貴州料理・黔菜花溪牛肉粉

花渓牛肉粉(花溪牛肉粉)レシピ本場貴州・貴陽の配合を徹底解説

青い縁の白い器の幅広米粉に、角切り牛肉の煮込みと刻みねぎ、香菜をのせた花渓牛肉粉のイラスト
地域
黔菜(貴州・貴陽)
分量
2人分
公開

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貴陽で牛肉粉の店に入ると、注文の前に必ずこう聞かれる。「宽的还是细的(幅広か、細いか)」。貴州の人にとって米粉は太さを選ぶものであり、花渓牛肉粉といえば、つるりと厚みのある幅広の米粉が定番だ。

貴陽の牛肉粉そのものの起源は清代まで遡るとされるが、「花溪牛肉粉」の名を掲げた店が現れたのは1970年代末のこと。1976年、貴陽市花溪区の十字街に一軒の牛肉粉の屋台が立った。これが後の名店「花溪王記牛肉粉」の前身であり、王家の老夫婦が切り盛りしていたと伝えられる。彼らが守ったのは二つの掟だった。牛肉は隣接する恵水県産の黄牛、それも四百斤(約200kg)を超える成牛だけを使うこと。そして米粉は地元の米を水に浸して挽き、蒸して作る「蒸汽米粉」で、でんぷんを一切混ぜないこと。

花渓公園という景勝地と貴州大学のすぐそばという立地も味方した。観光客と学生が持ち帰った評判は数十年で省外の大都市へ、さらには海を越えて広がり、2025年5月には米粉・牛肉・スープ・煳辣椒(焦がし唐辛子)・酸菜の規格を定めた団体標準まで制定されている。

同じ米粉料理でも、広西の老友粉・桂林米粉・螺蛳粉が酸笋(発酵筍)の強烈な酸味を軸にするのに対し、花渓牛肉粉の主役はあくまで黄牛と牛骨から引いた澄んだスープ。酸味と辛味は、添えられた酸菜と、卓上で自分好みに調える「蘸水(つけダレ)」が担う。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分)

スープと牛肉

盛り付け

  • 干燥米粉(幅広タイプの乾燥米粉)200g
  • 酸菜(酸莲花白=キャベツの漬物)60g
  • 香菜(パクチー)10g
  • 万能ねぎ小口切り10g

蘸水(つけダレ・2皿分)

  • 朝天椒(乾燥唐辛子・糊辣椒用)6g
  • 生抽20ml
  • 塩2g(小さじ1/3)
  • 砂糖2g(小さじ2/3)
  • 万能ねぎみじん切り10g
  • 仕上げに加えるスープ30ml(大さじ2)

作り方

  1. 幅広の乾燥米粉200gを、たっぷりの常温の水に2時間浸して戻しておく。

  2. 牛すね肉400gを4〜5cm角の大きな塊に切る。鍋に牛肉とかぶるくらいの冷水を入れて強火にかけ、沸騰してから3分茹でて血の泡を出し、湯を捨てて温水で洗う。

  3. 牛脂30gを小さく切り、フライパンに入れて弱火で5分ほど加熱し、脂を溶かし出す(残ったかすは取り除く)。

  4. 八角2g・桂皮3g・ローリエ1g・草果3g・花椒2g・小茴香2g・白豆蔻2g・甘草1g・陳皮2g・乾燥唐辛子2gを、お茶パックまたはガーゼ袋にまとめる。

  5. 鍋に2の牛肉、水1400ml、生姜20g、長ねぎ30g、黄酒30ml、3の溶かした牛脂、4の香辛料袋を入れる。強火で沸騰させたらごく弱火に落とし、ふたをずらして2時間30分煮込む。

  6. 牛肉を取り出す。半量(約200g)は繊維を断つように厚さ2mmの薄切りにし、残り半量は1.5cm角に切る。角切りにした分だけを鍋に戻し、さらに弱火で30分煮る。

  7. 香辛料袋・生姜・長ねぎを取り出してスープを漉し、塩6gを加えて味を調える。この時点でスープは約800mlになっている(煮詰まりすぎた場合は湯を足して800mlにする)。

  8. 酸菜60gを1cm幅に刻み、水気を軽く絞っておく。

  9. 蘸水を作る。乾燥唐辛子6gをフライパンで油を引かずに弱火で2分ほど乾煎りし、表面が焦げ茶色になったら取り出して粗く砕く(これが糊辣椒)。小皿2枚に等分し、生抽20ml・塩2g・砂糖2g・万能ねぎのみじん切り10gを分け入れて混ぜる。

  10. 戻した米粉を沸騰した湯で10分ゆで、冷水にさっとさらして水気を切る。食べる直前に沸騰した湯へ1分くぐらせて温め直す。

  11. 器に米粉を等分に盛り、6の牛肉の薄切りと角切りをのせ、酸菜・香菜・万能ねぎを散らす。熱々のスープを1杯につき400mlずつ注ぐ。

  12. 蘸水の小皿にスープを大さじ1(15ml)ずつ注いで溶きのばし、牛肉をつけながら食べる。

本場と日本の違い

  • 本場の花渓牛肉粉は「清湯(澄んだスープ)」が基本で、器の中の味付けは意図的に控えめ。辛さや酸味は食べる人が蘸水で自分好みに足していく、という前提の設計になっている。日本の中華料理店で出てくる牛肉麺のように、最初から濃い味がついているわけではない。
  • 米粉は幅広が本流。花渓の老舗は地元米を挽いて蒸した「蒸汽米粉」を使い、でんぷんを混ぜないことを守っている。日本で手に入る細いビーフンで作ると別物になるため、幅広タイプを探すのが本場に近づく最短ルート。
  • 牛肉は薄切りと角切りの2種類を同じ器にのせるのが花渓式。薄切りは香辛料で煮た味の乗った部分、角切りは長く煮込んでほろりと崩れる部分で、食感の対比が生まれる。
  • 貴陽の店では蘸水に折耳根(ドクダミの根)を刻んで入れるのが定番。独特の青い香りが貴州らしさの決め手だが、日本ではまず手に入らない。
  • 広西の老友粉・桂林米粉・螺蛳粉が酸笋の発酵臭を看板にするのに対し、花渓牛肉粉は牛骨と黄牛肉の出汁が主役。同じ「米粉料理」でも設計思想がまったく違う。

参考ページ(写真)

下厨房の「贵州花溪牛肉粉配方做法」レシピページに、牛肉の切り分けと盛り付けの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/100119563/

代用可能な食材

  • 幅広の乾燥米粉→平麺ビーフンのクイッティオ、ベトナムのフォー用平打ち麺、またはきしめん(食感は異なる)
  • 酸菜(酸莲花白)→ザワークラウト、または白菜漬けを水洗いして使う
  • 牛脂→なければ牛すね肉から出る脂で代用可(風味はやや軽くなる)
  • 折耳根→日本では入手困難。三つ葉やセロリの葉を刻んで加えると、青い香りの方向性だけは近づく
  • 草果・白豆蔻・甘草→揃わない場合は八角・桂皮・小茴香の3種だけでも成立する
  • 糊辣椒→市販の粗挽き唐辛子をフライパンで乾煎りして代用可

保存・アレンジのコツ

  • スープと煮込んだ牛肉は、香辛料袋を取り除いた状態で冷蔵3日・冷凍1か月が目安。米粉は都度ゆでるほうが食感が良いので、スープと牛肉だけを作り置きするのが合理的。
  • スープを一度冷やすと表面に牛脂の層ができる。これをすくって別に取っておき、盛り付け時に小さじ1ほど落とすと香りが立つ。
  • 蘸水は糊辣椒の量を増減するだけで辛さを自在に調整できる。家族で辛さの好みが分かれる場合は、器ではなく蘸水で調整すると全員が満足する。
  • 残ったスープと牛肉は、米粉の代わりにうどんや中華麺を合わせてもよい。貴陽では牛肉粉のスープで炊いた「牛肉炒粉」風のアレンジも一般的。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。