江西料理・赣菜瓦罐汤

瓦罐湯(瓦罐汤)レシピ本場江西南昌の配合を徹底解説

蓋を開けた素焼きの壺に肉だねとスペアリブ入りのスープが湯気を立て、奥に蓋をした壺が二つ並ぶ瓦罐湯のイラスト
地域
贛菜(江西・南昌)
分量
2人分・各2罐分
公開

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江西省南昌の街角には、直径1メートルほどの巨大な素焼きの甕が据えられている。中をのぞくと、蓋をした小さな瓦罐(素焼きの壺)が何層にも積み上げられ、甕の底で硬質木炭がじりじりと燃えている。この状態で6時間以上。火は一度も壺の底に直接当たらず、甕の内側から六面すべてに均一な熱が回る。南昌の朝食を支える瓦罐湯は、こうして炊かれる。

由来として最もよく語られるのは、北宋・嘉祐年間の逸話だ。洪州(現在の南昌)の才子が友人と郊外に遊びに出た際、供の者が余った鶏・魚・肉を調味料ごと瓦罐に詰め、灰の中に埋めたまま帰ってしまった。翌日掘り出してみると香りが辺りに立ちこめ、味わいは驚くほど深かった——これが瓦罐煨湯の始まりとされる。唐代の『瓦罐煨湯記』にはすでに「瓦罐香沸、四方飄逸、一罐煨湯、天下奇鮮(瓦罐の香りが沸き立ち四方に漂う。一罐の煨湯は天下の奇鮮なり)」と記されている。明末には翰林大学士・湯斌が「瓦缸清湯」で貧しい人々を救ったという別伝もあり、清末民初に土竈から大瓦缸へと設備が改良されて現在の形になった。

技法の核心は「久煨不沸」——長時間煮ながら決して沸騰させないことにある。店では160℃で2〜3時間、次に120℃へ落として約2時間、その後はとろ火で仕上げる三段階の恒温加熱が使われる。この製法は2014年8月に南昌市級、2017年に江西省第五批の無形文化遺産へ登録された。地元では瓦罐湯と南昌拌粉(和え米粉)の組み合わせが「黄金搭档(ゴールデンコンビ)」と呼ばれ、朝から一罐を空けるのが日常の風景だ。

ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭の鍋で再現できる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

南昌の店で最も注文される定番2種を、日本の家庭にある道具で作れる形に落とし込んだ。Aは看板メニューの「肉餅蒸蛋湯」、Bは山の幸を使う「茶樹菇排骨湯」。どちらも同じ蒸し煮の手順で作れる。

材料(2人分・各2罐分)

A:肉餅蒸蛋湯(豚肉だねと卵)

  • 豚ひき肉赤身8:脂2の割合。肩ロースの粗びきが本場に近い200g
  • 干し墨魚(するめ)ぬるま湯300mlで30分戻し、1cm幅に切る10g
  • 生姜うち3gはみじん切り、3gは薄切り2枚6g
  • 卵2個(約100g)
  • 片栗粉6g(小さじ2)
  • 黄酒または日本酒10ml(小さじ2)
  • 白胡椒(粉)0.5g(小さじ1/4)
  • 塩(肉だね用)3g(小さじ1/2)
  • 塩(スープ用)4g(小さじ3/4)
  • 熱湯うち100mlは干し墨魚の戻し汁500ml

B:茶樹菇排骨湯(干し茶樹菇と豚スペアリブ)

  • 豚スペアリブ(3〜4cmのぶつ切り)300g
  • 乾燥茶樹菇ぬるま湯400mlで60分戻す20g
  • 生姜薄切り3枚8g
  • 長ねぎ5cm長さ2本。結んでおく15g
  • 黄酒または日本酒15ml(大さじ1)
  • クコの実3g
  • 白胡椒(粉)0.5g(小さじ1/4)
  • 塩8g(小さじ1と1/2)
  • 熱湯うち200mlは茶樹菇の戻し汁600ml

作り方

共通の準備:瓦罐の代わりになる容器と鍋

  1. 蓋つきの耐熱容器を2つ用意する。Aは400ml前後(スープカップ・ココット・湯呑み)、Bは600ml以上(小さめの土鍋・耐熱ボウル)が目安。蓋がなければアルミホイルで口をぴったり覆う(本場でも瓦罐の口をアルミホイルで封じてから蓋をする)。

  2. 容器が余裕をもって入る大きさの鍋に、高さ3cmまで水を張り、底に蒸し台か平皿を敷く。容器を直接鍋底に置かないことが、熱を穏やかに伝えるコツになる。

A:肉餅蒸蛋湯

  1. 干し墨魚10gはぬるま湯300mlに30分浸けて戻し、1cm幅に切る。戻し汁は茶漉しで漉して100ml取り分けておく。

  2. 豚ひき肉200gに塩3g・片栗粉6g・黄酒10ml・生姜のみじん切り3g・白胡椒0.5gを加え、一方向にぐるぐると3分混ぜて粘りを出す(上劲)。

  3. 耐熱容器2つに肉だねを半量ずつ入れ、スプーンの背で底に平らに押しつけて厚さ1.5cmの「肉餅」にする。その上に戻した墨魚と生姜の薄切りを1枚ずつのせる。

  4. 熱湯500ml(うち100mlは3の戻し汁)に塩4gを溶かし、肉餅を崩さないよう容器の縁からそっと250mlずつ注ぐ。

  5. 2の鍋に容器を並べて蓋をし、強火で沸かす。湯気が上がったら弱火に落とし、鍋の湯がふつふつと静かに揺れる程度を保って90分蒸し煮にする。鍋の湯が減ったら熱湯を足す。

  6. 蒸し始めから75分たったら蓋を開け、容器1つにつき卵1個を静かに割り入れる。かき混ぜず、そのまま蓋を戻して残り15分加熱する。卵は白身が固まり黄身が半熟に留まる状態が本場の姿。

B:茶樹菇排骨湯

  1. 豚スペアリブ300gはたっぷりの水に30分浸けて血抜きし、水から鍋に入れて強火にかける。沸騰後3分ゆでこぼし(焯水)、流水でアクを洗い流す。

  2. 乾燥茶樹菇20gはぬるま湯400mlで60分戻し、石づきを切り落として5cm長さに切る。戻し汁は茶漉しで漉して200ml取り分ける。

  3. 耐熱容器2つに、スペアリブ・茶樹菇・生姜の薄切り3枚・結んだ長ねぎ15g・黄酒15mlを半量ずつ分け入れる。

  4. 熱湯600ml(うち200mlは10の戻し汁)を300mlずつ注ぎ、蓋をして2の鍋に並べる。強火で沸かしてから弱火に落とし、沸騰させない火加減で3時間蒸し煮にする。鍋の湯が減ったら熱湯を足す。

  5. 残り20分になったら蓋を開けて長ねぎを取り出し、塩8g・白胡椒0.5g・クコの実3gを加えて蓋を戻し、最後まで加熱して完成。

炊飯器・電気鍋で作る場合

  1. 内釜に高さ3cmの湯を張って容器を置き、通常の炊飯コースで加熱する。終了後は蓋を開けずに保温のまま、Aは合計90分、Bは合計3時間になるまで置く。スロークッカーや電気圧力鍋の「煮込み・低温」モードがあれば、そちらのほうが本場の恒温加熱に近い。

本場と日本の違い

  • 本場の瓦罐湯は「煮る」料理ではなく「煨(ウェイ)」——沸騰させずに長時間熱を入れる料理である。店では大甕の中で小壺が炭火の輻射熱を六面から受け、160℃で2〜3時間、120℃で約2時間、その後とろ火という三段階で最低6時間、素材によっては8〜12時間かけられる。家庭では蒸し煮に置き換え、鍋の湯を「ぐらぐら」ではなく「ふつふつ」で保つことがそのまま本場の火加減の再現になる。
  • 味付けは塩と白胡椒、そして酒だけ。日本の中華スープでおなじみの醤油・オイスターソース・鶏がらスープの素は使わない。うま味は干し墨魚や干し茶樹菇といった乾物と、長時間の加熱で骨や肉から出る成分だけで組み立てる。スープを濁らせず澄ませることが良し悪しの基準になる。
  • 日本では「スープ=食事に添えるもの」だが、南昌では瓦罐湯こそが主役で、拌粉(和え米粉)と組み合わせた朝食が定番。専門店では壺ごと供され、蓋を開けて直接すするのが正しい食べ方とされる。
  • 肉餅蒸蛋湯の卵は、日本の茶碗蒸しのように溶いて全体に散らさない。加熱の終盤に丸ごと割り落とし、肉餅の上に卵が乗ったまま固まる形が南昌の標準形になっている。

参考ページ(写真)

下厨房の「【居家炖汤】南昌瓦罐肉饼汤【凉拌粉的灵魂伴侣】」レシピページに、肉餅の作り方から卵を割り入れる工程までの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/104484572/

代用可能な食材

  • 乾燥茶樹菇→干し椎茸20g(戻し方・戻し汁の使い方は同じ。香りは穏やかになる)、または生のエリンギ100g(戻し汁が出ないため、そのぶん熱湯を200ml増やす)
  • 干し墨魚(するめ)→干し貝柱8g(戻し方は同じ)、または乾燥桜えび5g(戻し時間は10分に短縮する)
  • 豚スペアリブ→鶏手羽元300g(加熱時間は2時間に短縮する)
  • クコの実→乾燥なつめ2個(種を除いて半割りにする)
  • 瓦罐→蓋つきスープカップ、ココット、一人用の土鍋、または湯呑みにアルミホイルで蓋をしたもの
  • 黄酒→日本酒(同量)

保存・アレンジのコツ

  • スープは容器ごと粗熱を取り、冷蔵で3日、冷凍で1か月保存できる。温め直すときは電子レンジではなく、同じ蒸し煮の方法で20分加熱すると分離せず澄んだまま戻る。
  • Bのスペアリブは、時間が取れる日は3時間ではなく5〜6時間かけると、本場の煨湯に一段近い濃さになる。その場合は熱湯を100ml増やして蒸発分を見込む。
  • 南昌式に楽しむなら、茹でた米粉200gをごま油10mlと醤油10mlで和えた拌粉を添える。スープと交互に食べるのが現地の朝食スタイル。
  • 肉だねを作るときに一方向に混ぜて粘りを出す工程を省くと、加熱中に肉餅が崩れて汁が濁る。ここだけは手を抜かないほうがよい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。