広東料理・粤菜老火靓汤

老火湯(広東薬膳スープ/霸王花猪骨湯)レシピ本場広東の配合を徹底解説

湯気の立つ土鍋のスープに入った骨付き豚肉と乾燥した花、白い木の実などの具のイラスト
地域
粤菜(広東)
分量
3〜4人分・目安
公開

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「老火靓湯」は特定の一品料理ではなく、広東(広府)人が数千年にわたって受け継いできたスープ文化そのものを指す言葉だ。「靓(リャン)」は広東語で「美しい、上質な」という意味で、じっくり長時間煮込んで作った上質なスープ全般を指す。広東の湿度が高く蒸し暑い気候風土に適応するかたちで発展してきたとされ、広東の宴席では「先に湯を出し、後から料理を出す(先上汤、後上菜)」のが定番の順序だ。「宁可食无菜、不可食無湯(おかずがなくてもいいが、湯がないのは困る)」という俗語があるほど、広東・香港・マカオを含む「広府」文化圏、およそ8000万人にとってスープは生活に欠かせない存在とされている。

老火湯に使われる食材は肉・魚介・野菜・乾物・漢方薬材まで実に幅広く、調理法も「熬・滚・煲・烩・炖」など複数の技法が使い分けられる。数あるレパートリーの中でも、季節の変わり目の乾燥対策として広く親しまれているのが「霸王花猪骨湯」だ。霸王花(剣花とも呼ばれる)は、夜にだけ大輪の花を咲かせるサボテン科の植物を乾燥させたもので、清の時代の本草書『嶺南采薬録』にも「気の痛みを止め、痰と咳を鎮める。豚肉と一緒に煎じて服用する」という趣旨の記述が残っている、古くから薬膳として親しまれてきた食材だ。

霸王花は乾燥した状態では地味な見た目だが、水で戻すとふっくらと柔らかく、コリコリとした独特の食感になる。豚骨・杏仁(南杏・北杏)・いちじく・陳皮などと合わせてじっくり煮込むことで、ほのかな甘みとまろやかな香りのスープに仕上がる。喉や肺を潤す働きがあるとされ、空気が乾燥する秋から冬にかけて、広東の家庭で最もよく作られる定番の湯のひとつだ。

観光客がイメージする中国料理の「スープ」とは一線を画す、何時間もかけてじっくり素材の滋味を引き出す広東の湯文化。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(3〜4人分・目安)

  • 豚骨スペアリブまたは背骨500g
  • 霸王花(乾燥、剣花)4〜5朵(約30〜40g)
  • 南杏(甜杏仁)10g
  • 北杏(苦杏仁、あれば少量)5g
  • 乾燥いちじく4〜5個
  • 陳皮1片
  • 生姜(薄切り)3枚
  • 水2000〜2500ml
  • 塩味を見て調整小さじ1

作り方

  1. 霸王花は水に1時間ほど浸けて戻し、柔らかくなったら水を絞って軽く洗い、食べやすい長さに切る。

  2. 陳皮は水に15分ほど浸けて戻し、白い内側のわたを包丁でそぎ落とす。

  3. 南杏・北杏は軽く砕き、いちじくは半分に切っておく。

  4. 豚骨は熱湯でさっと下茹でして臭みとアクを取り、冷水でよく洗う。

  5. 大きめの鍋に豚骨・霸王花・南杏・北杏・いちじく・陳皮・生姜と水を入れ、強火で沸騰させる。

  6. 沸騰したらアクを丁寧にすくい取り、弱火にして蓋をずらしたまま1.5〜2時間じっくり煮込む。

  7. 味を見て塩で調整し、器に盛って完成。戻した霸王花は具として食べられる。

本場と日本の違い

  • 日本の「スープ」は短時間で仕上げることが多いが、広東の老火湯は1.5〜2時間以上、時には3時間以上弱火でじっくり煮込むのが基本で、これが「老火(長時間の火)」という名前の由来。
  • 具材に漢方由来の乾物や薬材(霸王花、陳皮、杏仁、いちじくなど)を組み合わせるのが特徴で、単なる出汁ではなく「体を整える食養生」としての意味合いが強い。
  • 日本では味付けを濃くしがちだが、本場の老火湯は塩のみで最小限に味を調えるのが基本。素材そのものの滋味を引き出すことが目的で、醤油や化学調味料を多用しない。
  • 老火湯は特定の一皿の名前ではなく、広東の家庭で日々作られる「じっくり煮込みスープ」全般を指す文化的な総称であり、家庭や季節、体調に応じて具材を変えるのが本来のあり方。

参考ページ(写真)

下厨房の「霸王花南北杏仁猪骨汤的做法」レシピページには、霸王花を戻す工程から豚骨の下処理、煮込みまでの手順写真が掲載されている。 https://m.xiachufang.com/recipe/104091631/

代用可能な食材

  • 霸王花(剣花)→入手困難な場合は乾燤ゆり根(百合)で代用可(風味は異なるが潤肺効果のある乾物として代用されることがある)
  • 豚骨→鶏がらや手羽先(500g)
  • 陳皮→みかんの皮を天日干ししたもので代用可

保存・アレンジのコツ

  • 冷蔵で2〜3日保存可能。温め直す際は沸騰させすぎず、じんわり温めるのが風味を損なわないコツ。
  • 霸王花の代わりに、季節や体調に応じて西洋菜(クレソン)や冬瓜、粉葛(葛の根)などに置き換えるのも広東の家庭料理の流儀。
  • 蜜棗(干し棗)を1〜2個加えると、より自然な甘みのあるまろやかなスープになる。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。