北京天津料理・京津菜煎饼馃子

煎餅果子(煎饼馃子)レシピ本場天津の配合を徹底解説

卵と青ねぎ、香菜をのせた薄い生地で揚げ物を包んだ煎餅果子のイラスト
地域
京津(天津)
分量
2人分・直径26cmを2枚
公開

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天津には「煎餅果子に入れてはいけないもの」のリストがある。レタス、ハム、チキン、辣条——どれも中国の他都市では当たり前に挟まれているのに、天津の店では出てこない。それどころか2018年5月、天津市餐飲行業協会は煎餅果子の団体標準(技術規範)を発表し、薄く焼くクレープの直径を38〜45cm、主原料を緑豆粉・粟粉・鶏卵・小麦粉、副材料を面醤・葱・辣醤・腐乳・ごまと定めてしまった。屋台の朝食に、直径の下限が決められているのである。

そこまで守ろうとするのは、これが天津の街の記憶そのものだからだ。煎餅果子と鍋巴菜は百年余り前に山東から伝わった煎餅が天津で作り替えられたもので、1942年の記録には「緑豆を挽いて汁にし、薄い餅に広げ、中に小海老と葱を混ぜ、平鍋で焼き、馃子で包む」と、ほぼ現在と同じ手順が残っている。2017年6月には「徳禄斎煎餅馃子制作技芸」など3件が天津市第四批市級無形文化遺産に登録された。

要は緑豆粉のクレープに卵を割り落とし、甜面醤と腐乳を塗り、揚げたてのパリパリを巻く。それだけの料理だ。だが緑豆粉はグルテンが乏しく破れやすく、薄く広げるには技術が要る。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分・直径26cmを2枚)

煎餅の生地(面糊)

  • 緑豆粉60g
  • 中力粉40g
  • 水190ml

馃箅儿(グオビール/薄いパリパリの揚げ生地)2枚分

  • 薄力粉50g
  • 塩0.5g(小さじ1/10)
  • ベーキングパウダー0.5g(小さじ1/8)
  • 水28ml
  • 生地に練り込むサラダ油5ml(小さじ1)
  • 打ち粉用の薄力粉5g
  • 揚げ油400ml

面醤(甜面醤だれ)

  • 甜面醤30g
  • サラダ油10ml(小さじ2)
  • 水20ml

腐乳汁(腐乳だれ)

具・仕上げ

  • 卵2個
  • 万能ねぎ小口切り15g
  • 白いりごま4g
  • 辣椒油10ml(小さじ2)
  • 焼き油6ml(小さじ1と1/5)

作り方

馃箅儿を揚げる(約50分/うち休ませ30分)

  1. ボウルに薄力粉50g・塩0.5g・ベーキングパウダー0.5gを入れて混ぜ、水28mlを2回に分けて加えて箸で混ぜる。ひとまとまりになったらサラダ油5mlを加え、3分こねてなめらかにする。耳たぶより硬い、餃子の皮の生地くらいの硬さが目安。ラップで包み常温で30分休ませる。

  2. 生地を2等分し、打ち粉用の薄力粉5gを台とめん棒に振って、厚さ1mm・15cm×20cmの長方形に伸ばす。薄いほどよい。中央に長さ8cmの切り込みを縦に5本入れる(揚げたときに反り返らず、平らに仕上がる)。

  3. 鍋に揚げ油400mlを入れ、170〜180℃に熱する。生地の切れ端を落として、すぐ浮いてくるが色は変わらない温度が目安。生地を1枚ずつ入れ、片面20〜30秒ずつ、全体がきつね色になるまで揚げる。網に上げて油を切る。焼く直前に揚げるのが本場の鉄則で、時間が経つと湿気を吸って歯ざわりが落ちる。

生地を溶く(約35分/うち休ませ30分)

  1. ボウルに緑豆粉60gと中力粉40gを入れて泡立て器で混ぜ、水190mlを3回に分けて加える。そのつどダマがなくなるまで混ぜる。高い位置からスプーンで落としたときに、途切れずに太い線を描いて流れ落ちる濃さが正解。

  2. ラップをかけて常温で30分休ませる。焼く直前にもう一度よく混ぜ直す。

2種のたれを作る(約5分)

  1. 小鍋にサラダ油10mlと甜面醤30gを入れ、弱火で1分、ヘラで練りながら炒める。香りが立ったら水20mlを加えて溶きのばし、とろりとしたら火を止める。

  2. 小皿に腐乳15gを入れてスプーンの背で潰し、漬け汁8mlと水10mlを加えてなめらかに溶く。

焼く(1枚あたり約3分)

  1. 直径26〜28cmのフライパンを中火で1分温め、弱火に落とす。キッチンペーパーに焼き油3mlを含ませ、鍋底に薄く塗り広げる。強火は絶対に使わない。 緑豆粉の生地は焦げやすく、破れやすい。

  2. 生地の半量(約145ml)を鍋の中央に流し入れ、木製のクレープトンボ(またはお玉の背)を中心に当て、外側へ円を描くように2〜3周させて直径26cmに広げる。20〜30秒で表面のつやが消え、縁が乾いてくる。

  3. 卵1個を生地の上に直接割り落とし、同じ道具で黄身を潰しながら全体に薄くのばす。白いりごま2gと万能ねぎ7gを散らす。

  4. 卵が固まったら(約40秒)、フライ返しで一気に裏返す。裏面を30秒焼く。

  5. 火を止め、刷毛またはスプーンの背で面醤の半量(約27g)を全面に塗り、続いて腐乳汁の半量(約16g)を重ねて塗り、辣椒油5mlを線状に回しかける。

  6. 中央に馃箅儿1枚を置き、菜箸で軽く割って厚みを均す。左右を内側に折り、次に上下を折りたたむ。フライ返しで取り出し、斜め半分に切って完成。残りの生地でもう1枚同様に焼く。

本場と日本の違い

  • 入れるものが決まっている。 天津の煎餅果子に挟むのは馃箅儿か棒槌馃子(油条)のどちらかだけで、レタスもハムも入れず、香菜も振らない。日本や中国の他都市で見かける「レタス+ハム+チキン」型は、天津から見れば雑穀クレープ(杂粮煎饼)という別の食べ物という扱いになる。2018年の団体標準がハムや青菜を原料表に載せなかったのも同じ理由で、協会は「採用するかは店の判断」と非強制であることを明言している。
  • 粉が違う。 天津は緑豆粉が主体で、白い小麦粉を増やすと食感が粘つくとされる。北京や山東の煎餅は小麦粉・雑穀粉が中心で、この一点が天津式と決定的に分かれる。緑豆粉はグルテンがほとんどないため生地が破れやすく、「緑豆面の煎餅果子は屋台の腕を試す」と言われるのはそのためだ。
  • たれは3層構造。 甜面醤(塩気と甘み)→腐乳(発酵の香りと塩気)→辣椒油(辛みと香り)の順に重ねるのが天津式。日本の店ではマヨネーズや甜面醤単体で済ませることが多く、腐乳の一層が抜けると香りの奥行きが出ない。
  • サイズが違う。 団体標準が定める直径38〜45cmは、専用の平たい鉄板と長いクレープトンボがあって初めて成立する寸法。家庭のフライパンでは26cm前後が限界なので、本レシピは生地量をそれに合わせて調整している。
  • 揚げたてを巻く。 馃箅儿も馃子も「その日に揚げたもの」が条件で、屋台では横で揚げたものをそのまま巻く。作り置きのパリパリを使うと、この料理の主役である食感が失われる。

参考ページ(写真)

美食天下の「详细版煎饼果子(内附酱跟薄脆)」レシピページに、生地の広げ方と薄脆(馃箅儿)の手順写真が掲載されています。 https://home.meishichina.com/recipe-458845.html

代用可能な食材

  • 緑豆粉→入手先は中華食材店の「绿豆面」、韓国食材店の「녹두가루(緑豆粉)」、インド食材店の「ムングダール粉(皮なし緑豆の粉)」。いずれも皮を除いた緑豆の粉で、そのまま60g使える
  • 緑豆粉を自作する場合(乾式)→皮なし緑豆(脱皮緑豆・绿豆仁)60gをミルサーで2分挽き、目の細かいざるでふるう。ふるいに残った粗い粒は再度挽く。皮付きの緑豆を使うと皮の粒が残り、生地がざらつく
  • 緑豆粉を自作する場合(水挽き=本来の製法)→皮なし緑豆60gを水に4時間以上浸けて水を切り、水220mlとともにミキサーで2分撹拌して目の細かいざるで漉す。ここへ中力粉40gを混ぜれば面糊になる(別途の水は加えない)。屋台が「現挽き」と言うのはこの方法
  • 中力粉→薄力粉20g+強力粉20gを混ぜて代用可
  • 馃箅儿→ワンタンの皮4枚、または春巻きの皮1枚を4等分したものを170℃で20秒ずつ揚げて代用可。市販の「薄脆」「クリスピーワンタン」も使える。油条(冷凍のものが中華食材店にある)を半分に切って使えば、天津のもう一つの正統である「棒槌馃子」入りになる
  • 甜面醤→八丁味噌20g+砂糖10gを混ぜて代用可(塩気が上がるので腐乳を10gに減らす)。黄醤(黄豆醤)で作ると塩気が強く出るので、その場合は20gにとどめる
  • 腐乳→紅腐乳が手に入らなければ白腐乳15gでよい。どうしても入手できない場合は、味噌8g+酒5ml+水10mlを混ぜたもので代用する(発酵の香りは別物になる)
  • 辣椒油→ラー油10mlで代用可
  • クレープトンボ→お玉の背、シリコンヘラ、またはクレープ用の木製トンボ(製菓用品店で入手可)。お玉の背を使う場合は、鍋に触れる面に薄く油を塗っておくと生地が張り付かない

保存・アレンジのコツ

  • 面糊は冷蔵で2日もつ。時間を置くと緑豆粉が沈むので、使う前に必ず底から混ぜ直す。冷たいまま焼くと破れやすいので、30分前に室温に戻す。
  • 馃箅儿は揚げてから密閉容器で常温2日。湿気ったら150℃のオーブンで3分焼くと復活する。ただし本場の考え方では当日揚げが原則で、食感を最優先するなら焼く直前に揚げる。
  • 面醤と腐乳汁はそれぞれ冷蔵で1週間もつ。まとめて3倍量作っておくと、朝の作業が生地を焼くだけになる。
  • 天津では卵2個の「双蛋」が定番の追加注文。1枚あたり卵を2個にする場合は、1個目を広げてから2個目を割り入れ、生地が厚くならないよう手早くのばす。
  • 辛いのが苦手なら辣椒油を省き、代わりに白いりごまを1枚あたり3gに増やすと香ばしさで物足りなさを補える。
  • 天津には煎餅果子を鍋巴菜(緑豆粉のクレープを細切りにしてとろみ汁をかけた朝食)と並べて食べる習慣がある。生地が余ったら薄く焼いて細切りにし、翌朝そちらに回すとよい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。