湖北料理・鄂菜潜江油焖大虾

潜江油燜小龍蝦(潜江油焖大虾)レシピ本場湖北の配合を徹底解説

大きな鍋に真っ赤なザリガニを山盛りにし、乾燥唐辛子と花椒、八角を散らした潜江油燜小龍蝦のイラスト
地域
湖北(潜江)
分量
2人分・目安
公開

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湖北省潜江市。中国のザリガニ料理といえばこの街の名を思い浮かべる人が多いほど、潜江は「小龍蝦の都」として知られている。その看板料理が油燜大虾(油燜小龍蝦)だ。大量の油でザリガニをじっくり炒め煮にし、殻ごと真っ赤に染め上げる、見た目も香りも豪快な一皿である。

誕生の経緯は驚くほど具体的に伝わっている。1996年、潜江市周磯鎮の五七大道で、李代軍という青年が妻とともに小さな食堂を開いた。当初の看板メニューは油焗鶏(鶏の醤油炒め煮)で、ザリガニはまだ農家に嫌われる「害虫」扱いだった。李代軍は殻をむいてエビ身だけを炒める料理を試していたが、転機が訪れたのは1998年のこと。遊んでいた子どもが虾の殻を踏み割り、中の虾黄(味噌の部分)がこぼれ出た。それを見た妻が「こんな栄養のあるものを無駄にするなんて」と口にしたことが、李代軍の閃きを引き出したという。彼は殻付きのままのザリガニを油焗鶏の鍋にそのまま投げ込んでみた。すると殻から染み出す旨みと香辛料が絡み合い、「これは驚くほどうまい」という一皿が生まれた。

店の名は「小李子油焖大虾」。五七大道にあったことから「五七油焖大虾」とも呼ばれ、毎年5月から9月のシーズンには武漢や荊州、仙桃からもわざわざ食べに来る客で賑わったという。ここから潜江の小龍蝦産業は百億元規模にまで成長し、油燜大虾は湖北を代表するガチ中華として全国に知られるようになった。

ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分・目安)

メイン

  • 小龍蝦(クロザリガニ)殻ごと。腹をブラシでよく洗い、頭部の砂袋と背わたを除いたもの600g

香味・香辛料

  • 生姜薄切り8枚20g
  • にんにく皮をむいて丸のまま、または半分に割る60g
  • 乾燥赤唐辛子6本
  • 花椒小さじ1
  • 八角2個
  • 桂皮1片
  • 丁香3粒
  • 陳皮1片
  • 長ねぎ(青い部分)ぶつ切り1本分

調味料

  • 食用油多めに使うのが本場流100ml
  • 郫県豆瓣醤大さじ1.5
  • 甜面醤大さじ1
  • ビール1缶350ml
  • 生抽大さじ1
  • 老抽色づけ用小さじ1
  • 砂糖大さじ1
  • 塩小さじ1/2
  • 香醋仕上げ用小さじ2
  • 香菜散らす用5g

作り方

  1. 下ごしらえ。小龍蝦は腹側を歯ブラシなどでよくこすり洗いする。頭部の付け根を軽くひねって頭の中の砂袋(虾胃)を取り除き、尾の中央のひれをひねって背わた(虾線)を引き抜く。流水でもう一度洗い、水気をきる。

  2. 香味油を作る。鍋に油100mlを中火で熱し、7割ほど熱くなったら生姜、にんにく、八角、桂皮、丁香、陳皮、乾燥唐辛子、花椒を加えて香りが立つまで1〜2分炒める。

  3. 醤を炒める。郫県豆瓣醤と甜面醤を加え、油に赤い色と香りが移るまで炒め合わせる。

  4. ザリガニを炒める。小龍蝦を加え、殻全体が鮮やかな赤色になるまで中火で3〜4分しっかり炒める。

  5. 煮込む。生抽、老抽、砂糖、塩を加えて絡め、ビールを注ぐ。強火で沸かしたら蓋をして中火に落とし、8〜10分煮込む。

  6. 煮詰める。蓋を開けて強火にし、汁気を煮詰めながら1〜2分炒め合わせる。

  7. 仕上げ。火を弱め、香醋を回しかけて1分だけ絡め、長ねぎと香菜を散らして火を止める。

  8. 大皿に盛り、殻ごと手で持って吸うようにして食べる。

本場と日本の違い

  • 「焜(メン)」は油で蒸し焼きにする調理法。 単なる煮込みではなく、多めの油でザリガニを覆うようにして火を通すのが本場の「油燜」。油の量を控えめにすると、殻に香辛料の香りが絡みにくくなる。
  • 豆瓣醤と甜面醤の両方を使う。 辛味とコクを豆瓣醤が、まろやかな甘みを甜面醤が担う。豆瓣醤だけだと味が単調な辛さに寄りがちである。
  • 殻ごと豪快に食べる。 日本のエビ料理のように殻をむいて出すのではなく、殻付きのまま真っ赤に炒め煮にし、手で持って吸いながら食べるのが本場のスタイル。手を汚しながら食べる豪快さそのものが料理の魅力である。
  • 旬は初夏から初秋。 潜江では5月から9月が最盛期で、この時期に武漢や周辺都市からも客が集まる。一年中出回る日本の冷凍エビ料理とは季節感が異なる。
  • 意外にも比較的新しい料理。 誕生は1998年とされ、百年以上の歴史を持つ他の郷土料理とは違い、一人の料理人の思いつきから全国区の名物にまで成長した点が特徴的である。

参考ページ(写真)

下厨房の「潜江油焖大虾」レシピページには、ザリガニの下処理から油で炒め、ビールを加えて煮込むまでの手順写真が掲載されている。 https://m.xiachufang.com/recipe/103903613/

代用可能な食材

  • 小龍蝦(クロザリガニ)→殻付きバナメイエビ600g(食感と旨みの方向性は変わるが、色合い・調味は近づけられる)
  • 甜面醤→味噌大さじ1/2に砂糖小さじ1を混ぜたもので代用可
  • ビール→水350mlに料理酒大さじ1を加えたもの(香りの華やかさはやや落ちる)
  • 陳皮→みかんの皮(無農薬)を軽く乾燥させたもので代用可
  • 香醋→米酢小さじ2に砂糖ひとつまみを溶かしたもの

保存・アレンジのコツ

  • 煮汁を多めに残しておくと、翌日は麺やご飯にかけて「虾油拌面」風にアレンジできる。
  • 辛さを強めたい場合は乾燥唐辛子を増やすほか、仕上げに辣椒油を少量加える現地の店も多い。
  • 冷めると脂が固まりやすいので、食べる直前まで弱火にかけておくか、食卓に固形燃料コンロを置いて温かいまま取り分けるのが本場のスタイルである。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。