貴州料理・黔菜酸汤鱼
酸湯魚(酸汤鱼)レシピ本場貴州の配合を徹底解説

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「三天不吃酸,走路打蹿蹿(三日も酸っぱいものを食べないと、歩く足元がふらつく)」。貴州にはそんな言い回しがある。この一言の裏には、貴州が長く交通の閉ざされた内陸の山地であり、塩が「贅沢品」と呼ばれるほど希少だったという事実がある。塩の代わりに人々が使ったのが、発酵させた酸味だった。「以酸代盐(酸味で塩の代わりとする)」と呼ばれるこの食文化の到達点が、黔東南苗族侗族自治州の苗族・侗族が受け継いできた酸湯魚である。
核心は、2種類の「酸湯」を使い分ける点にある。白酸湯は、もち米を煮た米湯を冷まして稲藁で焼いた甕に注ぎ、種となる古い酸湯を加えて30〜35℃で5〜6日発酵させたもの。紅酸湯は、新鮮なトマト(現地では毛辣果という野生の小トマト)と赤唐辛子を甕に仕込んで5〜6か月自然発酵させ、磨り潰してさらに半月寝かせたものだ。
この技術は「凱里酸湯魚制作技藝」として2021年に国家級無形文化遺産(第5批)に登録された。核心区域は凱里・雷山・台江・剣河で、なかでも凱里が本場とされる。地元ではほぼ全ての家に酸湯の甕があり、嫁ぐ前の娘は母親から酸湯の仕込み方を習うという。
そして重要なのが、四川・重慶の酸菜魚とはまったくの別物だということ。酸菜魚の酸味は漬け込んだ青菜(酸菜)の乳酸発酵に由来し、花椒の痺れが味の輪郭を作る。対する酸湯魚の酸味はトマトと米の発酵に由来し、花椒はほぼ使わない。代わりに木姜子(山胡椒)のレモンのような香りが酸味を立ち上げる。名前は似ていても、原料も香りの設計も違う料理なのだ。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。
本場式の配合
材料(2人分)
魚と下味
- 白身魚の切り身本場では鯉・草魚・黒魚などの淡水魚を使用400g
- 塩(下味用)2g(小さじ1/3)
- 黄酒または日本酒10ml(小さじ2)
- 白胡椒0.5g(小さじ1/4)
- 卵白1/2個分(約18g)
- 片栗粉8g(大さじ1弱)
スープ
- 貴州紅酸湯(市販の紅酸湯ベース)150g
- 水600ml
- トマト中1個・くし形切り150g
- 生姜薄切り15g
- にんにく粗みじん切り20g
- 葉にんにく3cm幅の斜め切り20g
- 菜種油またはサラダ油20ml(大さじ1と1/3)
- 米酢8ml(小さじ1と1/2)
- 木姜子油(山胡椒油)3ml(小さじ1/2強)
- 塩(スープ用)5g(小さじ1)
具材
- 木綿豆腐2cm角に切る200g
- 生椎茸薄切り60g(4個)
- もやし100g
- 香菜3cm幅に切る15g
蘸水(つけダレ)
作り方
白身魚は3〜5mm厚さのそぎ切りにする。塩2g・黄酒10ml・白胡椒0.5gを揉み込み、卵白1/2個分・片栗粉8gの順に加えて和え、15分置く。
蘸水を作る。紅腐乳20gをスプーンの背で潰し、小米辣5g・にんにく5g・香菜5g・生抽5ml・木姜子油2mlを混ぜて器に取り分けておく(工程6でスープ30mlを加えて溶きのばす)。
鍋に菜種油20mlを入れて中火にかけ、生姜15g・にんにく20gを30秒炒めて香りを立てる。
トマト150gを加え、中火で3分、角が崩れて汁気が出るまで炒める。
紅酸湯150gを加え、弱めの中火で1分、焦がさないように炒めて酸味の角を取る。
水600mlを注いで強火で沸騰させ、中火に落として5分煮る。塩5g・米酢8mlを加え、蘸水の器にこのスープを30ml取り分けて溶きのばす。
木綿豆腐200g・生椎茸60gを加え、中火で3分煮る。
もやし100gを加え、さらに1分煮る。
火を弱め、スープが静かに揺れる程度(強く沸騰させない)にしてから、下味をつけた魚を1枚ずつ広げ入れる。触らずに2〜3分、身が白く不透明になるまで加熱する。
葉にんにく20gを加えてひと煮立ちさせて火を止め、木姜子油3mlを回しかけ、香菜15gを散らす。魚は蘸水につけながら食べる。
本場と日本の違い
- 酸味の正体が「発酵」であること:四川・重慶の酸菜魚の酸味が漬け青菜(酸菜)の乳酸発酵に由来するのに対し、酸湯魚の酸味はトマトと唐辛子を5〜6か月かけて発酵させた紅酸湯、あるいはもち米の米湯を発酵させた白酸湯に由来する。日本の店では酢やトマトで手早く酸味を出したものが「酸湯」として出てくることも多いが、本場の酸味は角がなく、うま味を伴った丸い酸味になる。
- 花椒を使わない:酸菜魚が花椒の痺れ(麻)で味の輪郭を作るのに対し、貴州の酸湯魚に花椒はほぼ入らない。代わりに木姜子油のレモンに似た香りが酸味を持ち上げる。この数滴の有無が本場らしさを大きく左右する。
- 魚の使い方:本場は鯉・草魚・黒魚などの淡水魚を丸ごと、あるいはぶつ切りにし、頭とアラも一緒に煮てスープに厚みを出す。日本の店では切り身だけで作られることが多く、スープのコクが軽くなる。
- 蘸水(つけダレ)が前提:本場では鍋から取り出した魚を、腐乳・唐辛子・香菜を合わせた蘸水につけて食べる。塩気と辛さは蘸水側で足す設計なので、スープそのものの塩味は日本の店で出るものより穏やかに作る。
参考ページ(写真)
下厨房の「贵州人教你玩转正宗贵州凯里红酸 酸汤鱼&酸辣烫&酸汤肉圆&酸汤面」レシピページに、紅酸湯を使った酸湯魚の手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106066893/
代用可能な食材
- 貴州紅酸湯→入手できない場合は、トマトピューレ100g+完熟トマトのすりおろし100g+米酢15ml+粗挽き唐辛子5gを合わせて代用する(発酵由来の深みは出ないが、酸味と色は本場に近づく)
- 木姜子油(山胡椒油)→乾燥レモングラス1gを油10mlに弱火で3分ひたして漉したもの+レモンの皮のすりおろし0.5g。木姜子の主な香気成分は柠檬醛(シトラール)でレモングラスと共通するため、香りの方向性が近い
- 白身魚→鯉・草魚・黒魚が手に入らない場合はタラ・すずき・バサ魚(パンガシウス)で代用可
- 葉にんにく→青ネギの青い部分またはニラ
- 紅腐乳→白い腐乳+粗挽き唐辛子1gで代用可
保存・アレンジのコツ
- 工程3〜6までのスープだけを作り置きしておくと便利。冷蔵で3日、冷凍で1か月もつ。魚と具材は食べる直前に入れる。
- 本場では〆に「酸湯麺(酸汤面)」にするのが定番。残ったスープに中華麺を入れ、木姜子油を数滴落とすだけでよい。
- 具材は豆腐・もやし・椎茸のほか、こんにゃく・湯葉・青菜を足しても本場の食べ方から外れない。
出典
- 中国非物質文化遺産網「凯里酸汤鱼制作技艺」
- 中文維基百科「酸汤鱼」
- 光明網「贵州酸汤鱼:山水酿酸,一口生津」
- 下厨房「贵州人教你玩转正宗贵州凯里红酸 酸汤鱼&酸辣烫&酸汤肉圆&酸汤面(超详细get④种)▎铸铁锅」レシピ
- 下厨房「【换个口味吃鱼】超简单的 苗家酸汤鱼 番茄酸微辣」レシピ
- 美食天下「贵州酸汤鱼」レシピ
- 果殻網「躲过了香菜和鱼腥草,却遇到了木姜子……」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。