河南料理・豫菜胡辣汤
胡辣湯(胡辣汤)レシピ本場河南の配合を徹底解説

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河南の朝は、このスープで始まる。とろりと濃いスープに牛肉と面筋(小麦グルテン)が沈み、ひと口すすると喉の奥がカッと熱くなる——胡辣湯。名前に「辣(辛い)」とあるが、その辛さの正体は唐辛子ではない。効いているのは白胡椒である。「胡」の字は、唐代に西域(胡)からもたらされた胡椒を指しているとされる。
由来には複数の説が伝わる。ひとつは、北宋の徽宗の時代に宮中の料理人が少林寺の「醒酒湯」と武当山の「消食茶」をもとに作り上げたという説。もうひとつは明の嘉靖年間、閣老・厳嵩が道士から得た秘方を嘉靖帝に献上し、のちの戦乱で御厨が逍遥鎮へ逃れた際にその製法が民間に伝わったという説である。研究者のあいだでは、胡椒が中国に入ったのが唐代であることから、酸辣湯と肉粥をベースに改良されて成立したもので、遡れるのは唐代以降と考えられている。2021年6月10日には「逍遥胡辣汤制作技芸」が第五批国家級無形文化遺産に登録された。
そして河南の人にとって外せないのが、二大流派の話だ。周口市西華県の逍遥鎮系は、木耳・金針菜・牛肉と具がとにかく賑やかで、胡椒の刺激が真っ向から効いてくる。対して漯河市舞陽県の北舞渡系は、晩清に山西・陝西商人が建てた山陝会館で太原府出身の料理人が生み出したと伝わり、表面に浮かぶのは葱くらいで見た目は地味。だが匙を入れると肉の塊がごろりと出てくる。個々の具材が主張せず、溶け合って肉のスープのうま味を押し上げる、まろやかな味わいが身上である。
ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。
本場式の配合
材料(2人分・大きめの丼2杯分)
面筋と洗面水(自家製)
- 強力粉200g
- 生地をこねる水110ml
- 面筋を洗うための水500mlずつ4回に分けて使う2000ml
牛肉スープ
具材
調味
仕上げ(卓上で加える)
作り方
面筋の生地を作る(前日、または食べる3時間前)。強力粉200gに水110mlを2〜3回に分けて加え、箸で混ぜてそぼろ状にしてからひとまとめにする。ラップをして15分休ませ、表面がなめらかになるまで3分こね、さらに30分休ませる。
洗面(面筋を洗い出す)。ボウルに水500mlを張り、1の生地を沈めて手で揉み洗いする。水が牛乳のように白く濁ったら、その洗い水を別の大きなボウルに移す。新しい水500mlに替えて同じ作業を計4回繰り返し、洗い水はすべて同じボウルに集めておく。生地が黄色みを帯びた弾力のある塊になったら洗い終わり。この塊が面筋。水に浸したまま冷蔵庫に置く。
洗面水を沈殿させる。集めた洗い水を室温で2時間(または冷蔵庫で一晩)静置する。上澄みの透明な水を静かに捨て、底に沈んだ濃いでんぷん液150mlを残す。これが本場のとろみの正体になる。片栗粉は使わない。
スープを取る。鍋に牛すね肉120g、水1200ml、生姜8g、八角1個、桂皮2g、小茴香1g、丁香2粒、黄酒10ml、落花生25gを入れて強火にかける。沸いたらアクを丁寧に取り、ふたをせず弱火で60分煮る。スープが約900mlになるのが目安。生姜と香辛料は取り出し、牛肉と落花生は鍋に残す。
具材を煮る。戻した木耳40g・金針菜30g・豆皮30g・紅薯粉条60gを加え、中火で10分煮る。
調味する。生抽15ml、老抽5ml、オイスターソース10g、十三香2g、塩9gを加えて混ぜ、2分煮る。
面筋を入れる。冷蔵庫から出した面筋を水気を軽く絞り、手で1.5cm大にちぎりながら鍋に落としていく。中火で3分、面筋が浮き上がってくるまで煮る。
勾芡(とろみをつける)。3のでんぷん液150mlを底からもう一度よく混ぜ、鍋を弱めの中火にして糸のように細く回し入れる。注ぎながら絶えず混ぜ続けるのが最大のコツで、手を止めると鍋底が焦げる。全量入れたらさらに2分、とろみが半透明に澄み、木べらで鍋底をなでたときに一瞬すじが残る濃度になるまで混ぜながら加熱する。
白胡椒を最後に入れる。火を弱めて白胡椒5gを加え、30秒だけ混ぜて火を止める。香りが飛ばないよう、必ず仕上げに加える。
器に注ぎ、卓上で香醋10ml・香油4ml・辣椒油10ml・葉にんにく10gを各自の好みで回しかけて完成。
本場と日本の違い
- 「辣」なのに唐辛子が主役ではない。 日本で辛いスープといえば唐辛子を思い浮かべるが、胡辣湯の辛さは白胡椒の刺すような辛さが軸で、唐辛子は卓上で足す辣椒油の分だけ。だからこそ胡椒の量をケチると、まったく別の料理になってしまう。
- とろみは片栗粉ではなく洗面水。 面筋を洗った水を沈殿させた小麦でんぷんでとろみをつけるため、粘りに独特の伸びとコクがある。この工程を片栗粉で代用すると、口当たりが軽くさらっとしてしまう。面筋ととろみが1つの生地から同時に生まれるのが、この料理の構造上の面白さでもある。
- これは朝ごはんである。 河南では胡辣湯は完全に早餐(朝食)の料理で、油条・水煎包・油餅などの揚げ物・焼き物と組み合わせて食べる。日本の中華料理店で見かける「夜に飲むスープ」ではない。
- 日本の酸辣湯とは別物。 酸辣湯は溶き卵でとじて酢の酸味を前面に出すが、胡辣湯に卵は入らない。酢は最初から入れず、必ず卓上で各自が回しかける。牛肉・面筋・粉条・木耳・金針菜が入るぶん、スープというより「食事そのもの」に近い。
- 流派の違いは家庭でも選べる。 具を多めにして白胡椒を効かせれば逍遥鎮系、牛肉を大きめに切って具を減らし、スープのうま味を前に出せば北舞渡系に寄る。
参考ページ(写真)
下厨房の「河南胡辣汤」レシピページに、具材の下ごしらえからとろみをつける工程までの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/103026421/
代用可能な食材
- 面筋を自分で洗い出すのが難しい場合→焼き麩30gを水で戻して手でちぎったもので代用可(食感はやや軽くなる)。この場合のとろみは、小麦粉30gを水150mlで溶いた液に置き換える(片栗粉ではなく小麦粉を使うほうが本場の口当たりに近い)
- 牛すね肉→牛こま切れ肉120g、または羊肉120g(逍遥鎮では羊肉版も一般的)
- 紅薯粉条→緑豆春雨20g(戻し後約60g)
- 豆皮→乾燥ゆば10g、または油揚げ30g(油抜きして細切り)
- 金針菜→生のえのきだけ30g(香りの方向性は変わる)
- 葉にんにく→青ねぎの青い部分10g、またはニラ10g
- 香醋→米酢10mlに砂糖1gを溶かしたもの
- 十三香→五香粉2g
保存・アレンジのコツ
- 面筋と洗面水は、まとめて作って2〜3回分に分けておける。面筋は水に浸して冷蔵で3日、でんぷん液は上澄みを張ったまま冷蔵で2日。使う前に必ず底から混ぜ直す。
- スープは冷めるとでんぷんが固まって重くなるので、温め直すときは水を50〜100ml足し、混ぜながら弱火にかける。とろみが戻る。
- 河南で人気の食べ方が「両掺(リャンチャン)」。胡辣湯と豆腐脳(おぼろ豆腐の塩味あんかけ)を半々に注ぐもので、辛さがまろやかになる。家庭では絹ごし豆腐150gを崩して器に入れ、そこへ胡辣湯を注ぐだけでも近い味になる。
- 牛肉を抜いて木耳・金針菜・豆皮・粉条・落花生だけで作る「素胡辣湯(精進版)」も本場にあり、その場合はスープを水900mlに替え、干し椎茸5gを加えるとうま味が補える。
出典
- 中文維基百科「胡辣汤」
- 網易「谁是正宗的河南胡辣汤?逍遥镇还是北舞渡?」
- 下厨房「河南胡辣汤」レシピ
- 下厨房「最正宗的河南传统手洗面筋胡辣汤~家庭大餐」レシピ
- 下厨房「胡辣汤(附洗面筋教程)」レシピ
- 下厨房「曼食慢语 | 胡辣汤」レシピ
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。