北京天津料理・京津菜卤煮火烧
卤煮火焼レシピ本場北京の配合を徹底解説

この記事はAmazonアソシエイトのリンクを含みます。
皇帝の食卓に上った豚バラの煮込みが、庶民の手で「豚の腸と肺の煮込み」に生まれ変わった——北京の下町料理・卤煮火焼(ルージューフオシャオ)の由来は、そんな格差の物語だ。
源流とされるのは、清代の宮廷料理「蘇造肉」。1780年、乾隆帝の南巡に仕えた料理人・張東官が作った豚バラの香料煮込みが皇帝に気に入られ、宮廷の味になったとされる(場所は蘇州とも揚州とも伝わる)。光緒年間には、河北・三河県の趙という人物と陳兆恩が蘇造肉を売り、その孫の陳玉田がのちに老舗「小腸陳」の名で知られるようになる。ところが豚バラで作る蘇造肉は高価で、庶民には手が出ない。そこで豚の頭肉や内臓で代用したところ評判を呼び、今の卤煮火焼になったという。
名前の「火焼」は小麦粉の焼きパンのこと。豚の小腸・肺・豚バラ・揚げ豆腐を香料の効いた老湯で煮込み、最後に火焼も同じ鍋で煮る。器に盛るときは、火焼を「井」の字に切り、豆腐は三角に、腸と肺は一口大に。熱い煮汁をかけ、にんにく汁・腐乳の汁・ラー油・韭菜花・香菜は、食べる人が自分で足す。「火焼はスープを吸っても粘らず、肉は柔らかくても崩れない」のが良い卤煮の条件とされる。
京津(北京)の屋台料理の中でも、内臓料理の代表格。日本ではまず見かけない一杯だが、パンを煮込む発想は意外と家庭でも再現しやすい。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、本場の分量と手順を公開する。
本場の配合
材料(4人分)
主材料
- 豚小腸(下処理済みのボイル品)400g
- 豚肺300g
- 豚バラ肉(ブロック)300g
- 木綿豆腐300g
- 揚げ油(豆腐用)500ml
下処理・下ゆで
- 小麦粉(小腸のもみ洗い用)30g
- 酢(小腸のもみ洗い用)30ml
- 水(下ゆで用)2000ml
- 白酒(中国の蒸留酒)30ml
- 生姜(薄切り)10g
- 長ねぎ(青い部分)20g
香料
煮込みの調味料
火焼(4個分)
- 中力粉300g
- 熱湯100ml
- 水80ml
仕上げ(4杯分)
作り方
小腸をボウルに入れ、小麦粉30gと酢30mlをまぶして2分もみ洗いし、流水で内側・外側ともよくすすぐ。これを2回繰り返す。肺は水を2〜3回替えながら洗い、血をしっかり抜く。
鍋に下ゆで用の水2000ml・白酒30ml・生姜10g・長ねぎ20gを入れて沸かし、小腸を入れて強火で20分ゆでる。残り10分のところで肺と豚バラ肉も加える。すべてざるに上げ、ぬるま湯でアクを洗い流す。
豆腐を厚さ2cm・5cm角に切り、キッチンペーパーで水気を拭く。揚げ油500mlを180℃に熱し、豆腐を5〜6分、表面が金色になるまで揚げる。
火焼を作る。中力粉300gに熱湯100mlを回しかけて菜箸で混ぜ、粗熱が取れたら水80mlを加えてなめらかになるまでこねる。ラップをかけて1時間休ませる。
生地を4等分して丸め、直径12cm・厚さ1cmの円盤にのばす。油をひかないフライパンで、弱めの中火で片面4分ずつ焼き、両面に焼き色をつける。
煮込み鍋にサラダ油15mlを入れて弱火にかけ、郫県豆瓣醤10gと豆豉5gを1分炒めて赤い油を出す。長ねぎ・生姜・香料をすべて加えて30秒炒め、黄醤30gを加えてさらに30秒炒める。
水2500mlを注ぎ、生抽40ml・腐乳の汁30ml・氷砂糖15g・酢20ml・塩3gを加える。2の小腸・肺・豚バラ肉を入れて強火で沸かし、浮いてきたアクを丁寧にすくう。ふたを少しずらして弱火で60分煮る。小腸に竹串がすっと通ればよい。
3の揚げ豆腐と5の火焼を丸ごと加え、弱火でさらに30分煮る。火焼に煮汁がしみて、しっとり柔らかくなれば煮上がり。
にんにく20gに水20mlを加えて混ぜ、にんにく汁を作る。
盛りつける。火焼は包丁で縦横2本ずつ「井」の字に切り込みを入れて9つに切り分け、豆腐は三角に切る。小腸は2cm幅、肺は一口大、豚バラ肉は厚さ5mmに切る。
1人分ずつ器に火焼・豆腐・内臓・豚バラ肉を盛り、熱い煮汁を150mlずつかける。1杯につき、にんにく汁10ml・腐乳の汁5ml・辣椒油5ml・韭菜花5g・陳醋5mlをのせ、香菜を散らす。
本場と日本の違い
- パンは添えるのではなく「一緒に煮る」。 卤煮火焼の火焼は、熱湯でこねた生地(烫面)を焼いたもので、煮込みの最後に同じ鍋で煮る。スープを吸っても崩れにくいのは、この生地のおかげ。
- 主役は腸と肺。 日本のもつ煮とは違い、北京の卤煮は小腸と肺が主役で、豚バラと揚げ豆腐が脇を固める。豚肺は日本ではほとんど流通しないため、再現のいちばんの壁になる。
- 宮廷の「蘇造肉」が原型。 もともとは豚バラの煮込みで、それを内臓で代用したのが始まりとされる。本場のレシピに豚バラ肉が今も入るのは、その名残といえる。
- 仕上げの味は食べる人が決める。 煮汁の味は控えめにしておき、にんにく汁・腐乳の汁・ラー油・韭菜花・香菜・酢を器ごとに足して完成させる。
- 煮込みの香りは複雑。 本場の配合では八角・桂皮・香葉・花椒・白芷のほか、砂仁・肉豆蔲(ナツメグ)・沙姜まで加えるものもある。
参考ページ(写真)
美食天下の「卤煮火烧」レシピページに、内臓の下処理から火焼の焼き方、盛りつけまでの手順写真が掲載されています。
(https://home.meishichina.com/recipe-533458.html)
代用可能な食材
- 豚肺:入手できなければ豚ハツ300gで代用可(食感は硬めになる)。豚ガツ(胃)でもよい
- 豚小腸:下処理済みのボイルホルモン(豚シロ)で代用可
- 白酒:焼酎で代用可
- 白芷:省いてもよい。その場合は下ゆでの生姜を5g増やす
- 黄醤:赤味噌で代用可
- 郫県豆瓣醤:一般的な豆板醤で代用可
- 腐乳の汁:腐乳10gを水20mlでのばしたもので代用可。腐乳がなければ白味噌で代用可(発酵香は弱くなる)
- 韭菜花:刻んだニラ20gに塩1gを混ぜたもので代用可(風味は異なる)
保存・アレンジのコツ
- 煮汁と具は冷蔵で3日保存できる。火焼は煮汁に入れたままにすると崩れるので、食べる分だけ温め直すときに加えて10分煮る
- 残った煮汁は老湯として取っておき、次回は水の半量を煮汁に替えると味に深みが出る
- 下厨房の家庭レシピには、芝麻醤を腐乳と煮汁でのばしたたれを仕上げにかけるものも多い。芝麻醤15gを腐乳の汁10ml・煮汁15mlで溶いて1杯分にするとよい
- 内臓が苦手な場合は、豚バラ肉を600gに増やして小腸・肺を省けば、原型の「蘇造肉」に近い味わいになる
出典
- 維基百科「卤煮火烧」
- 牛頓百科「滷煮火燒」
- 牛頓百科「滷煮小腸」
- 美食天下「卤煮火烧」レシピ
- 中国新聞網「卤煮火烧的老家在南方:卤煮法实脱胎于“苏造肉”」
- 北京小腸陳餐飲有限責任公司「歴史回顧」
- 北京旅游網「老号名店——小肠陈」
- 下厨房「老北京卤煮火烧」
- 下厨房「卤煮火烧」
本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。