江西料理・赣菜三杯鸡

三杯鶏レシピ本場江西の配合を徹底解説

黒い土鍋に照りのある鶏肉と生姜の薄切り、長ねぎを盛り、湯気が立つ三杯鶏のイラスト
地域
赣菜(江西)
分量
2〜3人分
公開

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一杯の油、一杯の酒、一杯の醤油——水は一滴も加えない。「三杯鶏」という名前は、この潔いほどシンプルな配合そのものから来ています。今や台湾料理の看板メニューとして知られるこの一皿ですが、そのルーツをたどると、実は江西省に伝わる、南宋の忠臣・文天祥にまつわる言い伝えに行き着きます。

伝説によると、元軍に捕らえられ獄につながれた文天祥のもとへ、ある日一人の老婦人が鶏と酒を携えてやってきました。その様子に心を動かされた江西出身の獄卒は、老婦人を文天祥に会わせてやり、自らも鶏を土鍋(瓦钵)で調理してもてなしたといいます。獄中では水を加えることが許されなかったため、獄卒は苦肉の策として酒を水の代わりに使い、塩をひとつまみ振っただけで煮込みました。一刻(約2時間)も経たないうちに鶏肉はとろりと柔らかくなり、あたり一面に得も言われぬ香りが漂ったと伝えられています。文天祥はこれを食した後、「人生自古誰無死、留取丹心照汗青」の一句を書き残したとされ、彼が処刑された12月9日には、今も江西の人々がこの三杯鶏を供えて彼を偲ぶ風習が残っているといいます。

後の時代になって、料理人たちは「酒だけ三杯」だった原型を、「油一杯・酒一杯・醤油一杯」という現在の配合へと洗練させていきました。油(もともとはラード)は肉に艶と香りを、酒は臭みを消して食材を柔らかくし、醤油は色と旨みを添える——それぞれの一杯が役割を持つ、無駄のない味の設計です。赣菜(江西料理)は、辛味とうま味を軸にしながら腊味(塩漬け・燻製の保存肉)や山野の食材を生かす系統として知られますが、三杯鶏はその中でも「水を使わない」という潔さが際立つ、江西の知恵が詰まった一皿だといえるでしょう。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、本場江西の配合と手順を公開します。

本場のレシピ

材料(2〜3人分)

  • 鶏肉骨付きぶつ切り。三黄鶏や地鶏がおすすめ500g
  • 生姜(薄切り)20g
  • 長ねぎ青い部分と白い部分、ぶつ切り60g
  • 豚油ラード。なければサラダ油で代用可45ml(大さじ3)
  • 生抽30ml(大さじ2)
  • 米酒中国の醸造酒。日本酒で代用可45ml(大さじ3)

作り方

  1. 鶏肉は一口大のぶつ切りにし、冷水に入れてから火にかけて沸騰させ、血や臭みを取り除く(焯水)。ざるに上げて水気をきる。

  2. 鍋に豚油を入れて中火にかけ、生姜の薄切りと長ねぎを加えてじっくり香りを出す。

  3. 香りが立ったら①の鶏肉を加え、表面の色が変わるまで強火で炒め合わせる。

  4. 生抽を回しかけて全体に絡め、鶏肉に焼き色と照りをつける。

  5. 米酒を注ぎ入れる(水は一切加えない)。蓋をして強火で一度沸騰させたら、弱めの中火にして15分ほど煮込む。

  6. 蓋を開けて生姜と長ねぎを取り出し、強火にして汁気を煮詰める。鶏肉全体にとろりとしたたれが絡み、つやが出たら火を止める。

  7. 器に盛り、好みで長ねぎの青い部分を散らして完成。

本場と日本の違い

  • 使う油:本場・江西の伝統的な三杯鶏は豚油(ラード)を使うのが古式で、コクと香ばしさの決め手になります。日本でよく知られる「台湾風三杯鶏」はごま油を使い、風味の方向性がやや異なります。
  • 香味野菜:江西の原型は生姜・長ねぎとシンプルですが、台湾で広まった現在の主流レシピはにんにくや玉ねぎ、唐辛子、氷砂糖を加え、仕上げに九層塔(台湾のバジルの一種で、日本のバジルとは香りが異なる)をたっぷり効かせるのが定番です。日本の中華料理店やレシピサイトで見かける三杯鶏は、この台湾式であることがほとんどです。
  • 甘み:台湾式は氷砂糖でほのかな甘みを加えることが多いのに対し、江西の伝統的な配合には砂糖は入りません。醤油と酒だけで仕上げる、よりシャープな塩味が特徴です。
  • 水を使わない潔さ:獄中で水が使えなかったという言い伝えの通り、江西式・台湾式ともに水を一切加えないのが最大の共通点です。日本の「鶏の照り煮」のような料理とは異なり、酒と醤油、油だけで水分を賄う点は本場ならではのこだわりです。

参考ページ(写真)

参考ページとして、美食天下の「三杯鸡」レシピページに手順写真が掲載されています。 https://home.meishichina.com/recipe-56382.html

代用可能な食材

  • 豚油(ラード):入手困難な場合はサラダ油で代用可(本場らしいコクはやや弱まる)
  • 米酒:日本酒で代用可。黄酒でもよいが、風味はやや異なる
  • 三黄鶏・地鶏:一般的な骨付き鶏もも肉・手羽元でも代用可(皮下脂肪を軽く取り除くとよりさっぱり仕上がる)

保存・アレンジのコツ

  • 冷蔵で2〜3日保存可能。翌日は味がなじんでより美味しくなる
  • 台湾風にアレンジする場合は、手順6の仕上げでみじん切りのにんにく10g・輪切り唐辛子1〜2本・氷砂糖5gを加え、火を止める直前に九層塔(またはバジル)ひとつかみを加えるとよい
  • ご飯にとてもよく合うので、汁ごとご飯にかけて「鶏飯」風にするのもおすすめ

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。