家常菜・家庭の定番おかず韭菜盒子

ニラ饅頭(韭菜盒子)レシピ本場中国北方の配合を徹底解説

こんがり焼けた皮の断面からニラと卵の具がのぞく、白い皿に並んだ半月形のニラ饅頭のイラスト
地域
家常菜(北方)
分量
2人分、目安6〜8個分
公開

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2022年北京冬季五輪でアメリカ代表として金メダルを獲得した谷愛凌(アイリーン・グー)選手が「これが食べたくてたまらない」と公言し、中国のSNSで検索数が急上昇した食べ物がある。ニラと卵を炒めた餡を薄い生地で包み、半月形に焼き上げる「韭菜盒子」だ。

その原型は明代まで遡るとされ、当時はニラだけでなく脂身の多い豚肉を炒めた具が主流だったという記録が残る。清代の美食家・袁枚は『随園食単』に「韭合:韭菜を刻んで肉と合わせ、生地で包んで油で焼く」という作り方を記しており、これが現存する最古級の記述とされる。同じ頃、北方では半月形に包んで焼くこの点心を「合子(ホーズ)」と呼ぶ習慣が定着し、生地の蓋と身が合わさる箱のような見た目から「盒子(箱)」の字が当てられたと考えられている。清代にはさらに具材が多様化し、「天生万物、落地成盒(この世のあらゆる食材は、地に落ちれば盒子の具になる)」と言われるほど、ほうれん草・干しエビ・野鴨肉まで様々な具が包まれるようになったという。

そもそも韭菜は『詩経』の時代から祭祀に供えられてきた縁起物の野菜で、刈ってもまた生えてくることから「生生不息」の象徴とされてきた。杜甫が「夜雨剪春韭」と詠んだように、春先のニラはもっとも味が良いとされ、韭菜盒子はその春ニラを活かす家庭料理でもある。現在は山東・河南・河北など黄河流域一帯で、特定の菜系に属さない日常のおやつ・軽食として広く作られている。日本の中華料理店ではまず見かけないが、複数の中国語レシピを比較すると、生地・餡・焼き方に共通する明確な「本場のセオリー」が見えてくる。ここから先は、その配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分、目安6〜8個分)

生地

  • 中力粉なければ薄力粉と強力粉を1:1で混合300g
  • 熱湯(沸騰直後、90℃以上)150ml

餡

  • ニラ1cm幅の小口切り300g
  • 卵正味約150g3個
  • 干しエビ虾皮または虾米。ぬるま湯で10分戻す15g
  • 春雨(乾燥)熱湯で3分戻し、1〜2cm幅に刻む30g
  • ごま油15ml
  • オイスターソース8g(小さじ1と1/3)
  • 白胡椒1g
  • 塩8g(小さじ1と1/2)

焼き用

  • 食用油大さじ1と1/2(23ml)

作り方

  1. ボウルに中力粉300gを入れ、沸騰したての熱湯150mlを菜箸で混ぜながら少しずつ回し入れ、粉全体をそぼろ状にする(烫面)。粗熱が取れたら手でひとまとめにし、なめらかになるまで3〜4分こねる。濡れ布巾かラップをかけ、常温で30分休ませる。

  2. 生地を休ませている間に餡の下ごしらえをする。卵3個を溶きほぐし、フライパンにごま油5ml(分量内)を中火で熱して炒り卵を作り、粗く刻んで冷ましておく。

  3. 戻した干しエビ15gと春雨(戻して刻んだもの)を用意する。

  4. 大きめのボウルにニラ300gを入れ、残りのごま油10mlを先にからめて全体に油膜を作る(こうすることでニラから水分が出るのを防げる)。炒り卵・干しエビ・春雨を加えて混ぜる。

  5. フライパンを熱し始めるタイミング(焼く直前)で、塩8g・オイスターソース8g・白胡椒1gを餡に加えて手早く混ぜ合わせる。味付けを早めにすると水分が出て生地が破れやすくなるため、必ず包む直前に行う。

  6. 生地を6〜8等分(1個約56〜75g)にして丸め、めん棒で直径12〜14cmの円形に薄く伸ばす。

  7. 生地の中央から片側半分に餡を大さじ2〜3(約70〜95g)をこんもりとのせ、生地を半月形に折りたたんで縁を合わせる。縁を指先でひだ状につまみながらしっかり閉じる(隙間があると焼いている間に水分が漏れ出す)。

  8. フライパンに食用油大さじ1(15ml)を中火で熱し、盒子を並べて2〜3分焼く。底面に焼き色がついたら裏返し、残りの油大さじ1/2(8ml)を鍋肌から回し入れ、さらに2〜3分、両面が香ばしいきつね色になるまで焼く。皮に厚みがあるため、途中で蓋をして弱めの中火で蒸し焼きにすると中まで火が通りやすい。

  9. 器に盛り、焼きたての熱いうちに提供する。

本場と日本の違い

  • 日本の町中華で見かける「ニラ饅頭」は、餃子の餡に近い豚肉多めの配合で、たっぷりの油で揚げ焼きにすることが多い。本場の韭菜盒子は肉を入れないニラ・卵・干しエビ中心の配合が主流で、油は生地がべたつかない最小限に抑える。
  • 生地は餃子の皮のような冷水生地ではなく、熱湯でこねる「烫面(タンミエン)」を使う。小麦粉のグルテンが熱で一部変性するため、皮にコシが出すぎず、もちっとしながらも破れにくい食感になる。
  • 意外な事実として、韭菜盒子はもともと明代には豚肉が主役の具材だったとされる。現代の家庭で定番になっているニラと卵中心の「素餡(ベジタリアン風)」の配合は、後の時代に定着した形といえる。

参考ページ(写真)

下厨房の「北方人不可缺少的主食 韭菜盒子的做法」レシピページに、烫面のこね方や餡の混ぜ方、焼き上がりまでの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/103991789/

代用可能な食材

  • 干しエビ(虾皮・虾米)→桜えびで代用可
  • 春雨→なければ省略しても可。コリコリとした食感を足したい場合は水で戻した木耳の細切りでも代用可
  • 中力粉→薄力粉と強力粉を1:1で混合すれば代用可

保存・アレンジのコツ

  • 焼く前の状態で1個ずつラップに包めば冷凍保存が可能(目安3週間程度)。凍ったまま油を引いたフライパンに並べ、蓋をして弱火でじっくり焼くと生地までしっかり火が通る。
  • 具に豚ひき肉50g程度を加えて一緒に炒めると、明代の原型に近い、よりコクのある味わいになる。
  • 翌日以降に温め直す際は、電子レンジだと生地が硬くなりやすいため、フライパンに水を小さじ1ほど振って蓋をし、蒸し焼きにすると焼きたてに近い食感が戻る。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。