安徽料理・徽菜一品锅

一品鍋(一品锅)レシピ本場安徽・徽州の配合を徹底解説

黒い両手鍋に豆腐、たけのこ、青菜、肉団子、黄色い卵の包みを詰めた一品鍋のイラスト
地域
徽菜(安徽・徽州)
分量
4人分
公開

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鍋の中身を、上から順番にしか食べてはいけない料理がある。安徽省・徽州(現在の績溪県一帯)に伝わる一品鍋がそれだ。具材を混ぜず、下から野菜・肉・豆腐・団子・卵餃子と何層にも積み上げて煮込むため、下の層めがけて箸を突っ込むのは最大のマナー違反とされる。層が崩れれば、この料理は料理でなくなってしまうからだ。

名前の由来には二つの伝承がある。ひとつは乾隆帝の南巡説。旅の途中で農家に立ち寄った皇帝に、農家の女性が大根・干し豆・豚の角煮・油揚げなどをありあわせで一つの鍋に重ねて煮込んだものを出した。皇帝が料理名を尋ねると「一鍋熟(ひと鍋で全部煮たもの)」との答え。皇帝は「その名は雅ではない」として、「これぞ徽州の名肴・一品鍋である」と名付けたという。

もうひとつが、この料理を全国区にした人物のエピソードだ。績溪県上庄鎮出身の思想家・胡適は、北京大学で教鞭を執っていた時代、客を招くたびにこの故郷の鍋を出した。客が料理名を尋ねると胡適は「一品鍋」と答え、胡家でしか食べられないその鍋は、いつしか「胡適一品鍋」と呼ばれるようになる。招かれた一人である文人・梁実秋は、直径二尺(約60cm)はあろうかという大鉄鍋が煮えたぎったまま運ばれてきて、鶏の層、鴨の層、肉の層、油揚げの層と積み重なり、卵皮の餃子が彩りに散らしてあった——と、その光景を書き残している。

一品鍋は山の幸を重厚に煮込む徽菜(安徽料理)の性格をそのまま体現した一品で、現在は績溪県の無形文化遺産として保護・継承されている。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(4人分・直径24cm以上の土鍋1つ分)

高湯(スープ)

  • 鶏手羽元6本(300g)
  • 生姜薄切り10g
  • 長ねぎ(青い部分)30g
  • 水煮詰めて約700mlにする1000ml
  • 塩15g(小さじ2と1/2)

紅焼肉(第2層)

  • 豚バラ肉(ブロック)4cm角に切る400g
  • サラダ油15ml(大さじ1)
  • 氷砂糖15g
  • 黄酒または日本酒30ml(大さじ2)
  • 生抽30ml(大さじ2)
  • 老抽10ml(小さじ2)
  • 生姜薄切り15g
  • 桂皮3cm長さ1片3g
  • 八角2g(2個)
  • 湯400ml

蛋餃(卵餃子)と肉団子(第4・5層)

  • 豚ひき肉300g
  • 卵正味150g3個
  • 生抽15ml(大さじ1)
  • 黄酒または日本酒10ml(小さじ2)
  • 塩3g(小さじ1/2)
  • 生姜みじん切り10g
  • 片栗粉9g(大さじ1)
  • 水30ml(大さじ2)
  • サラダ油小さじ2/蛋餃を焼く用10ml

各層の具材

  • 大根厚さ5mmの半月切り150g
  • 白菜5cm幅のざく切り250g
  • ゆでたけのこ薄切り100g
  • 厚揚げ1.5cm厚に切る200g
  • 腐竹(乾燥)水で40分戻して5cm長さに切る40g
  • 春雨水で15分戻す40g
  • 小松菜5cm長さ150g
  • 葉にんにく斜め薄切り20g

作り方

下ごしらえ1:高湯をとる

  1. 鶏手羽元300gを鍋に入れ、かぶるくらいの水を注いで強火にかける。沸騰後3分ゆでこぼし(焯水)、流水でアクを洗い流す。

  2. 洗った手羽元を鍋に戻し、生姜10g・長ねぎの青い部分30g・水1000mlを加える。強火で沸かしてアクを取り、ふたをずらして弱火で40分煮る。スープが約700mlになるのが目安。

  3. スープを漉し、塩15gを加えて溶かす。手羽元は取り出しておく(第4層で使う)。

下ごしらえ2:紅焼肉を作る

  1. 豚バラ肉400gを4cm角に切り、水から入れて沸騰後3分ゆでこぼし、湯で洗う。

  2. 鍋にサラダ油15mlと氷砂糖15gを入れて弱火にかけ、砂糖が溶けて赤褐色に色づいたら(炒糖色)、すぐに豚バラを入れて全面に色を絡める。

  3. 黄酒30ml・生抽30ml・老抽10ml・生姜15g・桂皮3g・八角2gを加え、湯400mlを注ぐ。沸騰したらふたをして弱火で50分煮る。煮汁が150ml程度に煮詰まったら火を止める。

下ごしらえ3:蛋餃と肉団子を作る

  1. 豚ひき肉300gに生抽15ml・黄酒10ml・塩3g・生姜のみじん切り10g・片栗粉9g・水30mlを加え、粘りが出るまで一方向に3分練る。半量ずつに分ける。

  2. 卵3個を溶きほぐす。玉じゃくしにサラダ油を薄く塗って弱火で熱し、卵液を大さじ1強(約20ml)流して直径10cmほどの薄焼き卵を作る。表面が半熟のうちに肉だね約20gをのせ、二つ折りにして縁を押さえる。同様に8個作る。

  3. 残りの肉だねを直径3cmの団子8個に丸め、沸騰した湯で3分ゆでて取り出す。

下ごしらえ4:その他の具材

  1. 乾燥腐竹40gは水に40分浸して戻し、5cm長さに切る。春雨40gは水に15分浸して戻す。厚揚げ200gは1.5cm厚、大根150gは5mmの半月切り、白菜250gは5cm幅、ゆでたけのこ100gは薄切りにする。

組み立てと煮込み

  1. 直径24cm以上の土鍋に、下から順に重ねる。第1層=大根150g・白菜250g・ゆでたけのこ100gを鍋底一面に敷き詰める(垫鍋)。

  2. 第2層=紅焼肉を煮汁150mlごと均等に広げてのせる。

  3. 第3層=厚揚げ200gと戻した腐竹を隙間なく並べる。

  4. 第4層=高湯からあげた鶏手羽元6本と、ゆでた肉団子8個を並べる。

  5. 第5層=蛋餃8個を、中心から放射状に、互いの縁を重ねるように並べる。

  6. 塩を加えた高湯700mlを、鍋肌から静かに注ぐ(具材の8分目まで浸る状態が目安)。ふたをして強火で沸かし、沸騰したら弱火にして25分煮込む。

  7. 戻した春雨と小松菜150gを鍋の縁から差し込み、さらに弱火で8分煮る。仕上げに葉にんにく20gを散らして火を止める。卓上コンロにのせ、弱火にかけたまま供する。

本場と日本の違い

  • 日本の鍋料理は具材を鍋の中で自由に取り分けるが、一品鍋は層を崩さず上から順に食べるのが本場の作法。まだ上の層が残っているのに箸を底まで突っ込むのは、現地では大きなマナー違反とされる。層ごとに味の濃さと食感が変わり、下にいくほど上の層の脂とうま味を吸っているという構造そのものが料理の設計になっている。
  • 本場では具材を鍋に放り込むのではなく、すべて別々に完成させてから積み上げる。紅焼肉は紅焼肉として、蛋餃は蛋餃として単独で成立する状態まで作り、最後に高湯で一体化させる。この「積む」工程があるため、家庭でも前日に各パーツを仕込んでおける。
  • 績溪の伝統的な一品鍋は薪の竈で2〜3時間煮込み、胡適家では8時間かけたとも伝わる。家庭のコンロでは各パーツを事前に火入れしておくことで、鍋での煮込みを30分強に短縮できる。
  • 層の構成は地域・家庭で幅がある。績溪県の公式な説明では第1層に季節の野菜、第2層に大ぶりの紅焼肉、第3層に肉入りの豆腐包、第4層に卵皮で包んだ鴨肉と、具材の個数まで決まっているとされる。一方、家庭版では5層から9層まで自由に増減し、鶏・春雨・金針菜・青菜などを足していく。

参考ページ(写真)

下厨房の「《觉醒年代》徽菜胡适一品锅」レシピページに、層の重ね方と各パーツの仕込みの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106945251/

代用可能な食材

  • 腐竹→乾燥ゆば40g(戻し方・切り方は同じ)
  • 葉にんにく→青ねぎの青い部分20g、またはニラ20g
  • 老抽→濃口醤油10mlで代用可(風味は異なる。色づきも弱くなるため、紅焼肉の炒糖色をやや濃いめにとる)
  • 黄酒→日本酒(紅焼肉用30ml・肉だね用10ml)
  • ゆでたけのこ→乾燥筍20g(水で一晩戻して100gにする)、またはメンマ100g
  • 厚揚げ→油揚げ4枚(80g)と木綿豆腐150g
  • 鶏手羽元→骨付き鶏もも肉300g(ぶつ切り)
  • 小松菜→ほうれん草150g、チンゲン菜150g

保存・アレンジのコツ

  • 紅焼肉・蛋餃・肉団子・高湯の4つは前日に仕込んで冷蔵できる。当日は積んで煮るだけになるので、来客時のもてなし料理にしやすい。紅焼肉は煮汁ごと冷蔵すると表面で脂が固まり、香りが飛びにくい。
  • 蛋餃は多めに作って冷凍しておける。凍ったまま鍋にのせて煮込めるので、他の鍋料理にも流用できる。
  • 具材を食べ終えたら、残った高湯にうどんや春雨を足して締めにする。下の層から溶け出した脂とうま味が濃縮しており、ここが一番おいしいと言われる部分でもある。
  • 層を増やすなら、第3層と第4層の間に干し椎茸(戻して80g)、または金針菜(戻して60g)を挟むと、山の食材を重んじる徽菜らしい構成になる。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。