シンガポール・マレーシア華人料理Chilli Crab

チリクラブレシピシンガポール・マレーシア華人料理の配合を徹底解説

赤いチリソースに浸ったカニに揚げた饅頭を添えたチリクラブのイラスト
地域
シンガポール・マレーシア華人料理
分量
2人分
公開

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シンガポールを代表する料理として真っ先に名前が挙がるチリクラブ。殻ごとぶつ切りにした大きなマッドクラブ(ノコギリガザミ)を、トマトの甘酸っぱさと唐辛子の辛みが効いた、ふんわり卵入りのとろみソースで煮絡めた一皿です。カニを食べ終えたら、揚げた饅頭(マントウ)でソースを最後の一滴までぬぐって食べるのが現地流。

シンガポール国立図書館(NLB)、国家遺産庁のRoots.gov.sg、ミシュランガイド・シンガポール版によれば、生みの親とされるのはシェール・ヤムティエン(Cher Yam Tian)さんです。1950年代半ば、カニの炒め物にいつものトマトソースだけでなく瓶詰めのチリソースを合わせてみたのが始まりで、1956年に夫のリム・チュンギーさんとともに屋台(手押し車)で売り出しました。これが評判となり、1962年にはイーストコーストに「Palm Beach」というレストランを開いています。

現在主流の味を作ったのは、1960年代に「中華料理の四天王」と呼ばれた料理人の一人、ホイ・コックワー(Hooi Kok Wah)さんです。1963年に開いたDragon Phoenixで、瓶詰めの調味料の代わりにサンバル(唐辛子ペースト)、トマトペースト、酢やレモン汁、卵を使った、よりコクがあって酸味の立つソースを考案し、これがシンガポール中に広まりました。2009年にはマレーシアの閣僚が「チリクラブはマレーシアの料理」と発言して論争になったこともあり、両国にとって誇りの一皿であることがうかがえます。

ここから先は、英語の複数レシピを比較して割り出した現地式の配合と手順を解説します。

現地式の配合

材料(2人分)

カニ

  • カニマッドクラブ、またはワタリガニ。ワタリガニなら大2杯800g

レンパ(香味ペースト)

  • 生の赤唐辛子3本(30g)
  • 乾燥赤唐辛子ぬるま湯100mlに10分浸けて戻す5本(2g)
  • エシャロットまたは紫玉ねぎ30g
  • にんにく6片(18g)
  • 生姜15g
  • 水(ミキサー用)30ml

ソース

  • サラダ油45ml
  • ブラチャンマレー式の発酵えびペースト。タイのガピでも可5g
  • タウチョ東南アジアの発酵大豆みそ。タイのタオチオでも可15g
  • トマトケチャップ60g
  • チリソース(瓶詰め)30g
  • 砂糖20g
  • 塩1.5g(小さじ1/4程度)
  • 水300ml
  • 片栗粉10g
  • 水(片栗粉を溶く用)20ml
  • 卵2個
  • 酢またはライム果汁10ml

仕上げ・添え

  • 青ねぎ(小口切り)10g
  • パクチー5g
  • 冷凍の饅頭(マントウ)4個
  • 揚げ油(饅頭用)300ml

作り方

  1. カニは流水でたわしを使ってよく洗う。甲羅を外し、エラと砂袋を取り除いて胴を4等分に切る。はさみ(爪)は包丁の背で叩いて殻にひびを入れておく(味がしみ込み、食べやすくなる)。

  2. レンパの材料(戻した乾燥唐辛子も含む)と水30mlをミキサーにかけ、なめらかなペーストにする。

  3. 小鍋に揚げ油300mlを170℃に熱し、解凍した饅頭を2〜3分、転がしながらきつね色になるまで揚げる。

  4. 中華鍋(または深めのフライパン)にサラダ油45mlを入れて中火で熱し、2のペーストを入れて3〜4分、香りが立って油が分離してくるまで炒める。

  5. ブラチャンとタウチョを加えて1分炒める。

  6. ケチャップ・チリソース・砂糖・塩を加えて30秒炒め、水300mlを注いで煮立てる。

  7. カニを加えて全体にソースをかけ、甲羅をのせてふたをし、中火で8〜10分、殻が赤くなり身に火が通るまで煮る(ワタリガニなら6〜7分)。

  8. 片栗粉を水20mlで溶いて回し入れ、混ぜながらとろみをつける。

  9. 弱火にし、溶き卵を細く回し入れる。すぐには混ぜず、10〜15秒おいてからやさしく大きく混ぜ、卵をふんわりした帯状に仕上げる。

  10. 火を止めて酢を加え、全体をひと混ぜする。器に盛り、青ねぎとパクチーを散らし、揚げた饅頭を添える。

中国本土の原型との違い・現地ならではの特徴

  • 西洋・マレー・中華の融合ソース:中国南部のカニ料理は、生姜とねぎで炒める姜葱炒蟹のように素材の味を活かすものが中心。チリクラブはトマトケチャップ(西洋)、サンバルやブラチャン(マレー)、タウチョや卵とじの技法(中華)を組み合わせた、多民族国家シンガポールならではの味です。
  • 屋台生まれ・レストラン育ち:1956年の屋台から始まり、1960年代にレストランの料理人たちが改良を重ねて現在の形になりました。現在ではブラックペッパークラブやソルテッドエッグクラブ、生姜とねぎの炒めなど、チリクラブと並ぶカニ料理のバリエーションも定番になっています。
  • カニはスリランカ産などの輸入が主流:現地で使われるマッドクラブは、スリランカやミャンマー、フィリピンなどから輸入されたものが多いとされます。
  • 日本のエビチリとの違い:日本のエビチリも甘辛いケチャップ系のソースですが、チリクラブはソースの量がたっぷりで、卵でふんわりまとめるのが特徴。ソース自体をパンですくって食べる前提の「主役級のソース」です。

参考ページ(写真)

What To Cook Todayの「Singapore Chili Crab」レシピページに、揚げた饅頭と仕上がりの写真が掲載されています。

(https://whattocooktoday.com/singapore-chili-crab.html)

代用可能な食材

  • マッドクラブ:日本では冷凍のワタリガニ(ガザミ)が手に入りやすい。ズワイガニの脚(ボイル済み)600gを使う場合は、手順7の煮る時間を3分に短縮する
  • ブラチャン:アジア食材店や通販で入手可能。タイのガピ(シュリンプペースト)も同じように使える。ない場合はナンプラー10mlで代用可(その場合は塩を入れない)
  • タウチョ:日本ではタイの「タオチオ(イエロービーンソース)」が手に入りやすく、同じ量で使える。どちらもなければ黄醤または味噌15gで代用可
  • チリソース:シンガポール・マレーシアの瓶詰めチリソースが理想。ない場合はスイートチリソース30gにサンバル・オエレク5g(または豆板醤5g)を足す
  • 饅頭:フランスパンや食パンでも現地らしい食べ方になる
  • 酢:ライム果汁のほか、タマリンド(タマリンドペースト10gを水20mlで溶いてこしたもの)でもよい。シンガポール出身の料理家のレシピでは、酸味にタマリンドを使っている

保存・アレンジのコツ

  • 残ったソースは冷蔵で2日保存可能。温め直してゆでた中華麺やパスタに絡めると、シンガポールの家庭料理ブログやレシピサイトでも紹介されている「チリクラブパスタ」風になる
  • カニの代わりに殻付きのえび400gで作ると、手軽な「チリプラウン」になる(煮る時間は3分)
  • 辛さを増すなら、レンパの生の唐辛子を5本に増やす

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。