河南料理・豫菜洛阳燕菜

洛陽燕菜(牡丹燕菜)レシピ本場・洛陽水席の配合を徹底解説

澄んだスープの碗に花びら状の白い大根と、鶏肉・椎茸・錦糸卵・ハムの細切りを盛った牡丹燕菜のイラスト
地域
豫菜(河南・洛陽)
分量
2人分
公開

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大根なのに「燕の巣」と呼ばれる料理がある。細切りにした白大根を緑豆澱粉でまとい、蒸してから酸辣のスープを張るだけの一皿が、なぜ千年以上も洛陽の宴席の一番手を張り続けているのか。答えは、その名前にまつわる伝説にある。

伝わるところによれば、唐代・武則天の治世に洛陽近郊の農村で、上部が青く下部が白い、長さ三尺・重さ三十数斤にも及ぶ巨大な大根が育った。これを「風調雨順・国泰民安」の吉兆として都に献上したところ、宮中の料理人たちはただの野菜として扱うのは畏れ多いと考え、大根を細切りにして緑豆澱粉をまとわせ、幾度も蒸しては干す「九蒸九晒」という手の込んだ工程を経たうえで、上質な高湯(スープ)で仕立て直した。出来上がった一皿を口にした武則天が「まるで燕の巣のようだ」と絶賛し、「燕菜」の名を賜った——というのが定番の由来譚である。もっとも、これはあくまで宮廷料理の起源譚として語り継がれてきたものであり、史料で厳密に裏付けられた記録ではないとされる。

名前に「牡丹」が加わったのは、はるかに時代が下った1973年のことだと伝えられる。周恩来総理がカナダのトルドー首相(当時)を伴って洛陽を訪れた際、地元の料理人が卵黄で牡丹の花をかたどった飾りをスープの中央にあしらってもてなした。これに感激した周恩来が「洛陽の牡丹は天下に甲たり、菜の中にも牡丹の花が開いた」という趣旨の言葉を残したことから、以後この一皿は「牡丹燕菜」と呼ばれるようになり、洛陽の名物コース料理「洛陽水席」の一番手(頭道菜)に据えられているという。水席は前菜から始まり、最後まですべての皿に汁気があることからその名がついた、洛陽独特の宴会料理の様式である。

面白いのは、この料理の「燕の巣らしさ」が、実際にツバメの巣を一切使わずに大根と緑豆澱粉だけで作られている点だ。庶民には手の届かない高級食材を、身近な大根で「見立てる」という発想そのものが、洛陽の宴席料理が持つユーモアと矜持を物語っている。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分)

大根の下ごしらえ

  • 白大根(青首大根でも可)できるだけ太くまっすぐなもの400g
  • 緑豆澱粉片栗粉で代用可25g

具材(すべて細切り)

  • 鶏むね肉(茹でて細切り)60g
  • 金華ハムまたはロースハム20g
  • 錦糸卵卵1個分を薄焼きにして細切り1個分
  • 豆皮(乾燥湯葉を戻したもの)15g
  • 干し椎茸(水で戻したもの)2枚
  • 絹さや、または筍の細切り20g
  • カニ風味かまぼこあれば本ズワイガニのほぐし身20gで代用可2本
  • パクチー、万能ねぎ散らし用各少量

スープ

  • 鶏がらスープまたは豚骨スープ500ml
  • 生姜2枚
  • 塩小さじ1/2
  • こしょう(白こしょう推奨)小さじ1/8(約0.3g)
  • 香醋(黒酢)大さじ1
  • ごま油小さじ1/2(2ml)

作り方

  1. 大根を細切りにする。皮をむいた大根を長さ7〜8cmの細切りにし、塩小さじ1/4(分量外)をまぶして10分置き、出てきた水分をしっかり絞る。

  2. 緑豆澱粉をまとわせる。水気を絞った大根に緑豆澱粉25gを万遍なく振りかけ、手で優しく和えて全体にコーティングする。

  3. 蒸す。バットに広げて中火で5分蒸し、粗熱を取ってから冷蔵庫(または冷凍庫)で半日以上休ませる。この工程で澱粉と大根が馴染み、独特の透明感と「燕の巣」らしいコシが生まれる。

  4. 具材を用意する。鶏むね肉は茹でて細く裂き、ハム・戻した豆皮・戻した椎茸・絹さや(または筍)・カニ風味かまぼこをすべて長さを揃えて細切りにする。卵は薄焼きにして細切りにし錦糸卵にする。

  5. 碗に盛り付ける。深めの碗の中央に休ませた大根を盛り、その周りを放射状に具材で囲むように並べる。

  6. 再度蒸す。具材を盛った碗ごと中火で10分蒸し、味を落ち着かせる。

  7. スープを仕立てる。鍋に鶏がらスープ500mlと生姜を入れて温め、塩・こしょうで下味をつけ、仕上げに香醋大さじ1とごま油小さじ1/2を加えて香りを立たせる。

  8. 注いで仕上げる。蒸し上がった碗に熱々のスープを静かに注ぎ入れ、パクチーと万能ねぎを散らして完成。好みで錦糸卵や薄切りハムで中央に花のかたちを飾ると、より本場の見た目に近づく。

本場と日本の違い

  • 主役は大根であって、燕の巣ではない。 名前だけを見ると高級食材の料理に思えるが、実際に使うのはどこの家庭にもある大根で、その食感と澱粉の力だけで「燕の巣風」の見た目と歯ざわりを作り出している。
  • 味の軸は酸辣。 洛陽水席の多くの皿と同様、牡丹燕菜も酸味と辛味(黒酢とこしょう)を効かせた「酸辣爽口」な仕立てが本来の姿で、単なる薄味の吸い物ではない。
  • これは宴席の一番手の料理。 水席では前菜のあとに最初に登場する「頭道菜」として位置づけられており、単品のスープ料理としてではなく、コース全体の格を示す一皿として扱われる。
  • 飾り付けに意味がある。 中央に牡丹の花をかたどる飾りは1973年の周恩来のエピソード以降に定着したとされる要素で、家庭で作る場合も花形に具材を飾ることで、この料理が持つ「宴のもてなし」の性格を再現できる。

参考ページ(写真)

下厨房の「洛阳·牡丹燕菜」レシピページには、大根の細切りから澱粉をまとわせて蒸す工程、具材を並べて再度蒸す様子までの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106936770/

代用可能な食材

  • 緑豆澱粉→片栗粉25g(食感はやや軽くなるが代用可)
  • 金華ハム→ロースハムやベーコン20g
  • 豆皮(乾燥湯葉)→油揚げ15g(油抜きして細切り)
  • カニ風味かまぼこ→本ズワイガニのほぐし身20g、または省略可
  • 香醋→米酢大さじ1に砂糖ひとつまみを溶かしたもの

保存・アレンジのコツ

  • 澱粉をまとわせて蒸した大根(燕菜の素)は、そのまま冷蔵で2日ほど保存可能。作り置きしておけば、来客時に具材とスープを用意するだけで宴席風の一皿がすぐ完成する。
  • 家庭では彩りよく卵・にんじん・きゅうりなどを追加して具材を増やしても、本場の「見立て」の精神から外れない。
  • スープを鶏がらベースにするとあっさり、豚骨や牛骨ベースにするとコクが出る。好みに応じて選ぶとよい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。伝説的な由来については史料上の厳密な裏付けが確認できないため、「〜と伝えられる」「〜という」という表現に留めています。