安徽料理・徽菜李鸿章杂烩

李鴻章雑烩(李鸿章杂烩)レシピ本場安徽の配合を徹底解説

土鍋に椎茸、うずらの卵、なまこ、切り目を入れたいか、肉団子、青菜を盛り合わせた李鴻章雑烩のイラスト
地域
徽菜(安徽・合肥)
分量
2〜3人分
公開

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かつてアメリカの中華料理店に必ずあった「チャプスイ(chop suey)」。エドワード・ホッパーが絵に描き、ルイ・アームストロングが歌ったこの料理名は、中国語の「杂碎」に由来する。名前を貸したのは清末の政治家・李鴻章だ。ただし本場・安徽省合肥の「李鴻章雑烩」は、アメリカのチャプスイとは別の料理である。

1896年、李鴻章はロシア皇帝ニコライ2世の戴冠式に出席した帰路、アメリカを訪れた。ニューヨークのホテルでの晩餐会で中国料理が好評のあまり尽きてしまい、困った李鴻章は厨房に残った材料をひとつの鍋にまとめて煮るよう命じた。これが大受けし、料理名を問われて答えた「雑烩(ザーフイ)」が、合肥なまりのせいで「杂碎(ザースイ/chop suey)」と聞き取られた。翌日の新聞が書き立て、ニューヨークだけで300〜400軒の「杂碎館」が生まれた——というのが、語り継がれる筋書きである。

もっとも、現存最古の「杂碎」のメニューは1879年ボストンの店のもので、李鴻章の訪米より17年早い。米国のチャプスイは広東省台山出身の移民料理人の料理が李鴻章の名声に便乗して広まったもの、というのが今日の有力な見方だ。

一方、帰国後も李鴻章が家で作らせ客をもてなしたと伝わる中国側の「李鴻章雑烩」は、合肥の名菜として定着した。海参・魚の浮き袋・干し貝柱・鶏・ハム・筍・湯葉を澄んだ鶏スープでともに煮て(烩)、大きな碗に色よく積み上げる一皿。山の幸と海の幸を一つの器に集める重厚な仕立ては、まさに徽菜(安徽料理)の性格そのもので、今日では「十大徽菜」の一つに数えられている。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2〜3人分)

主な具材

  • 鶏もも肉(皮を除く)3cm角のそぎ切り120g
  • するめいか(胴)開いて表面に格子状の切り込みを入れ、3cm角に切る80g
  • たら(生・皮と骨を除く)すり身団子用80g
  • 卵白Mサイズ1/2個分。すり身団子用15g
  • 片栗粉小さじ1と2/3。すり身団子用5g
  • うずらの卵(水煮)8個(約80g)
  • 金華ハム長さ5cm・幅1cmの薄切り30g
  • 干し椎茸乾燥4枚12g
  • 干し貝柱8g(3〜4粒)
  • 腐竹(乾燥)戻して約60g。5cm長さに切る25g
  • 水煮筍長さ5cm・幅1cmの薄切り80g
  • ほうれん草の茎6本分。5cm長さに切る40g

煮汁

  • 鶏がらスープ顆粒の鶏がらスープの素6gを湯600mlで溶いたもの600ml
  • 干し椎茸・干し貝柱の戻し汁100ml
  • 紹興酒25ml(大さじ1と2/3)
  • 長ねぎ(青い部分)5cm長さ2本25g
  • 生姜薄切り5枚15g
  • 塩7g(小さじ1と1/4)
  • 白胡椒(粉)0.3g(小さじ1/8)
  • ラード15g(大さじ1と1/4)

仕上げのとろみ

  • 片栗粉8g(大さじ1弱)
  • 水16ml(大さじ1)

作り方

  1. 干し椎茸12gは水80ml、干し貝柱8gは水50mlに、それぞれ60分浸けて戻す。戻し汁は合わせて100mlを取り分けておく(足りない場合は水を足して100mlにする)。椎茸は軸を落として半分に切り、貝柱は指で細かくほぐす。

  2. 乾燥腐竹25gは40℃程度のぬるま湯に40分浸けて戻し(約60gになる)、5cm長さに切る。

  3. たら80gを包丁で細かく叩いてすり身にし、卵白15g・片栗粉5g・ほぐした干し貝柱の半量(4g)を混ぜて粘りが出るまで練る。8等分して直径2.5cmの団子に丸める。

  4. 鍋に湯を沸かし、3の団子を弱火で3分ゆでて浮いてきたら取り出す。続けて同じ湯で鶏もも肉120gといか80gを別々に40秒ずつゆで(焯水)、ざるに上げる。

  5. 鍋に鶏がらスープ600ml・戻し汁100ml・紹興酒25ml・長ねぎ25g・生姜15gを入れて強火にかける。沸いたら鶏もも肉・金華ハム30g・水煮筍80g・戻した椎茸・残りの干し貝柱4g・腐竹を加え、弱めの中火にして12分煮る。

  6. 長ねぎと生姜を取り出す。いか・魚の団子・うずらの卵8個を加えてさらに3分煮て、塩7gと白胡椒0.3gを加えて味を決める。

  7. ほうれん草の茎40gを加えて1分煮たら、穴じゃくしで具材だけを引き上げ、深めの大皿か土鍋に盛る。椎茸を中央に、色の異なる具材を放射状に並べると本場の盛り付けに近づく。

  8. 鍋に残った煮汁を強火で沸かし、片栗粉8gを水16mlで溶いて回し入れ、とろみをつける。火を止めてラード15gを加えて溶かし混ぜ、7の具材の上から全体に回しかけて完成。

本場と日本の違い

  • 本場の宴席版は、海参(なまこ)・油発鱼肚(魚の浮き袋を油で揚げて戻したもの)・鸽蛋(鳩の卵)・蛋黄糕(卵黄を蒸し固めた黄色い糕)・熟猪肚(下ゆでした豚のガツ)まで入る、14種前後の材料を使う大皿料理。日本の中華料理店でこの構成に出会うことはまずない。ここでは日本のスーパーで揃う範囲に置き換えているが、材料の「数」を減らさず種類を並べることこそが、この料理の本質にあたる。
  • 「雑烩」といっても、味付けは驚くほど淡い。使うのは塩・白胡椒・紹興酒・鶏スープだけで、醤油も豆板醤も八角も入らない。澄んだスープに具材それぞれのうま味を重ねる「白烩」の仕立てが本場の姿で、日本人が「中華の煮込み」と聞いて想像する濃い醤油色の煮物とは方向性がまったく違う。
  • 本場では煮た具材を一度取り出し、大碗の底に椎茸を伏せて置いてから他の具を色よく積み上げ、蒸してから皿にひっくり返す——という盛り付けの工程を踏む。合肥の店では陶製の器のまま炭火にかけて供することも多い。家庭では蒸し返しを省いて直接盛り付けてよいが、「ごちゃ混ぜにしない」という意識だけは残したい。名前は「ごった煮」でも、料理は整然としているのが本来である。
  • 同名の「李鴻章烩菜」という料理が河北の直隷官府菜にもあるが、こちらは白菜・豆腐・幅広春雨に甜面醤を合わせる別系統の料理。安徽の「李鴻章雑烩」とは中身が異なる。

参考ページ(写真)

下厨房の「李鸿章大杂烩」レシピページに、具材の切り方から盛り付けまでの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106005663/

代用可能な食材

  • 紹興酒→黄酒または日本酒25ml(原典が「绍酒」を指定しているため、手に入るなら紹興酒を使いたい)
  • 金華ハム→生ハム30g、またはベーコン30g(ベーコンの場合は塩を6gに減らす)
  • 干し貝柱→干しえび8g(風味は軽くなる)
  • 腐竹→乾燥ゆば25g(戻し方・切り方は同じ)
  • 水煮筍→玉蘭片(乾燥筍)15gを一晩戻したもの、またはエリンギ80g
  • うずらの卵→鶏卵のゆで卵2個を4等分(本来は鳩の卵を使う部分)
  • たらのすり身団子→市販の白身魚のつみれ8個(約80g)、またははんぺん80gを8等分
  • ラード→サラダ油15g(コクは控えめになる)
  • 海参・魚の浮き袋が手に入る場合→戻したものを各50g、手順5で鶏もも肉と同じタイミングで加える

保存・アレンジのコツ

  • 具材と煮汁を分けずにそのまま冷蔵で2日保存できる。温め直すと片栗粉のとろみが緩むので、食べる直前に片栗粉2gを水4mlで溶いて足すと元の口当たりに戻る。
  • 具材の下ごしらえ(戻す・切る・下ゆで・団子作り)は前日に済ませて冷蔵しておける。当日はスープで煮て盛るだけになるため、来客時の一品にしやすい。
  • 残った煮汁は捨てず、翌日に中華麺150gを合わせると「雑烩麺」になる。合肥でも定番の食べ方。
  • 具材の種類は増やす方向でアレンジするのが本場流。焼き豚・湯葉・エリンギ・生麩などを足しても料理の性格は崩れない。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。