新疆・西北料理・西北菜羊肉泡馍

羊肉泡饃レシピ本場陝西・西安の配合を徹底解説

ちぎった饃と春雨のスープに羊肉の薄切りとパクチーをのせ、薬味の小皿を添えた羊肉泡饃のイラスト
地域
西北(陝西・西安)
分量
2人分
公開

この記事はAmazonアソシエイトのリンクを含みます。

西安の老舗で羊肉泡饃を頼むと、最初に運ばれてくるのはスープではない。硬く焼いた丸いパン(饃)と空の碗だ。客はまず、そのパンを自分の指で小豆ほどの大きさにちぎる。ちぎり終えた碗を厨房に渡すと、羊肉スープで煮込まれて戻ってくる——この「掰饃(パン割り)」こそが泡饃の儀式であり、ちぎる細かさで客の年季がわかるとまで言われる。

由来をたどると、源流は西周の礼饌とされる「羊羹(羊肉のあつもの)」にあり、祭祀や宮廷の宴に供されたと伝わる。今の形の原型については、唐・至徳2年(757年)、安史の乱の平定に加わった大食(アラブ)の兵士の一部が長安に留まり、彼らが持ち込んだナンに似た焼きパン「饦饦饃」が羊肉スープと合わさったのが始まりとする説がある。一方で、宋の太祖・趙匡胤が不遇時代に屋台の羊肉スープに硬いパンをちぎって浸して食べ、皇帝になってから同じ店を訪ねて褒美を与えたという伝説も広く語られており、起源には諸説ある。北宋の蘇東坡が「陇馔有熊腊,秦烹惟羊羹」と詠んだ句もよく引かれる。2008年には老舗「同盛祥」の牛羊肉泡饃の製作技芸が国家級無形文化遺産に登録された。

西北料理の代表格で、西安の回民街を象徴する小吃だ。煮上げ方にも流儀があり、スープをすべてパンに吸わせる「干泡」、食べ終えたときにスープが一口だけ残る「口湯」、スープの海にパンが浮かぶ「水囲城」、パンとスープを別々に出す「単走」から選んで注文する。

日本では「羊のスープにパンを浸す料理」と紹介されがちだが、本場の泡饃はパンを「煮る」料理だ。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、スープ・饃・煮饃の配合と手順を公開する。

本場の配合

材料(2人分)

羊肉スープ(仕込み)

  • 羊もも肉骨なしブロック。骨付きなら1kg500g
  • 水2000ml
  • 生姜(薄切り)15g
  • 長ねぎ(青い部分)50g

香料包(お茶パックに入れる)

饃(4枚分)

  • 中力粉300g
  • ドライイースト1g
  • ぬるま湯(35℃前後)150ml

煮饃(仕上げ)

  • 羊肉スープ(上で仕込んだもの)400ml
  • 水400ml
  • 春雨(乾燥)20g
  • 黄花菜乾燥の金針菜6g
  • 木耳(乾燥)4g
  • 葉にんにく(斜め切り)20g
  • 塩12g(小さじ2強)
  • 白胡椒0.5g
  • パクチー(ざく切り)5g

添え物

  • 糖蒜(にんにくの甘酢漬け)4片(40g)
  • 辣子醤(唐辛子ペースト)20g

作り方

  1. 羊もも肉500gを水に2〜3時間浸け、途中で2〜3回水を替えて血抜きする。水が濁らなくなればよい。

  2. 香料包の材料をお茶パック(またはガーゼ)にまとめて口を縛る。

  3. 鍋に羊肉と水2000mlを入れて中火にかけ、沸騰直前で弱火にし、浮いてくるアクを出なくなるまで丁寧にすくう。香料包・生姜・長ねぎを加え、ふたを少しずらして弱火で2時間30分煮る。

  4. 羊肉を取り出して粗熱を取り、繊維を断つように厚さ3mmの薄切りにする。スープは漉して取り置く(約1200ml残るので、煮饃に400mlを使う)。

  5. 饃を作る。ドライイースト1gをぬるま湯150mlに溶かし、中力粉300gに少しずつ加えて混ぜ、硬めの生地にまとめる。表面がなめらかになるまで10分こね、ラップをかけて室温で30分休ませる(ふくらませすぎないのがポイント)。

  6. 生地を4等分して丸め、手のひらで押して直径12cm・厚さ1cmの円形にする。中央を指で強めに押して縁をやや厚く残すと、火の通りが均一になる。

  7. 油をひかないフライパンを弱火で温め、饃を片面4分ずつ焼く。表面に点々と焼き色がつき、中はまだ少し生っぽい「七分焼き」で止める。

  8. 饃を30分以上冷ましてから、1枚ずつ手で小豆大(5〜8mm角)にちぎる。細かく均一にちぎるほど、スープがむらなく染みる。

  9. 春雨・木耳・黄花菜をそれぞれぬるま湯で戻し、春雨は10cm長さに、木耳は細切りにし、黄花菜は硬い根元を切り落とす。

  10. 鍋にスープ400mlと水400mlを入れて強火で沸かし、ちぎった饃を加えて2分煮る。木耳・黄花菜・春雨を加えてさらに2分煮て、塩12g・白胡椒0.5gで調え、葉にんにくを加えて火を止める。汁気をほとんど吸わせたいなら煮る時間を1分延ばすと「干泡」寄りに、早めに火を止めれば「水囲城」寄りになる。

  11. 碗に盛り、4の羊肉スライスを並べてパクチーを散らす。糖蒜と辣子醤を添え、全体をかき混ぜずに碗の縁から少しずつ崩して食べる。

本場と日本の違い

  • パンは「浸す」のではなく「煮る」。 本場では、ちぎった饃をスープごと強火で煮てから出す。焼いたパンに熱いスープをかけるだけでは、饃の芯まで味が入らず、泡饃特有の「もちっとして粘りのある」食感にならない。
  • 饃は発酵を抑えた専用パン。 ふっくらした饅頭ではなく、生地の大半を発酵させない硬い饃(坨坨饃)を使う。煮ても溶けずに粒の形を保つための配合で、日本のパンやナンで代用すると崩れてお粥状になりやすい。
  • ちぎるのは客の仕事。 本場では掰饃に10分以上かけることも珍しくなく、待ち時間も含めて泡饃の楽しみとされる。
  • 糖蒜は必須の相棒。 羊の脂でもったりした口を、甘酸っぱい糖蒜でリセットしながら食べ進める。辣子醤で辛味を足すのも定番。
  • 羊だけでなく牛もある。 老舗「同盛祥」の看板が「牛羊肉泡饃」であるように、牛肉と牛骨でスープをとる店・家庭レシピも一般的。

参考ページ(写真)

下厨房の「西北媳妇的拿手菜:羊肉泡馍」レシピページに、羊肉スープの仕込みから饃の焼き方、仕上げまでの手順写真が掲載されています。

(https://m.xiachufang.com/recipe/104574408/)

代用可能な食材

  • 羊もも肉:ラム肩肉でも可。牛すね肉+牛骨に替えれば「牛肉泡饃」になる
  • 中力粉:強力粉と薄力粉を同量ずつ混ぜて代用可
  • 葉にんにく:青ネギの青い部分またはニラで代用可
  • 糖蒜:らっきょうの甘酢漬けで代用可(酸味と甘みの方向性が近い)
  • 草果・陳皮:入手できなければ省略可(スープの香りの奥行きはやや減る)
  • 黄花菜:中華食材店で「金針菜」として売られている。なければ省略し、木耳を2g増やす
  • 辣子醤:ラー油の沈殿部分(唐辛子のかす)で代用可

保存・アレンジのコツ

  • 羊肉スープは冷蔵で3日、冷凍で1か月保存できる。400mlずつ小分けにして冷凍しておくと、饃さえあれば10分で一杯作れる
  • 焼いた饃はちぎった状態で冷凍保存でき、凍ったまま煮てよい
  • 饃を煮ずに、スープと饃を別々に出す「単走」スタイルにすれば、パンをスープに浸しながら食べる軽い一杯になる

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。