ。沸いたら弱火に落とし、ふたを少しずらして30〜40分煮る。煮汁が約200mlまで煮詰まり、とろみが出たら火を止める。八角・桂皮・草果・香葉を取り除く。

麺を削って茹でる(約10分)

  1. 大きめの鍋に湯2000mlを沸かし、沸騰を保つ。まな板と手に打ち粉10gを軽く振る。

  2. 利き手でない手のひらに、たたんだ布巾を敷いて生地を載せる(熱と重さから手を守るため)。鍋の真上、湯面から20〜25cmの高さに構える。

  3. 利き手にピーラー(皮むき器)を持ち、生地の手前上端に当てて向こう側へ一気に滑らせ、削いだ麺を直接鍋へ落とす。幅2cm・長さ12〜15cm、両端が尖った柳の葉形になれば正解。同じ稜(削り跡の山)を追いかけるように、隣へ少しずつずらしながら削り続ける。

  4. 全量削り終えたら中火にし、麺が浮いてきてからさらに1分茹でる(合計1分30秒〜2分)。太さにばらつきが出るので、太いものを1本すくって芯が残っていないか確かめる。

  5. ざるに上げて湯をよく切る。

盛り付け

  1. 器に麺を半量ずつ盛り、打卤を具と煮汁ごと半量ずつ(1人あたり約150g)かける。

  2. 陳醋10mlと辣椒油10mlを回しかけ、万能ねぎ10gとパクチー5gを散らす。食べる直前に箸で下から返すように混ぜ、麺の一本一本にたれを絡めて完成。

本場と日本の違い

  • 日本の刀削麺の店では、たっぷりのスープに麺が泳ぐ「湯麺」で出てくることが多い。だが中文維基百科が記すとおり、山西中部の食べ方は「清水煮麺、掬い上げてから炒めた具・肉・卤をかける」もの。スープに浸すのではなく、濃いたれを絡めて食べる打卤麺こそが本来の姿で、省外に広まる過程で汁麺が主流になったとされる。
  • 生地の硬さが決定的に違う。職人の基準は「1斤の粉に3両の水」=加水率およそ30%で、これは家庭の道具ではまず削れない。本レシピは複数の家庭向けレシピが採る加水率40〜45%の範囲から43%(粉300gに水130ml)を採り、ピーラーで削れる硬さに寄せている。専用の削面刀を持っているなら、水を115mlまで減らすと本場のコシに近づく。
  • 断面の形がすべてを決める。機械で押し出した「刀削麺風」の麺は断面が均一だが、手で削いだ麺は三角形の稜を持ち、厚い中央はもちっと、薄い両端はつるりと、一本の中で食感が二層になる。この差は生地を薄く伸ばして切る方法では再現できない。
  • 山西では酢が調味料ではなく「主役の一つ」。老陳醋を卓上で各自たっぷり回しかけるのが当たり前で、たれの濃さと脂を酸味で断ち切る構成になっている。日本の店では酢が控えめなことが多いので、本場の味を狙うなら思い切って効かせるとよい。
  • 頭に生地を載せて削るパフォーマンスは、中文維基百科によれば近年、視覚的効果を高めるために生まれた新しい見せ方で、伝統的な姿勢は「片手で生地を持ち、もう片方の手で削面刀を使う」ものとされている。

参考ページ(写真)

下厨房の「刀削面的比例建议」レシピページに、生地の硬さと削り方の手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/104192038/

代用可能な食材

  • 中力粉→強力粉150g+薄力粉150gを混ぜて代用可
  • 豆腐干→厚揚げ60g、または木綿豆腐を重しをして30分水切りしたもの60g
  • 黄醤→八丁味噌15g(塩分濃度が近く、コクの方向性も似ている)
  • 郫県豆瓣醤→一般的な豆板醤20g(塩気が強い銘柄が多いので生抽を12mlに減らす)
  • 草果・香葉→入手できなければ省いてよい。八角・桂皮・小茴香の3つが残っていれば香りの骨格は保てる
  • 陳醋→黒酢10ml(山西の老陳醋より酸味が立つので、まず5mlから試す)
  • 削る道具→ピーラーが最も再現性が高い。刃のある果物ナイフを寝かせて削ぐ方法、薄い金属製のスケッパーを使う方法も可(伝説の「鉄片」に一番近いのはこれ)。包丁の背(峰)で削ぐやり方が紹介されることもあるが、刃がないぶん生地が潰れて麺が短くちぎれやすい
  • どうしても削れない場合→生地を厚さ7mmに伸ばし、包丁で幅2cmの短冊に切る「刀切麺」にする。断面の稜は出ないが、打卤との相性は十分によい

保存・アレンジのコツ

  • 打卤は多めに作って冷蔵で4日、冷凍で1か月保存できる。冷めると脂が固まって表面に蓋ができるので、そのまま保存し、使うときは脂ごと温め直す。
  • 生地はラップで包んで冷蔵庫に一晩置くと、グルテンが緩んで格段に削りやすくなる。使う30分前に室温に戻してから削る。
  • 茹でた麺を冷水にさっとさらしてから水気を切ると、麺が締まってコシが強くなる。中文維基百科も「冷水に浸すと麺がより筋道(コシのある状態)になる」と記している。冷たいたれで和える食べ方にする場合はこの工程を入れる。
  • 茹でた麺を打卤と一緒にフライパンで炒めれば「炒刀削(炒め刀削麺)」になる。山西では過油肉(豚肉の下味揚げ炒め)と合わせた炒刀削麺が定番。
  • 麺を削るのは一度に2人分が限界。人数が多いときは、打卤を先に仕上げて保温しておき、麺だけを2人分ずつ削って茹で、その都度出すとよい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。