山東料理・鲁菜葱烧海参

葱焼海参(葱烧海参)レシピ本場山東の配合を徹底解説

茶色いたれを敷いた皿に黒いナマコを丸ごと置き、焼き色のついた長ねぎを添えた葱焼海参のイラスト
地域
魯菜(山東)
分量
2人分
公開

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中国四大菜系の筆頭とされる魯菜(山東料理)が誇る最高峰の一皿。高価な干しナマコを使う宴席料理でありながら、この料理の主役はナマコではなく、ねぎだ。

理由ははっきりしている。ナマコはそれ自体にほとんど味がないからだ。魯菜には「有味者使其出、無味者使其入(味のあるものはその味を引き出し、味のないものには味を入れる)」という原則があり、章丘大葱の産地・済南で語られる説明によれば、味を持たないナマコに、香りの濃い大ねぎの味を移し込むために両者は一緒に煮られる。ねぎは香りづけの脇役ではなく、味の供給源そのものとして皿の中央に居座る。使われるのは山東・章丘の大ねぎ——「高・大・脆・白・甜」と称され、汁気が多くすっきりと甘い、栽培体系が中国重要農業文化遺産に登録されている品種である。

この料理を全国区の名菜に押し上げたのは、北京の山東料理の老舗・豊沢園だ。1930年に栾学堂と陳煥章が創業したこの店で、山東省煙台市福山出身の料理人・王世珍と王義均が葱焼海参を改良し、看板料理に育て上げたと中文維基百科は記す。そして1983年、第一回全国烹飪大会で王義均はこの葱焼海参によって温菜・前菜の二冠を制し、のちに「魯菜の泰斗」と呼ばれるようになる。中文維基百科は本料理を経典魯菜であると同時に遼菜(遼寧料理)にも数えており、渤海・黄海沿岸の刺参文化圏で共有されてきた一皿でもある。

ここから先は、中国語の複数レシピ(プロの配合と家庭向けの配合)を比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。乾燥ナマコの戻し方と、この料理の心臓部である葱油の作り方も、すべて具体的な数値で示す。

本場式の配合

参考ページ(写真)

下厨房の「葱烧海参【最正宗的做法】」レシピページに、ねぎを揚げる工程と仕上がりの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106256367/

材料(2人分)

乾燥ナマコを戻す(発海参/でき上がり約200g・所要4〜5日)

  • 干燥刺参(乾燥ナマコ)中サイズ3〜4本25g
  • 1回目の浸水用の水(浄水)1000ml
  • 煮戻し用の水(浄水)1000ml
  • 2回目の浸水用の水(浄水)1000ml

葱油(作りやすい分量・でき上がり約90ml)

  • ラード(猪油)120ml
  • 長ねぎ5cm長さ・青い部分を含めてよい40g
  • 生姜薄切り15g
  • にんにく2片・薄切り10g
  • パクチー(香菜)の茎10g

葱焼海参

  • 戻したナマコ(発海参)200g(4本)
  • 下茹で用の水600ml
  • 下茹で用の生姜薄切り8g
  • 下茹で用の黄酒または日本酒10ml(小さじ2)
  • 長ねぎ(白い部分)7cm長さの筒切り・太めのもの約1.5本分150g
  • 葱油上で作ったもの。30mlをねぎを焼くのに、20mlを仕上げに使う50ml
  • 氷砂糖15g
  • 生姜みじん切り5g
  • 長ねぎみじん切り10g
  • 黄酒または日本酒15ml(大さじ1)
  • 鶏がらスープ水200ml+鶏がらスープの素3g200ml
  • 生抽15ml(大さじ1)
  • 老抽5ml(小さじ1)
  • 蠔油オイスターソース12g(小さじ2)
  • 片栗粉6g(小さじ2)
  • 水溶き片栗粉用の水15ml(大さじ1)

付け合わせ

  • チンゲン菜2株・縦4つ割り100g
  • チンゲン菜の下茹で用の湯500ml

作り方

乾燥ナマコを戻す(4〜5日/ほとんどが待ち時間)

  1. 油気のまったくない容器(新しいステンレスかガラス)を用意する。油が付くとナマコが溶けて戻らない。乾燥ナマコ25gを入れ、浄水1000mlを注いで冷蔵庫(0〜4℃)で48時間浸ける。12時間ごとに浄水に取り替える。水道水ではなく浄水を使う。

  2. ナマコが柔らかく膨らんだら、腹側を縦に切り開き、内臓と、頭側にある白い石灰質の塊(沙嘴)を取り除く。内側の細かい砂を流水で洗う。

  3. 鍋にナマコと浄水1000mlを入れて強火にかけ、沸いたら弱火に落として40分、表面がかすかに揺れる程度の火加減で煮る。火を止め、鍋のまま室温まで自然に冷ます。指で押して弾力があり、まだ芯が硬いようならさらに10分煮る。

  4. 煮汁を捨て、浄水1000mlに替えて冷蔵庫で48時間浸ける。ここでも12時間ごとに水を取り替える。乾燥時の8〜12倍にふくらみ、25gが約200〜250gになれば完成。すぐ使わない分は1本ずつ密閉して冷凍する(1か月以内に使い切る)。

葱油を作る(約15分)

  1. 鍋にラード120mlを入れて中火で熱し、170℃程度(ねぎを1切れ落とすと細かい泡が勢いよく立つ状態)になったら弱めの中火に落とす。

  2. 生姜15gを入れて30秒炒め、色が変わったら長ねぎ40gとにんにく10gを加える。焦がさないよう時々返しながら6〜8分、全体がきつね色になるまで揚げる。

  3. 最後にパクチーの茎10gを加え、30秒〜1分、色が濃く色づくまで揚げる。具をすべて取り出し、油を漉す。約90mlの葱油ができる。使わない分は密閉して冷蔵庫で保存する。

ナマコの下茹で(約5分)

  1. 鍋に水600ml、生姜8g、黄酒10mlを入れて沸かし、戻したナマコ200gを入れて3分茹でる。ざるに上げ、水気をよく切る。この工程で磯の匂いが抜け、身が締まる。

本体を作る(約20分)

  1. フライパンに葱油30mlを入れて中火で熱し、長ねぎの筒切り150gを断面を下にして並べる。弱めの中火で片面3〜4分ずつ、合計6〜8分かけて、表面がきつね色になり中がとろりとするまで焼く。ねぎを崩さないよう、菜箸ではなくフライ返しで返す。焼けたら取り出しておく。

  2. 同じフライパンを弱火にかけ、氷砂糖15gを入れる。溶けて泡立ち、棗(なつめ)のような赤褐色に変わるまで2〜3分、絶えず動かしながら加熱する(炒糖色)。煙が出るほど加熱すると苦くなるので、色づいたらすぐ次へ進む。

  3. 生姜のみじん切り5gと長ねぎのみじん切り10gを加えて20秒炒め、下茹でしたナマコ200gを入れて全体に糖色を絡める。

  4. 黄酒15mlを鍋肌から回し入れ、続けて鶏がらスープ200ml、生抽15ml、老抽5ml、蠔油12gを加える。沸いたら9で焼いた長ねぎを戻し入れる。

  5. 弱火に落とし、ふたをせずに5分煮る(煨制)。ときどきスプーンで煮汁をナマコにかけ、上下を返さずに味を含ませる。

  6. 強火にして煮汁が3分の1量(約70ml)になるまで煮詰める。片栗粉6gを水15mlで溶いて回し入れ、入れてから3〜4秒待ってから鍋を揺すって全体になじませる。すぐに混ぜるとでんぷんがだまになる。

  7. 仕上げに葱油20mlを回しかけ、鍋を揺すって照りを出す。

  8. チンゲン菜100gを湯500mlで1分茹でて水気を切り、皿の縁に並べる。中央にナマコとねぎを盛り、鍋に残ったあんをかけて完成。

本場と日本の違い

  • 日本の中華料理店では、ナマコ料理といえば干しなまこの煮込みや「海参スープ」として出てくることが多く、ねぎは香りづけの薬味として扱われる。本場の葱焼海参では逆で、ねぎは1人前あたり75gも入る「具材」だ。プロの配合でも水で戻したナマコ1kgに対して章丘大ねぎの白い部分が105〜120g使われ、皿の上ではナマコとねぎが対等な量で並ぶ。
  • 味の骨格は醤油と砂糖の甘辛ではなく、葱油にある。本場では豚のラードでねぎ・生姜・にんにく・パクチーの茎を揚げて香りを移した専用の油を先に作り、料理の最初と最後の二度に分けて使う。この二度使いが香りの層を作る。市販のねぎ油で代用すると、香りの厚みが目に見えて落ちる。
  • 火加減の哲学が違う。魯菜は煮汁を最後に一気に煮詰め、水溶き片栗粉であんにしてナマコに「掛ける」のではなく「まとわせる」。プロの解説では、あんを入れたあと3〜4秒待ってから混ぜるという細かい指定まである。ナマコの表面がつるりと光り、皿に汁が広がらないのが正解の状態だ。
  • ナマコの下ごしらえが料理の8割を占める。本場では乾燥ナマコを4〜5日かけて戻すのが前提で、「1斤を6斤に戻す」(約6倍)という膨張率の目安が職人の間で共有されている。家庭向けの中国語レシピでは8〜12倍とするものもあり、戻しすぎると煮込んだときに身が痩せる。
  • 中国では山東・遼寧の刺参(イボの多いマナマコ)が使われる。日本でも同じマナマコが獲れるが、流通しているのは生食用の冷凍ボイル品が中心で、乾燥品とは食感がまったく別物になる(下記の代用食材を参照)。

代用可能な食材

  • 干燥刺参(乾燥ナマコ)→即食海参(戻し済みの冷凍・レトルトのナマコ)200g。中華食材の通販で入手できる。冷蔵庫で一晩解凍し、水で2回すすいでから使う。工程1〜4を丸ごと省けるので所要時間が4日短縮できる。中国語の解説では、高温で蒸煮してから冷凍する加工のぶん、食感と風味は乾燥品に劣るとされる。下茹で(工程8)は1分に短縮する。
  • 干燥刺参→冷凍ボイルなまこ(日本の鮮魚売り場・業務用スーパーの茹でなまこ)200g。最も入手しやすいが、これは酢の物用にさっと茹でた別加工の品で、コリコリした食感が強く、長く煮ると縮んで硬くなる。使う場合は下茹で(工程8)を省き、工程13の煮込みを5分→2分に、工程14の煮詰めも短めにする。食感は本場と別物になるが、葱油とあんの味わいは十分に再現できる。
  • 章丘大葱→日本の「下仁田ねぎ」が最も近い(太くて甘く、加熱でとろける)。手に入らなければ一般的な長ねぎの白い部分でよいが、太さ2cm以上のものを選ぶ。
  • ラード(猪油)→サラダ油120ml。ただしコクが落ちるので、その場合は葱油を作るときにパクチーの茎を15gに増やして香りを補う。
  • 蠔油→鮑魚汁(アワビだれ)12g。中国語のレシピでは両方を併用するものもある。
  • 生抽→濃口醤油12mlで代用可(風味と塩気の出方は異なる)。老抽→濃口醤油5ml+カラメル用に氷砂糖を3g増やす。
  • 氷砂糖→上白糖15g(糖色は作れるが、照りの出方はやや鈍くなる)。
  • チンゲン菜→小松菜100g、または菜心(中国野菜のとうな)100g。
  • 鶏がらスープ→鶏手羽先200gを水400mlで40分煮出したもの200ml(鶏がらスープの素は使わず、この場合は塩1.5g(小さじ1/4)を加える)。

保存・アレンジのコツ

  • 葱油は多めに作って冷蔵で2週間、冷凍で2か月保存できる。炒飯、和え麺、蒸し鶏、青菜炒めのどれに使っても効くので、この料理のためだけに作るのは惜しい。パクチーの茎を揚げた香りが飛びやすいので、密閉容器に入れて冷蔵庫の奥に置く。
  • 戻したナマコは1本ずつラップで包んで冷凍すれば1か月もつ。使うときは冷蔵庫で一晩かけて解凍する。常温や電子レンジで急に解凍すると、水分が抜けて身が縮む。
  • 完成した葱焼海参は作りおきに向かない。あんが時間とともに水っぽくなり、ナマコが硬く締まる。中国語の解説でも「熱いうちに食べるのがいちばん」とされている。
  • 煮詰めた煮汁が余ったら、茹でた中華麺200gに絡めると「葱焼海参拌麺」になる。宴席で残ったあんを麺に和えるのは、山東の食べ方として理にかなっている。
  • ナマコの量を100gに減らし、代わりに豆腐200g(1.5cm厚に切って両面を焼いたもの)を加えると「葱焼豆腐」に近い一皿になる。ねぎと葱油の骨格はそのまま使えるので、ナマコが手に入らない日の練習用として作りやすい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。