雲南料理・滇菜香茅草烤鱼

香茅草烤魚(香茅草烤鱼)レシピ本場雲南・西双版納の配合を徹底解説

レモングラスで縛った丸ごとの魚を、炭火の網でこんがり焼く香茅草烤魚のイラスト
地域
滇菜
分量
2人分
公開

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中国料理なのに、皿から立ちのぼるのはレモンの香り——雲南省最南端、西双版納(シーサンパンナ)の傣族(タイ族)が伝えてきた香茅草烤魚は、国境の向こう側と地続きの味がする一品だ。

香茅草はレモングラスのこと。中国では「柠檬草」とも呼ばれ、茎と葉に天然のレモン様の香気を持つ。古くは「包茅」と呼ばれた草で、周代には楚国が朝廷への貢ぎ物として納め、酒を漉して天地と祖先を祀る祭祀に用いたと伝わる。西双版納の傣族の人々は、この草を「葉で魚を煮れば生臭みが消える」香草として経験的に使いこなしてきた。澜沧江(メコン川上流)で獲れた魚の腹に香草を叩いたペーストを詰め、香茅草の葉で結わえて竹の板に挟み、炭火で低温のままじっくりと炙る。数時間かけて香料・竹・茅草の香りが身の芯まで染み込む——それが本来の香茅草烤魚である。

その澜沧江は、西双版納とタイ・ミャンマーを一本につないでいる。景洪(西双版納)、清邁(チェンマイ)、景棟(ミャンマー)はかつて同じランナー王国の都市であり、食文化も地続きだ。傣味(タイ族の味)が「重酸重辣」——酸味と辛味を強く立て、香草を惜しみなく重ねる方向に発達したのはそのためで、酸腌笋、酸笋煮鸡、酸木瓜煮牛肉といった酸味の料理が食卓に並ぶ。数ある傣味料理の中でも、香茅草烤魚が最も広く名を知られているのは、この「香りで食べさせる」傣族の炭火焼きを一尾に凝縮した料理だからだろう。

ここから先は、実際に中国語の複数レシピを比較して割り出した、家庭のオーブンで再現できる本場の配合と手順を公開する。

本場式の配合

材料(2人分)

  • ティラピア(罗非鱼)または真鯛・すずき正味500g、下処理済み1尾
  • 塩1.5g(小さじ1/4)
  • 料酒中国調理酒。日本酒で代用可10ml(小さじ2)
  • 白こしょう1g(小さじ1/2)
  • レモングラス(香茅草・生)合計30g/うち2本は刻んで香料ペースト用、2本は魚を縛る用4本
  • パクチー(香菜。本場は大芫荽を使う)15g
  • ニラ(韭菜)15g
  • にんにく15g(3片)
  • 小米辣(生の小唐辛子)8g(3本)
  • 生抽15ml(大さじ1)
  • オイスターソース(蚝油)15g(大さじ1弱)
  • 唐辛子粉4g(小さじ2)
  • クミンパウダー(孜然粉)2g(小さじ1)
  • 食用油15ml(大さじ1)
  • バナナの葉(芭蕉叶)30cm四方1枚

蘸水(つけだれ)

  • ライム果汁30ml
  • 水40ml
  • 生抽5ml(小さじ1)
  • 砂糖3g(小さじ1弱)
  • にんにく(みじん切り)5g(1片)
  • 小米辣(小口切り)4g(2本)
  • パクチー(みじん切り)10g

作り方

  1. 魚は背側から包丁を入れて開き(开背)、内臓とエラ、腹の中の黒い膜を取り除いてよく洗い、水気をしっかり拭き取る。身の厚い部分に3〜4本の切り込み(花刀)を入れる。

  2. 魚の表面と開いた内側に塩1.5g・料酒10ml・白こしょう1gをすり込み、15分置く。

  3. 香料ペーストを作る。レモングラス2本(15g)は根元の白い部分を薄い小口切りにし、パクチー15g・ニラ15g・にんにく15g・小米辣8gと合わせて、フードプロセッサーで粗いペースト状にする(包丁で細かく叩いてもよい)。

  4. 3に生抽15ml・オイスターソース15gを加えて混ぜ、魚の開いた内側と表面の両方に均一に塗る。

  5. 残りのレモングラス2本を熱湯に10秒ほどくぐらせてしなやかにし、魚を閉じるようにして2〜3か所で縛る。そのまま冷蔵庫で30分漬け込む。

  6. 天板にアルミホイルを敷き、その上にバナナの葉を広げて魚をのせ、表面に食用油15mlを塗る。

  7. 200℃に予熱したオーブンで20分焼く。いったん取り出して裏返し、唐辛子粉4g・クミンパウダー2gを振り、さらに10分焼く。炭火で焼く場合は竹の板に挟み、弱めの炭火で片面10〜12分ずつ、皮が香ばしく色づくまで焼く。

  8. 蘸水を作る。ライム果汁30ml・水40ml・生抽5ml・砂糖3gを混ぜ、みじん切りのにんにく5g・小米辣4g・パクチー10gを加える。

  9. 焼き上がった魚をバナナの葉ごと器に移し、蘸水を添えて完成。

本場と日本の違い

  • 本場では澜沧江で獲れた罗非鱼(ティラピア)を使い、竹の板に挟んで弱い炭火で数時間かけて低温のまま炙る。香料・竹・香茅草の香りを時間をかけて身に移すのがこの料理の本質で、家庭のオーブンで焼く場合は200℃・合計30分と短時間になる分、香料ペーストを内側にも塗り込んで香りを補うのがコツ。
  • 香草の構成が日本と最も違う点。現地では大芫荽(オオバコエンドロ)・香柳(ベトナムコリアンダー)・荆芥など、東南アジアと共通する香草を数種類重ねる。日本で手に入るパクチーとニラの組み合わせでも骨格は再現できるが、香りの層の厚みは本場に一歩譲る。
  • 日本の中華料理店で「烤魚」といえば、重慶・万州式の豆板醤ソースで煮込む麻辣系が主流。同じ「烤魚」の字を使いながら、傣味の香茅草烤魚は辛さではなく香草の香りとライムの酸味で食べさせる、まったく別系統の料理である。
  • 現地では焼いた魚をそのまま食べるのではなく、ライムを効かせた蘸水(つけだれ)につけて食べるのが基本。この蘸水こそが傣味らしさを決める要素で、複数のレシピが「蘸水は香茅草烤魚の魂」と表現している。

参考ページ(写真)

下厨房の「傣味香茅草烤鱼」レシピページに、香料ペーストの作り方から焼き上がりまでの手順写真が掲載されています。 https://m.xiachufang.com/recipe/106101871/

代用可能な食材

  • 罗非鱼(ティラピア)→真鯛、すずき、いさき。正味500g前後の、背開きにできる大きさの白身魚であれば同じ手順で作れる
  • レモングラス(生)→乾燥レモングラス15g。縛るのに使えないため、ぬるま湯150mlで20分戻して腹に詰め、たこ糸で2〜3か所縛る
  • 大芫荽(オオバコエンドロ)→パクチー15g
  • 香柳(ベトナムコリアンダー)→大葉5枚(約5g)を刻んで香料ペーストに加える
  • 小米辣→生の青唐辛子8g、または鷹の爪2本(約1g)
  • バナナの葉→30cm四方のアルミホイル1枚(香りは移らないが、身の水分は同じように保てる)
  • ライム果汁→レモン果汁30ml

保存・アレンジのコツ

  • 香料ペースト(工程3〜4)は倍量作っておくと、冷蔵で3日、冷凍で1か月保存できる。鶏手羽や豚スペアリブに塗って同じように焼けば、香茅草烤鶏・香茅草烤排骨として楽しめる。
  • 焼き上がった魚は冷めると香りが飛ぶため、当日中に食べきるのがおすすめ。翌日に回す場合はバナナの葉ごとアルミホイルに包み、150℃のオーブンで8分温め直すと香りが戻る。
  • 蘸水はライム果汁を60mlに増やし、刻んだトマト20gを加えると、現地の屋台で出てくるさっぱりした味わいに近づく。

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成・翻訳したものです。