北京天津料理・京津菜卤煮火烧

卤煮火焼レシピ本場北京の配合を徹底解説

濃い茶色の煮汁に輪切りの豚の腸、揚げ豆腐、角切りの具を入れ、香菜をのせた卤煮火焼のイラスト
地域
京津(北京)
分量
4人分
公開

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皇帝の食卓に上った豚バラの煮込みが、庶民の手で「豚の腸と肺の煮込み」に生まれ変わった——北京の下町料理・卤煮火焼(ルージューフオシャオ)の由来は、そんな格差の物語だ。

源流とされるのは、清代の宮廷料理「蘇造肉」。1780年、乾隆帝の南巡に仕えた料理人・張東官が作った豚バラの香料煮込みが皇帝に気に入られ、宮廷の味になったとされる(場所は蘇州とも揚州とも伝わる)。光緒年間には、河北・三河県の趙という人物と陳兆恩が蘇造肉を売り、その孫の陳玉田がのちに老舗「小腸陳」の名で知られるようになる。ところが豚バラで作る蘇造肉は高価で、庶民には手が出ない。そこで豚の頭肉や内臓で代用したところ評判を呼び、今の卤煮火焼になったという。

名前の「火焼」は小麦粉の焼きパンのこと。豚の小腸・肺・豚バラ・揚げ豆腐を香料の効いた老湯で煮込み、最後に火焼も同じ鍋で煮る。器に盛るときは、火焼を「井」の字に切り、豆腐は三角に、腸と肺は一口大に。熱い煮汁をかけ、にんにく汁・腐乳の汁・ラー油・韭菜花・香菜は、食べる人が自分で足す。「火焼はスープを吸っても粘らず、肉は柔らかくても崩れない」のが良い卤煮の条件とされる。

京津(北京)の屋台料理の中でも、内臓料理の代表格。日本ではまず見かけない一杯だが、パンを煮込む発想は意外と家庭でも再現しやすい。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、本場の分量と手順を公開する。

本場の配合

材料(4人分)

主材料

  • 豚小腸(下処理済みのボイル品)400g
  • 豚肺300g
  • 豚バラ肉(ブロック)300g
  • 木綿豆腐300g
  • 揚げ油(豆腐用)500ml

下処理・下ゆで

  • 小麦粉(小腸のもみ洗い用)30g
  • 酢(小腸のもみ洗い用)30ml
  • 水(下ゆで用)2000ml
  • 白酒(中国の蒸留酒)30ml
  • 生姜(薄切り)10g
  • 長ねぎ(青い部分)20g

香料

  • 八角2個(5g)
  • 桂皮3g
  • 香葉(ローリエ)3枚(1g)
  • 花椒1g(約20粒)
  • 乾燥唐辛子2本
  • 白芷2片(2g)

煮込みの調味料

火焼(4個分)

  • 中力粉300g
  • 熱湯100ml
  • 水80ml

仕上げ(4杯分)

作り方

  1. 小腸をボウルに入れ、小麦粉30gと酢30mlをまぶして2分もみ洗いし、流水で内側・外側ともよくすすぐ。これを2回繰り返す。肺は水を2〜3回替えながら洗い、血をしっかり抜く。

  2. 鍋に下ゆで用の水2000ml・白酒30ml・生姜10g・長ねぎ20gを入れて沸かし、小腸を入れて強火で20分ゆでる。残り10分のところで肺と豚バラ肉も加える。すべてざるに上げ、ぬるま湯でアクを洗い流す。

  3. 豆腐を厚さ2cm・5cm角に切り、キッチンペーパーで水気を拭く。揚げ油500mlを180℃に熱し、豆腐を5〜6分、表面が金色になるまで揚げる。

  4. 火焼を作る。中力粉300gに熱湯100mlを回しかけて菜箸で混ぜ、粗熱が取れたら水80mlを加えてなめらかになるまでこねる。ラップをかけて1時間休ませる。

  5. 生地を4等分して丸め、直径12cm・厚さ1cmの円盤にのばす。油をひかないフライパンで、弱めの中火で片面4分ずつ焼き、両面に焼き色をつける。

  6. 煮込み鍋にサラダ油15mlを入れて弱火にかけ、郫県豆瓣醤10gと豆豉5gを1分炒めて赤い油を出す。長ねぎ・生姜・香料をすべて加えて30秒炒め、黄醤30gを加えてさらに30秒炒める。

  7. 水2500mlを注ぎ、生抽40ml・腐乳の汁30ml・氷砂糖15g・酢20ml・塩3gを加える。2の小腸・肺・豚バラ肉を入れて強火で沸かし、浮いてきたアクを丁寧にすくう。ふたを少しずらして弱火で60分煮る。小腸に竹串がすっと通ればよい。

  8. 3の揚げ豆腐と5の火焼を丸ごと加え、弱火でさらに30分煮る。火焼に煮汁がしみて、しっとり柔らかくなれば煮上がり。

  9. にんにく20gに水20mlを加えて混ぜ、にんにく汁を作る。

  10. 盛りつける。火焼は包丁で縦横2本ずつ「井」の字に切り込みを入れて9つに切り分け、豆腐は三角に切る。小腸は2cm幅、肺は一口大、豚バラ肉は厚さ5mmに切る。

  11. 1人分ずつ器に火焼・豆腐・内臓・豚バラ肉を盛り、熱い煮汁を150mlずつかける。1杯につき、にんにく汁10ml・腐乳の汁5ml・辣椒油5ml・韭菜花5g・陳醋5mlをのせ、香菜を散らす。

本場と日本の違い

  • パンは添えるのではなく「一緒に煮る」。 卤煮火焼の火焼は、熱湯でこねた生地(烫面)を焼いたもので、煮込みの最後に同じ鍋で煮る。スープを吸っても崩れにくいのは、この生地のおかげ。
  • 主役は腸と肺。 日本のもつ煮とは違い、北京の卤煮は小腸と肺が主役で、豚バラと揚げ豆腐が脇を固める。豚肺は日本ではほとんど流通しないため、再現のいちばんの壁になる。
  • 宮廷の「蘇造肉」が原型。 もともとは豚バラの煮込みで、それを内臓で代用したのが始まりとされる。本場のレシピに豚バラ肉が今も入るのは、その名残といえる。
  • 仕上げの味は食べる人が決める。 煮汁の味は控えめにしておき、にんにく汁・腐乳の汁・ラー油・韭菜花・香菜・酢を器ごとに足して完成させる。
  • 煮込みの香りは複雑。 本場の配合では八角・桂皮・香葉・花椒・白芷のほか、砂仁・肉豆蔲(ナツメグ)・沙姜まで加えるものもある。

参考ページ(写真)

美食天下の「卤煮火烧」レシピページに、内臓の下処理から火焼の焼き方、盛りつけまでの手順写真が掲載されています。

(https://home.meishichina.com/recipe-533458.html)

代用可能な食材

  • 豚肺:入手できなければ豚ハツ300gで代用可(食感は硬めになる)。豚ガツ(胃)でもよい
  • 豚小腸:下処理済みのボイルホルモン(豚シロ)で代用可
  • 白酒:焼酎で代用可
  • 白芷:省いてもよい。その場合は下ゆでの生姜を5g増やす
  • 黄醤:赤味噌で代用可
  • 郫県豆瓣醤:一般的な豆板醤で代用可
  • 腐乳の汁:腐乳10gを水20mlでのばしたもので代用可。腐乳がなければ白味噌で代用可(発酵香は弱くなる)
  • 韭菜花:刻んだニラ20gに塩1gを混ぜたもので代用可(風味は異なる)

保存・アレンジのコツ

  • 煮汁と具は冷蔵で3日保存できる。火焼は煮汁に入れたままにすると崩れるので、食べる分だけ温め直すときに加えて10分煮る
  • 残った煮汁は老湯として取っておき、次回は水の半量を煮汁に替えると味に深みが出る
  • 下厨房の家庭レシピには、芝麻醤を腐乳と煮汁でのばしたたれを仕上げにかけるものも多い。芝麻醤15gを腐乳の汁10ml・煮汁15mlで溶いて1杯分にするとよい
  • 内臓が苦手な場合は、豚バラ肉を600gに増やして小腸・肺を省けば、原型の「蘇造肉」に近い味わいになる

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。