広西料理・桂菜荔浦芋扣肉

茘浦芋扣肉(荔浦芋扣肉)レシピ本場広西桂林の配合を徹底解説

豚バラ肉と芋を交互に重ねてドーム状に盛り、茶色いたれと青ねぎをのせた茘浦芋扣肉のイラスト
地域
桂菜(広西・桂林荔浦)
分量
4人分・蒸し碗1台分
公開

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広西では、宴席のことを「芋头扣肉を蒸したかどうか」で語る言い回しがある。「不蒸芋头扣肉,不成宴席(芋扣肉を蒸さなければ宴席とは呼べない)」——結婚式でも正月でも、この一皿が卓に出てこなければ場が締まらない、とされるほどの存在だ。

主役になっているのは、桂林市荔浦の特産である荔浦芋。断面に檳榔(ビンロウ)の実そっくりの紫褐色の縞模様が浮かぶことから「檳榔芋」とも呼ばれる大型の里芋で、清の康熙48年(1709年)に福建・漳州から持ち込まれたと伝わる。粘りが少なく粉質でほろりと崩れ、加熱すると強い甘い香りが立つ。清代には毎年皇室へ献上される貢品に列せられ、民国期の『荔浦志』もその品質を高く評価している。

料理そのものの起源は明代にさかのぼるとされ、寺で礼佛を終えた参詣客が、供物の皮付き豚バラ肉と荔浦芋を薄く切り、香辛料と合わせて蒸したのが始まりと伝えられている。この料理が全国区の知名度を得たのは意外に新しく、1996年放送のテレビドラマ『宰相劉羅鍋』で荔浦芋が繰り返し登場したことがきっかけだった。2020年には「荔浦芋扣肉制作技芸」が広西チワン族自治区級の無形文化遺産に登録されている。

構造は単純だ。ゆでて、皮に穴をあけて、揚げて、冷水に浸して、芋と交互に重ねて、ひたすら蒸す。それだけの工程で、豚バラの脂は芋に吸われ、芋の甘い香りは肉に移る。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(4人分・蒸し碗1台分)

主材料

  • 皮付き豚バラ肉(ブロック)500g
  • 里芋大玉。本場は荔浦芋=檳榔芋。皮をむいた正味400g

下ゆで用

  • 水1200ml
  • 生姜薄切り10g
  • 長ねぎ(青い部分)20g
  • 黄酒15ml(大さじ1)
  • 八角1個(2g)
  • 桂皮1片(2g)
  • 小茴香(フェンネルシード)1g(小さじ1/2)
  • 甘草1g(2片)

皮の下ごしらえ・揚げ用

  • 老抽(皮に塗る用)5ml(小さじ1)
  • 揚げ油600ml
  • 冷水(揚げた肉を浸す用)1000ml

合わせだれ

  • 桂林腐乳(紅腐乳)30g(2個)
  • 腐乳の漬け汁10ml(小さじ2)
  • 生抽15ml(大さじ1)
  • 老抽5ml(小さじ1)
  • 黄酒10ml(小さじ2)
  • オイスターソース10g(小さじ1と1/2)
  • 砂糖6g(小さじ2)
  • 十三香1g(小さじ1/4)
  • 白胡椒(粉)0.5g(小さじ1/4)
  • にんにくみじん切り10g
  • 生姜みじん切り5g
  • 塩1.5g(小さじ1/4)

仕上げ用

  • 片栗粉6g(小さじ2)
  • 水12ml(小さじ2と1/2)
  • 万能ねぎ小口切り10g

作り方

  1. 鍋に皮付き豚バラ肉500gを入れ、水1200ml・生姜10g・長ねぎ20g・黄酒15ml・八角1個・桂皮1片・小茴香1g・甘草1gを加えて強火にかける。沸騰したらアクを取り、弱火にして30分ゆでる。竹串が皮にすっと通れば引き上げる。

  2. 熱いうちに表面の水気をしっかり拭き取り、皮全体にフォークか竹串で細かく穴をあける。1cm四方に1か所以上が目安で、穴が多いほど揚げたときに皮がよく泡立つ。

  3. 皮の面にだけ老抽5mlを薄く塗り、15分置いて表面を乾かす。水気が残っていると次の工程で油が激しく跳ねる。

  4. 深めの鍋に揚げ油600mlを入れて180℃に熱し、皮を下にして肉を静かに入れ、すぐにふたをする。3〜4分、皮が濃い飴色になって全面に細かい泡が浮き上がるまで揚げる。

  5. 揚げた肉を油から上げ、すぐに冷水1000mlに20分浸す。皮が水を吸って波打ち、扣肉特有のしわの寄った「虎皮」状になる。この工程を省くと皮が硬いまま仕上がる。

  6. 里芋400gは皮をむき、厚さ7〜8mm・5×3cm程度の長方形に切る。4の油を160℃に落とし、表面が薄いきつね色になるまで3分揚げ、油を切る。

  7. 冷水から上げた肉の水気を拭き、皮ごと厚さ7〜8mmに切る。芋と同じ大きさに揃えると重ねやすい。

  8. ボウルに桂林腐乳30gを崩し、腐乳の漬け汁10ml・生抽15ml・老抽5ml・黄酒10ml・オイスターソース10g・砂糖6g・十三香1g・白胡椒0.5g・塩1.5g・にんにく10g・生姜5gを加えて、腐乳が完全に溶けるまで混ぜる。

  9. 8のたれに肉と芋を入れて全体に絡め、常温で30分漬ける。

  10. 蒸し碗(深めの丼でよい)の底に、肉を皮を下にして並べ、芋と肉を1枚ずつ交互に重ねていく。ボウルに残ったたれは全て上から回しかける。

  11. 蒸気の上がった蒸し器に入れ、強火で10分蒸してから弱めの中火に落とし、さらに90分蒸す。途中で蒸し器の湯が減ったら熱湯を足す。

  12. 碗の上に大きめの皿をかぶせて一気にひっくり返し、碗を外す。皿に流れ出た蒸し汁は小鍋に移す。

  13. 蒸し汁を中火にかけ、片栗粉6gを水12mlで溶いたものを回し入れてとろみをつける。全体にかけ、万能ねぎ10gを散らして完成。

本場と日本の違い

  • 本場で使う荔浦芋は、日本の里芋より一回りも二回りも大きく、粘りがほとんどない粉質の芋。加熱すると口の中でほろりと崩れ、脂を吸ってもべたつかない。日本の小粒の里芋で作るとねっとりした食感になりやすいため、できるだけ大きく粉質のものを選ぶのが本場に近づける最大のポイント。
  • 「ゆでる→皮に穴をあける→揚げる→冷水に浸す」という一連の下処理は、本場では絶対に省略されない。特に揚げた直後に冷水へ落とす工程が、皮のしわと弾力を生む。この4段階を通した皮を中国では「虎皮」と呼ぶ。
  • 味の骨格を作っているのは桂林腐乳(紅腐乳)。日本の中華料理店で出る芋と豚バラの蒸し物は醤油と砂糖だけで味付けされることが多いが、本場の味を分けているのは、この発酵豆腐が持つ独特の熟成香と塩味。
  • 本場では蒸し時間が1時間半〜2時間と長い。日本の感覚では蒸しすぎに思えるが、豚バラの脂をとことん抜いて芋に吸わせるための時間であり、短縮すると「肥而不腻(脂っこいのに、しつこくない)」という本来の口当たりにならない。

参考ページ(写真)

下厨房の「广西十大名菜之荔浦芋头扣肉」レシピページに、皮の穴あけから揚げ・重ね方までの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/100044869/

代用可能な食材

  • 荔浦芋→大玉の里芋400g、または台湾・中国産のタロイモ(檳榔芋)400g。中華食材店の冷凍タロイモでも作れる。小粒でぬめりの強い里芋しかない場合は、切ったあと5分ほど水にさらしてぬめりを落とすと近づく。
  • 桂林腐乳→紅腐乳・南乳(中華食材店で通年入手可)30g。それも入手できない場合は白腐乳25g+赤味噌5g、または味噌20g+甜面醤10g(風味はかなり異なる)。
  • 老抽→濃口醤油で代用可(色の濃さ・とろみ・照りは異なる別物)。仕上がりの色を近づけたい場合は濃口醤油5mlに砂糖1gを加える。
  • 生抽→濃口醤油で代用可(塩味の出方と香りは異なる)。
  • 黄酒→日本酒で代用可。
  • 十三香→五香粉1gで代用可。
  • 甘草→省いても成立する(ゆで汁の甘い後味がやや軽くなる)。

保存・アレンジのコツ

  • 蒸し上げた状態のまま碗ごと粗熱を取り、ラップをして冷蔵で4日、冷凍で1か月保存できる。食べるときは碗ごと蒸し器で20分(冷凍なら40分)蒸し直せば、作りたてとほぼ同じ状態に戻る。作り置きが利く点も、宴席料理として重宝されてきた理由の一つ。
  • 前日に工程10まで済ませて冷蔵しておき、当日は蒸すだけにすると来客時に扱いやすい。
  • 皿に返したあと、下ゆでしたチンゲン菜やサヤインゲンを周囲に添えると、油の重さが和らいで彩りもよくなる。広西の食堂でも青菜を添えて出す店が多い。
  • 残った蒸し汁は捨てずに冷蔵しておき、翌日に白いご飯へかけるか、ゆでた青菜に絡めると無駄がない。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。