福建料理・闽菜荔枝肉

茘枝肉(荔枝肉)レシピ本場福建・福州の配合を徹底解説

格子状に切り込みの開いた揚げ豚肉とくわいを赤い甘酢だれで絡め、白い皿に盛った茘枝肉のイラスト
地域
闽菜(福建・福州)
分量
2人分
公開

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「茘枝肉(ライチ肉)」という名前なのに、この料理にライチは1粒も入っていない。福建省・福州を代表する伝統料理・茘枝肉は、そんな不思議な名を持つ一皿だ。

秘密は包丁の入れ方にある。豚の赤身肉に格子状の深い切り込み(十字花刀)を入れて油で揚げると、切り込みが一斉に開き、表面がライチの皮のようにぼこぼこと反り返る。さらにこれを、白いくわい(马蹄/荸荠)と一緒に盛り合わせる。赤い皮に包まれた白い果肉——まさにライチの実そのものの姿になるというわけだ。中文維基百科も「原料に白い荸荠と十字花刀を入れた豚赤身肉を使い、調理後の外形がライチに似ていることから名付けられた」と説明している。福州の地元紙・福州晚报は「色・形・味のすべてがライチに似ているため」と記し、この料理には二三百年の歴史があると伝えている。

由来には、いくつもの伝説が折り重なっている。北宋の蔡京が、一族の先人・蔡襄の著した『茘枝譜』から着想を得てこの料理を編み出し、司馬光に献上して絶賛されたという話。唐の玄宗の妃・梅妃が故郷福建のライチを懐かしんだため、料理人がライチに似せた肉料理を創作したという宮廷の逸話。そして清末の福州人・王宝山が甘酢料理の名手として1896年に宮中に召されたという記録——どれも決着はついていないが、それだけ長く愛されてきた一皿だということの裏返しだろう。

茘枝肉が属する闽菜(福建料理)は、海鮮とスープ文化に加え、紅麹で仕込んだ酒粕「紅糟」を使う独特の系統だ。同じ甘酢の揚げ肉でも、山東・江南由来の糖醋里脊とは、この紅糟の香りとくわいの食感ではっきりと道が分かれる。ここから先は、中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭で作れる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分)

肉と下味

  • 豚ヒレ肉(里脊肉)250g
  • 塩1.5g(小さじ1/4)
  • 生抽10ml(小さじ2)
  • 料理酒黄酒または日本酒10ml(小さじ2)
  • 白こしょう0.5g(小さじ1/4)
  • 紅糟(紅麹の酒粕)15g
  • 卵黄1個分(約18g)
  • さつまいもでんぷん(地瓜粉)35g

具材・薬味

  • くわい马蹄/荸荠。水煮パックでも可100g
  • にんにくみじん切り10g
  • 小ねぎ小口切り、仕上げ用10g
  • 白いりごま仕上げ用2g

甘酢だれ

  • トマトケチャップ30g(大さじ2)
  • 砂糖27g(大さじ3)
  • 陳醋30ml(大さじ2)
  • 生抽5ml(小さじ1)
  • 水50ml
  • 片栗粉4g(小さじ1と1/3)
  • 水(片栗粉を溶く用)8ml

揚げ油

  • 揚げ油うち15ml=大さじ1を、仕上げの炒め用に鍋に残して使う500ml

作り方

  1. 豚ヒレ肉を1.5cm厚さの平たい切り身にする。片面に3〜4mm間隔で縦に切り込みを入れ(深さは肉厚の2/3まで)、続けて直角方向にも同じ間隔・同じ深さで切り込みを入れて格子状にする(十字花刀)。切り込みを入れた面が細かい粒状になればよい。

  2. 1を一辺3cmほどの三角形または台形に切り分ける。

  3. ボウルに2を入れ、塩1.5g・生抽10ml・料理酒10ml・白こしょう0.5g・紅糟15gを加えて手で揉み込み、冷蔵庫で30分置く。

  4. 3に卵黄1個分を加えて混ぜ、さつまいもでんぷん35gを加える。切り込みの間にも粉が入るよう、一切れずつ指で軽く開くようにしてまぶす。

  5. くわいは皮をむいて1cm厚さの輪切りにする(水煮パックの場合は水気をしっかり拭き取る)。

  6. 甘酢だれを合わせる。小さめのボウルにトマトケチャップ30g・砂糖27g・陳醋30ml・生抽5ml・水50mlを入れてよく混ぜる。片栗粉4gは水8mlで別に溶いておく。

  7. 鍋に揚げ油500mlを入れて160℃に熱し、4の肉を1切れずつ入れて2分30秒〜3分揚げる。切り込みが開いて表面がぼこぼこに反り返り、ライチの皮のような形になったら取り出す。揚げすぎると硬くなるので、軽く反り返った時点で引き上げる。

  8. 油を190℃まで上げ、7の肉を戻して30〜40秒二度揚げして取り出す。続けて5のくわいを20〜30秒素揚げして取り出す。

  9. 鍋の油を大さじ1(15ml)だけ残して他は取り除く。弱火にしてにんにく10gを20〜30秒炒め、香りが立ったら6の甘酢だれを注ぐ。

  10. 中火にして煮立たせ、水溶き片栗粉を回し入れて15秒ほど混ぜ、とろみをつける。

  11. 強火にし、8の肉とくわいを戻し入れて10〜15秒手早く炒め合わせ、たれを全体に絡める。

  12. 器に盛り、小ねぎ10gと白いりごま2gを散らして完成。

本場と日本の違い

  • 決定的な違いは十字花刀(格子の飾り切り)の有無。日本で甘酢の揚げ肉といえば角切りのまま揚げるのが普通だが、本場福州の茘枝肉は「揚げたときにライチの皮の形になること」が料理の要件そのもの。切り込みが浅いと開かず、深すぎると揚げている途中でちぎれる。肉厚の2/3という深さがコツになる。
  • 福州版は肉の下味に紅糟(紅麹の酒粕)を使う。日本の酢豚やケチャップ味の甘酢肉にはない、ほのかな発酵の香り(糟香)と赤みが加わるのが闽菜らしさ。福建日報も、紅糟が「臭みを消し、香りとうま味と色を足す」調味料として福州の家庭に常備されていると伝えている。
  • 合わせる副材料は季節で使い分けるのが本場の流儀。福州晚报によれば、夏はくわい(马蹄)、冬はじゃがいもを使う。名前の由来である「白いライチの果肉」の見立てを重視するなら、くわいを選びたい。
  • 同じ甘酢の揚げ肉でも、糖醋里脊(山東・江南系)は肉を棒状に切って甘酢だれを絡めるのが基本で、紅糟もくわいも使わない。茘枝肉は「見た目でライチを表現する」という一点で、まったく別の料理として発展してきた。

参考ページ(写真)

下厨房の「福州荔枝肉(保姆级教程)」レシピページに、下味付けから二度揚げまでの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106750075/

代用可能な食材

  • くわい→水煮くわいのパック、またはれんこんの薄切り(食感は近い)。冬の福州式に倣ってじゃがいもでも可
  • 紅糟→入手困難な場合は日本の酒粕15gで代用可(糟香は近づくが、赤みは出ない)。中華食材店・通販では「红糟」の名で流通している
  • さつまいもでんぷん(地瓜粉)→片栗粉で代用可(衣がややなめらかになり、ごつごつ感は控えめになる)
  • 陳醋→米酢で代用可(酸味がまろやかになる)
  • 豚ヒレ肉→豚もも肉の赤身(本場でも猪后腿肉=後ろもも肉はよく使われる)

保存・アレンジのコツ

  • たれを絡める前の「揚げただけ」の状態なら、冷蔵で2日、冷凍で2週間ほど保存できる。食べる直前に200℃のオーブントースターで4〜5分温め直し、たれを作って絡めるとカリッとした食感が戻る。
  • 甘酢だれは肉を揚げる前に合わせておくと、揚げたてを熱いうちに絡められて仕上がりがよい。とろみをつけたあと絡める時間は15秒以内が目安。
  • 紅糟を30gに増やすと、糟香と赤みが強い「紅糟肉」寄りの味わいになる。逆に甘さを抑えたい場合は砂糖を20gに減らし、陳醋はそのままにすると酸味の立った大人向けの味になる。
  • 揚げたくわいは時間が経つと食感が落ちるので、作り置きする場合は肉だけにして、くわいは食べる直前に揚げるとよい。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。