福建料理・闽菜土笋冻

土筍凍(土笋冻)レシピ本場福建・閩南の配合を徹底解説

皿に並んだ琥珀色の四角い土筍凍と、たれ・パクチー・からしを盛った小皿のイラスト
地域
閩菜(福建・閩南)
分量
2人分
公開

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名前に「筍」の字が入っているが、この料理にタケノコは一切使われていない。福建・閩南を代表する冷菜、土筍凍の正体は、干潟に棲む「可口革囊星虫」という海の生き物である。加熱すると体内のゼラチン質が煮汁に溶け出し、冷えると自然に固まる。その煮こごりを小鉢ごと供するのが土筍凍だ。形が小さな筍に似ていることから「土筍」と呼ばれるようになった、というのが名前の由来である。

文献に残る記録は古い。明代の屠本畯『閩中海錯疏』は「泥笋、其形如笋而小、生江中、形丑味甘、一名土笋(泥笋は形が筍に似て小さく、川べりに生じる。姿は醜いが味は甘い。またの名を土笋という)」と記す。清初の周亮工『閩小記』にも「予在閩常食土笋凍、味甚鮮異(福建にいたころ土筍凍をよく食べたが、その鮮烈な味は格別だった)」という一文があり、これが土筍凍を名指しした最も有名な出典とされている。

誕生の逸話としては、鄭成功の名がよく挙げられる。300年余り前、東南沿海に兵を駐屯させていた鄭成功の軍が食糧難に陥り、兵士たちが干潟を掘って得た海虫を煮て食べた。一晩置き忘れた鍋の汁が翌朝には固まっており、これが思いのほか美味だった——という話だ。明代の抗倭の名将・戚継光を主人公にした、ほぼ同じ筋書きの異説も語り継がれている。

閩菜は海鮮とスープ(湯)の文化が高度に発達した系統で、土筍凍はその特徴が最も凝縮した一皿といえる。産地としては泉州・晋江の安海と東石が名高く、廈門・海滄の土筍凍制作技芸は2013年に廈門市級の無形文化遺産に登録されている。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分・直径7cm程度の小鉢6個分)

土筍凍(本体)

  • 土筍可口革囊星虫。日本では入手困難なため、食用として売られている冷凍ユムシ、またはあさりのむき身で代用200g
  • 水300ml
  • 生姜薄切り。下処理・臭み取り用5g
  • 塩下処理のもみ洗い用。洗い流すので味には残らない3g(小さじ1/2)
  • 塩(煮汁の味付け用)2.5g(小さじ1/2)
  • 砂糖1g(小さじ1/3)
  • 粉寒天2g(小さじ1弱)

たれ(蘸料)

  • 生抽15ml(大さじ1)
  • 香醋10ml(小さじ2)
  • にんにく(すりおろし)6g
  • 生姜(千切り)3g
  • 練りがらし3g(小さじ1/2)
  • パクチー(香菜。みじん切り)5g

作り方

  1. 土筍(または代用のユムシ・あさりのむき身)200gを下処理する。ユムシを使う場合は縦に開いて内側の砂と内臓をこそげ取り、下処理用の塩3g(小さじ1/2)をふって手でもみ、ぬめりが出たら流水で洗う。これを水がにごらなくなるまで3回繰り返す。あさりのむき身の場合は塩でもんで同様に洗う。本場では新鮮な土筍を石づちや麺棒でしごいて腹の砂を押し出し、黒褐色の外皮をこすり落としてから、水が透明になるまで洗い上げる。

  2. 洗った1をボウルに移し、かぶるくらいの水と生姜の薄切り5gを加え、冷蔵庫で1時間(本場では一晩)浸けて臭みを抜く。ざるに上げて水気を切り、生姜は取り除く。

  3. 2を食べやすいよう2cm長さに切り、鍋に入れる。水300mlを注ぎ、味付け用の塩2.5gと砂糖1gを加えて中火にかける。砂糖はゼラチン質の溶け出しを助ける役割で、甘みをつけるためではないので増やさない。

  4. 沸騰したらアクを丁寧にすくい、弱火にして10分煮る。煮汁が白く濁り、とろみを帯びてくればよい。

  5. 火を止める直前に粉寒天2gを全体にふり入れ、泡立て器で30秒しっかり混ぜて溶かす。そのまま弱火で1分沸かして寒天を完全に煮溶かす(寒天は90℃以上を1分以上保たないと固まらない)。

  6. 小鉢6個に、具と煮汁が均等になるよう玉じゃくしで注ぎ分ける。粗熱が取れたらラップをして冷蔵庫へ入れ、3〜4時間(できれば一晩)冷やし固める。

  7. たれを作る。生抽15ml・香醋10ml・にんにく6g・生姜の千切り3g・練りがらし3gを小皿で混ぜ合わせ、パクチー5gを散らす。

  8. 固まった土筍凍を小鉢のまま供し、食べる直前にたれをかける(または竹串で抜き出して、たれにつけて食べる)。

本場と日本の違い

  • 最大の違いは、本場では固めるための材料を一切使わないという点にある。新鮮な可口革囊星虫を500gに対し水750ml、塩10gという比率で煮ると、虫体のコラーゲンだけで煮汁が自然にゼリー化する。日本で手に入る代用食材はこのコラーゲン量に届かないため、上記のレシピでは粉寒天で補っている。なお民国期の記録には「合石花菜煮而熟之、湯凝成凍(石花菜と合わせて煮ると、汁が凝って凍になる)」とあり、テングサ(=寒天の原料)を一緒に煮る製法も本場に実在した。寒天を使うのは決して邪道ではない。
  • 本場の土筍凍は、日本のゼリー寄せと違って甘くない。砂糖はゼラチン質を引き出すためのごく少量しか入らず、味付けの主役はあくまで後がけのたれである。
  • 産地によって仕上がりが異なる。泉州・安海のものは星虫が大きく皮の色が黄色っぽく、凍の中に整然と並ぶ。漳州・海滄のものは星虫が細く黒紫色で、凍の中に不規則に散る。どちらが本物かをめぐる論争は、閩南の食の話題として今も尽きない。
  • たれの構成も土地で変わる。泉州では醤油・老酢・にんにく・からしを基本とするのに対し、廈門では甘辛いソース、大根の甘酢漬け、パクチーを添えるのが定番になっている。
  • 旬は冬から春先。この時期の星虫は身が太り、ゼラチン質が最も豊富になる。夏場は常温で固まらないため、本場でも冷蔵庫に入れて固める。

参考ページ(写真)

下厨房の「土笋冻」レシピページに、下処理から凝固までの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/107084235/

代用可能な食材

  • 可口革囊星虫→食用の冷凍ユムシ200g(韓国食材店で「ケブル」として流通。食感が最も近い)。または、あさりのむき身200g(風味は穏やかになる)、ゆでたホタテの貝柱200g(さらに上品な味わいになる)
  • 粉寒天→板ゼラチン5g(水でふやかし、火を止めた煮汁に溶かす。寒天より柔らかく口溶けのよい仕上がりになる)。または乾燥テングサ15g(水400mlで30分煮出して漉し、その煮汁を水の代わりに使う。本場の石花菜製法に最も近い)
  • 香醋→米酢10ml(酸味が立つので、きび砂糖1gを足すとまろやかになる)
  • 練りがらし→和がらし・粒マスタード各3gでも可(粒マスタードは香りの方向性が変わる)
  • パクチー→万能ねぎの小口切り5g(香りは穏やかになる)

保存・アレンジのコツ

  • 冷蔵で2日以内に食べ切る。ゼラチンや寒天の凍は日が経つと離水して食感が水っぽくなるため、作り置きには向かない。冷凍は組織が壊れてスカスカになるので避ける。
  • たれは別容器で冷蔵すれば3日もつ。食べる直前にかけることで、凍が水っぽくならず、香りも立つ。
  • 一口サイズの製氷皿やシリコン型で固めると、竹串で刺してそのままつまめる屋台スタイルになる。閩南の店先で売られている形に近い。
  • 煮汁を器に注ぐとき具が沈みやすいので、粗熱が取れて少しとろみがついたタイミングで一度スプーンで混ぜ直すと、具が均一に散った美しい断面になる。
  • 余った煮汁は固めずにスープとして使ってもよい。豆腐と青菜を加えるだけで、閩南らしい澄んだ海鮮スープになる。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。