河南料理・豫菜河南烩面
河南烩麺(河南烩面)レシピ本場河南鄭州の配合を徹底解説

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一杯の丼に、乳白色の羊肉スープ、手で引き延ばした幅広の麺、豆腐の皮、木耳、春雨、青菜がすべて入る。河南省の烩麺(フイミェン)は、主食もスープもおかずも一杯で完結する料理として、中原の食卓に根を下ろしてきた。中文維基百科は烩麺を「荤(肉)・素(野菜)・湯・菜・飯を兼ね備えた伝統風味小吃」と説明し、発祥地を河南省南陽市の方城県としている。
河南で最もよく語られる由来は、唐の李世民にまつわる伝説だ。即位前の李世民が雪の冬に傷寒で倒れたとき、助けた回族の母子が、飼っていた一頭きりの麋鹿(四不像)を屠って煮込み、その汁に麺生地を引き延ばして落として食べさせた。汗をかいた李世民は回復し、皇帝になってから御厨にこの料理を再現させた——しかし麋鹿はあまりに稀少だったため、代わりに山羊の肉が使われるようになり、これが「羊肉烩麺」になったという。
由来には別の説もある。清代に西安の羊肉泡馍が河南へ伝わり、麺を好む土地柄のなかで烩麺に姿を変えたとする説。そして抗日戦争期、空襲を避けて店に戻った料理人が、残っていた麺を羊肉のスープで「烩了烩(さっと煮合わせた)」のが始まりだとする説だ。どの説にも共通しているのは、羊のスープと、その場で引き延ばした麺という組み合わせである。
烩麺が属するのは豫菜(河南料理)。中原は歴代王朝の都が置かれた土地で、豫菜は宮廷料理の流れをくむ穏やかな味わいを身上とする。料理名の「烩」は、スープの中で複数の素材を煮合わせる技法そのものを指す言葉だ。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。
本場式の配合
材料(2人分)
羊肉スープ(高湯)
麺(烩麺胚)
- 中力粉または強力粉250g
- ぬるま湯(約35℃)130ml
- 塩2.5g(小さじ1/2)
- サラダ油(生地に塗る用)8ml(小さじ1と1/2)
具材
下ごしらえ用の水
- 血抜き用の水2000ml
- 下ゆで用の水1500ml
- 乾物の戻し用ぬるま湯400ml
作り方
羊骨700gとラム肉300gをボウルに入れ、血抜き用の水2000mlに1時間浸ける。途中30分で一度水を替えると血の抜けがよい。浸けた水は捨てる。
鍋に1の骨と肉、下ゆで用の水1500mlを入れて強火にかける。沸騰したら3分ゆでこぼし(焯水)、流水でアクと血合いを洗い流す。鍋も一度洗う。
洗った骨と肉を鍋に戻し、水2500mlを注ぐ。生姜15g・長ねぎ30g・黄酒30mlを加え、八角2個・桂皮3g・草果1個・小茴香2g・花椒2g・白芷2g・ローリエ2枚・乾燥なつめ2個をお茶パックか布袋にまとめて入れる。
強火で沸かしてアクを丁寧にすくい、ふたを少しずらして中火(表面がゆらゆらと沸き続ける火加減)で2時間半煮る。1時間経ったところで肉の塊だけを取り出し、粗熱を取って厚さ3mmにスライスしておく(煮すぎるとパサつくため)。
4の途中、麺生地を作る。ぬるま湯130mlに塩2.5gを溶かし、中力粉250gに少しずつ加えて混ぜ、5分こねてひとまとめにする。ラップをかけて常温で30分休ませる。
もう一度5分こねて表面をなめらかにし、再びラップをかけて30分休ませる。
生地を5等分(1個約77g)し、それぞれ長さ12cm・幅6cm・厚さ1cmの牛の舌のような形に伸ばす。麺棒か箸の背で中央に縦1本のすじを付ける。刷毛でサラダ油8mlを全面に塗り、バットに並べてラップをかけ、常温で1時間以上(最長3時間)寝かせる。この油漬けの寝かせが、手で引き延ばせる生地になる決め手。
乾燥木耳5g・春雨25g・乾燥金針菜8gを、戻し用ぬるま湯400mlに20分浸けて戻し、水気を切る。木耳はひと口大に裂き、金針菜は根元の固い部分を切り落とす。豆皮40gは5mm幅に切る。
スープの煮込みが終わったら骨と香辛料の袋を取り出し、ざるで漉す。表面に浮いた羊の脂はすくい取らずに残す。鍋に戻して牛乳50mlを加え、中火で5分煮ると乳白色に濁って本場らしい見た目になる。塩15gと白胡椒1gを加えて味を決める。この時点でスープは約1200mlになっている。
9のスープを強火で沸かし、戻した木耳・春雨・金針菜・豆皮40g、うずらの卵4個を入れて2分煮る。
7の生地を1枚ずつ両手で持ち、台に軽く打ちつけながら左右に引き延ばして幅3〜4cm・長さ60〜70cmの帯状にする。中央のすじに沿って裂き、2本に分けながら沸いたスープへ落とす。5枚すべて入れたら中火にして2〜3分ゆでる。
麺が浮いて透明感が出たらチンゲンサイ100gを加え、30秒煮る。4でスライスしたラム肉を戻し入れて温める。
丼2つに麺・具材・スープを等分に盛り、パクチー8gと小ねぎ10gを散らし、辣椒油10mlを回しかける。糖蒜4片を小皿に添えて完成。
本場と日本の違い
- 日本の中華麺店で「烩麺」を名乗る一杯は、あらかじめ切られた幅広麺を使うことが多い。本場では注文が入ってから、油を塗って寝かせた生地を手で引き延ばすのが基本で、店の厨房では生地を台に打ちつける音が絶えず響いている。この工程があるため、麺の中央はもっちり、縁は薄くひらひらという不均一な厚みが生まれる。この不均一さこそが烩麺の食感の正体で、機械で切った均一な幅広麺では再現できない。
- スープは羊骨と羊肉を数時間煮出した乳白色の白湯で、醤油の類は一切入れない。生抽や老抽で色を付けると烩麺のスープではなくなる。味付けは塩と白胡椒が基本で、羊の脂の膜もすくい取らずに残す。
- 具材は肉と麺だけではなく、豆皮・木耳・春雨・金針菜・うずらの卵・青菜が当たり前のように同居する。中文維基百科が烩麺を「荤・素・湯・菜・飯を兼ね備えた」と説明するとおり、一杯で献立が完成する構成が本来の姿。
- 卓上には糖蒜(にんにくの甘酢漬け)とラー油の小皿が必ず添えられる。羊の脂を糖蒜の酸味でリセットしながら食べ進めるのが河南流で、これを省くと後半が重く感じられる。
- 河南では羊肉烩麺のほかに三鮮烩麺・什錦烩麺といった派生もあり、台湾に渡った烩麺は土鍋(砂鍋)で供される独自のスタイルに変化している。
参考ページ(写真)
下厨房の「河南烩面」レシピページに、生地を寝かせて引き延ばす工程の手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/1063363/
代用可能な食材
- 羊骨→鶏がら400gと豚背骨300g(羊特有の香りは出ないが、乳白色のスープは同じように取れる)
- ラム肩肉→ラムチョップの骨付き肉300g、またはマトンのもも肉300g
- 白芷→省いてもよい。省く場合は生姜を20gに増やすと羊の臭みが抑えられる
- 草果→黒カルダモン1個(約5g)
- 金針菜→生のえのきだけ40g(食感は近いが、独特の甘い香りは出ない)
- 豆皮→乾燥ゆば20g(ぬるま湯で10分戻して5mm幅に切る)
- 糖蒜→らっきょうの甘酢漬け4粒(約30g)
- 中力粉→薄力粉125gと強力粉125gを混ぜたもの
- 手延べが難しい場合→きしめん(乾麺)160g。別鍋で表示時間どおりにゆでてからスープに合わせる
保存・アレンジのコツ
- 羊肉スープは冷蔵で3日、冷凍で1か月保存できる。冷やすと表面で羊の脂が固まって蓋の役割を果たすので、その状態のまま保存すると香りが飛びにくい。使うときは脂ごと温め直す。
- 麺の生地は7の状態(油を塗って成形済み)で1枚ずつラップに包み、冷凍で3週間保存できる。使うときは解凍せず、常温に30分置いてから引き延ばすとちぎれにくい。
- 具材を炒めてから加える「炒め版」も河南の家庭では一般的。にんにく10gを油で炒め、木耳・豆皮・春雨を加えてスープ100mlで軽く炒め煮にしてから丼に盛ると、香ばしさの層が加わる。
- 残ったスープは翌日、ご飯を入れて泡飯(羊肉スープの雑炊)にすると最後まで使い切れる。
出典
- 中文維基百科「烩面」
- 搜狐「河南名吃—烩面的由来」
- 搜狐「河南烩面的正宗家常做法」
- 下厨房「河南烩面」レシピ
- 下厨房「河南烩面(家庭简易版)」レシピ
- 下厨房「羊肉汤(河南烩面)」レシピ
- 下厨房「河南羊肉烩面(改良版)」レシピ
- 下厨房「卖爆河南烩面生胚○手工面条」レシピ
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。